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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 何故だか知らないけど、論功行賞? とかいうものの発表の場に僕と桜も居る。

 よく分からないんだけど、何故こんな面倒な場所に呼ばれたんだろう。

 しかもわざわざ直衣(のうし)まで着させられてさ。意味が分からない。


 ちなみに桜も何故か直衣(のうし)を来てるね。

 女性なら着物じゃないの? って思うんだけど、本人が凄く嫌がったからこうなった。

 そこまで嫌がる理由は不明だけど、着慣れないからかな?

 桜も元々は僕と同じ水干(すいかん)だったし


 「まずは(さきの)右大臣久我、(さきの)内大臣洞院、(さきの)参議坊門を還任。

 右大臣近衛、権大納言西園寺を罷免、万里小路を按察使にいたすとの由である」


 「続いて北畠左近衛中将顕家、前へ」


 「ハハッ!」


 「北畠よ、随分と苦労をかけたが、そなたの御蔭で隠岐を脱する事もできた。朕は感謝しておる。

 そなたは新たに弾正大弼を兼任せよ」


 「ハハッ! 謹んで拝領いたしまする!」


 「勲功第一等、足利又太郎高氏。前へ!」


 「ハッ!!」


 「足利又太郎高氏。

 そなたが六波羅(ろくはら)を滅ぼしてくれた御蔭で朕は京の都に帰る事が出来た。

 そなたには所領の他に、従四位下の官位と左兵衛(かみ)の官職に任ずる。鎮守府将軍からの転任じゃ」


 「ハハッ! 謹んで拝領いたしまする」


 「続いて、足利仙太郎直義。前へ!」


 「ハッ!!」


 そういえば北条に反旗を(ひるがえ)す際に、高国から忠義に改名したんだっけ?

 その後に忠義から直義に変えたんだ。

 すっかり忘れてたよ、仙太郎は仙太郎だからさ。


 「足利仙太郎直義。

 そなたは兄と共に六波羅(ろくはら)とよく戦ったと聞く。故に従五位下の官位と、左馬頭(さめのかみ)に任ずる」


 「ハハッ! 謹んで拝領いたしまする」


 なんか色々と貰ってるのはいいんだけど、なんで僕がここに居るんだろう。

 本当に謎でしかないし、意味が分からない。

 貰うのは又太郎と仙太郎であって、僕は関係ないよ。


 「最後に稀人(まれびと)黒金(くろかね)殿、ならびに妖怪の桜殿。前へ!」


 「「はい」」


 僕達の番が来たから移動するけど、桜は驚かれているようだ。

 まあ、美人が男性の姿をすると、それはそれで美男子に見えるからね。

 なんだか溜息まで吐いている人とか居るけど、これでも黒霧(くろぎり)よりは下なんだよ?


 「初めて会うが、真に伝説の通りに歳が変わらぬとは……。

 十四年も前から足利左兵衛(かみ)の前に現れたと聞くが、十四年経っても(わらし)の姿のままか。

 真に神々から加護を賜っておるのであるな。

 そなた達には従五位上の官位と右衛門権佐(ごんのすけ)検非違使(けびいし)の官職を与える」


 「「はい、謹んで拝領いたします」」


 「うむ。それとじゃがの、そなたは古き時より生きておったはずじゃ。

 しかしてその記録に、そなたは神隠しに遭う前の事を覚えておらぬとあった。

 これに相違ないか?」


 「ありません」


 「うむ。ならば朕より、(かばね)名字(なあざな)を送ろう。

 (かばね)(きみ)、そして名字(なあざな)神守(かみもり)である。

 これからそなたは<神守君従五位上右衛門権佐検非違使黒金>じゃ」


 「ありがとうございます」


 「うむうむ。源平の頃を知るそなたには祖の恩もある。

 (かばね)名字(なあざな)を与えられたのは良かったわ。

 祖の恩に(むく)いる事が出来てなによりじゃ」


 なんだか僕をダシにして、自分の功績だとか言い出しそう。面倒だから流すけどね。

 それにしても、何が嬉しいのか僕にはサッパリだよ。

 さっさと帰らせてくれた方がよっぽど嬉しいんだけど……。

 ま、黙っていよう。




 その後はちょこちょこ話があって終わった。

 疲れたのでさっさと帰ろうと思ったら、内裏の門を出たところで話しかけられたよ。

 戦上手の楠木に。


 そして歩きながら色々と話すと驚いている


 「足利左兵衛(かみ)殿が勲功第一等なのは知っておったが、まさか伝説の陰陽師である者が名字もなかったとは知らなんだわ。

 しかも帝から与えられるのも驚きじゃ。

 しかし(きみ)という(かばね)は聞いた事がないのだが、足利殿は知っておられるか?」


 「古き時には今とは別の(かばね)が使われておったと聞く。

 確か、(おみ)(きみ)(むらじ)(あたひ)(みやつこ)(おびと)などだったと思う。

 全ては知らぬが、三十ぐらいあったのだったか?」


 「足利殿は博識じゃのう。

 なるほど、あえて古き時の(かばね)をお与えになったという事か。

 ワシの家は橘の血筋じゃが、そのうち神守(かみもり)の血筋とか生まれそうじゃのう。

 帝から名字を賜るなど、もう無いからな」


 「そうなの? 僕はよく知らないけど」


 「うむ。そもそも帝から賜ったという名字は四つしかないのだ。

 それが<源平藤橘>と呼ばれる四つでの、源、平、藤原、そして我が祖である橘じゃ。

 それに五つ目が生まれたわけじゃの。それが神守(かみもり)という事になる。

 しかも初代じゃからのう」


 「ああ。我が家は源氏であるが、まさか新たな(うじ)が生まれるところに出会うとは思わなかった。

 しかも権官とはいえ、楠木兵衛(じょう)殿より上とは……」


 「古くからの事も加えての任官なら当然だとは思うがのう。

 ワシも古くに何をしたかなどは知らぬが……」


 「何かしたっけね?

 あんまり記憶にないけど……あの当時は平氏だ源氏だと入り乱れてたりとか色々あったからなぁ。

 あっ、桜って名字無いけどどうするの?」


 「えっ? あー………山姫でいいんじゃない?

 私そもそも山姫だし」


 「安直だけど、それが一番いいかもね。

 それに桜まで同じって事は、検非違使(けびいし)のような働きを期待してるって事かな?

 昔も京の都の賊を殺してたし、あれをやればいいだけなら簡単だ」


 「そんなに古くから賊を殺す事をやっていたのだな。

 少々驚きだが、それより兄上。これからどうします?」


 「どうも何も、京の都の治安の回復など、やる事が山積みである以上はやるしかあるまい。

 代わってくれるなら、誰ぞが代わってくれると助かるのだがな。

 鎌倉に細川三兄弟を送ったが、我が足利家の屋敷がどうなったかすら分からんのだ。

 出来れば己の眼で見て確かめたい」


 「でしょうね。父上の位牌がどうなったかも分かりませんし……。

 とはいえ今は都で働くしかありませんか」


 「仕方あるまいよ。

 我が足利家の事を考えれば、しっかりと働いて役に立つ事を見せるしかない。

 我が家は北条に近いからな、今はいいとはいえ何をされるか分からん。

 所領を頂いたとはいえ、何ぞあっていきなり没収ともされかねんのだ」


 「なるほど、それを恐れておられたのか。とはいえ分からぬではない。

 北条に近かったというだけで何をされるか分からんというのは事実であろう。

 鎌倉が滅んだらしいからのう、北条憎しであった者どもは足利家に矛先を変えかねん」


 「そう考えれば難儀な事だな。

 我が楠木家にはそういった事はないが、鎌倉には鎌倉の厄介さがあるというわけか……」


 「力のあった家に近ければそうもなる。

 それでも我が家が大量の銭を用立てたりとか様々にした結果の事だ。

 にも関わらず、お前の家は戦の為だけに生かしてある。

 そのように言われたのだからな、忠義も何も無くなるというものよ」


 「なんじゃ、それは? あまりにも愚かに過ぎよう。

 確か足利家は鎌倉の中でも上位の家であろう?

 その家をそのような扱いにしておったら、他の家はどうなる?

 己の家の扱いは木っ端と思えば、裏切るに決まっておろうが。

 頭が悪すぎるわ」


 「それも分からぬから滅ぶのであろうよ。

 もはや忠義も無き故に、如何(いか)になっていようと構わぬがな。

 とはいえ供養はせねばならぬ。

 怨みと憎しみを撒き散らされても困る故にな」


 又太郎にとっては、それだけじゃないんだろうけどね。

 おそらくは若い頃の執権が記憶に残っているんだと思う。


 そこまで悪い人じゃ無かったんだけどね。

 しかし途中から驚くほど悪い感じになってた。

 あれも結局は分からないままなんだよ。なんでだったんだろうね?


 あんな事を言う感じじゃなかったのに……。


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