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Side:黒金
化け狸がついてきて10日ほど経った。
又太郎や仙太郎は精力的に文を出していて、僕達は暇なので近くの山に狩りに出かけている。
そして霊玉を売って雑穀を買ってきたりなどもしていて、近隣の村の人にも顔を覚えられるまでになった。
陰陽師は助かるみたいだね。
この辺りは田舎だからか陰陽師が多くなく、近隣の山の妖怪を退治してくれて助かると言われたよ。
それと稗を買ってきて食べてるけど、仙太郎は昔と違って何も言わなくなったね。
普通に食べていたし、疑問も持ってなかった。
まあ、表面を焼いた肉を入れたり、野菜なんかも色々と入っているしね。
当然ながら薩摩芋も入ってるから、食べ応えは十分だ。
問題はちょこちょこと武士が食べにくるって事ぐらいか。
熊肉が余った際に出したのが悪かったかな?
その所為で肉が食べたい人達が来るんだよね。
いつもいつも肉があるとは限らないんだけど、食べられれば何でもいいとばかりに食べていく。
今まで食べた事は無かったらしいけど、内臓類も食べられると分かったからか、本当に普通に食べてるんだよ。
武士は戦場では何でも食べるものだ。
なんて言っていたけど、単に美味しい肉を食べたいだけな気がする。
僕達も獲り尽くさないようにしていると言っているので、肉が無い時も文句は言わないんだよ。武士の人達。
村の人達だって鳥を獲ったりはするわけで、村の人達が食べる分を奪うのは良くないからね。
だから危険な可能性の高い熊を中心に獲ってるんだし、その熊も絶滅させないように獲ってる。
縄張り争いをするぐらいなら、僕が獲っていっても文句は言われないだろう。
化け狸にも肉を食べさせているし、大した値で売れない霊玉は吸収させている。
なので妖怪としては順調に成長しているものの、自分で妖怪を倒すという事もやらせてる。
だってそうしないと強くならないし、戦い方も知らないんじゃ結局殺されちゃうしね。
なので戦わせているんだけど、爪で引っ掻くのと噛みつきしかないから大変だよ。弱い妖怪ぐらいしか今のところは倒せない。
とはいえ桜いわく、弱い間はそんなものなんだそうだ。
強くなれば霊力も強くなるから威力は出るけど、弱い間は霊力が低いので大した威力にならない。
なので何度も引っ掻いたり噛みついたりで、ようやく敵を倒せる。
それぐらいの強さしかないのが普通みたい。
仕方がないんだろうけど、大変だね。本当。
…
……
………
「いやー、本当に肉が食えるのは助かる。
しかも美味い肉なのだから、尚のこと助かるというものだ。
それよりもワシの手の者が調べてきてくれたのだがな、どうやら赤松殿が名越という者を討ち取ったらしい。
赤松殿も元は六波羅に従っておったが、今はこれだ」
「戦上手と聞く楠木殿も元々はそうだったと聞きます。
六波羅は悉く離反されていますね。
もはや人望が無いのでしょう」
「そうだな。そもそもだが六波羅の者は高慢なうえ、碌に戦費を支払わぬ。
つまり六波羅の求めで戦をしても損をするだけなのだ。
その事もあって、離れる時は一気に離れたのであろうな。
それより兵はどうなっておる?」
「そろそろ動きださねばなるまい。これ以上に寡兵を続けても見つかるだけだ。
いや、もう六波羅に見つかっておるかもしれん。
他の者を待っている余裕は無かろう。我らは京の都に進軍し、陣を張る。
場所は北と西だな。なので千種殿は赤松殿に文を出してもらいたい」
「分かりておる。我らが西と北に陣を張るので、赤松殿には南から攻めてもらうのであろう?
さすれば奴らは東へ逃げるしかなくなる。
鎌倉に集まろうとも、こちらを取り戻せば後は如何様にでもなる。
それに京の都から一掃できれば、諸国の者も動こう」
「鎌倉攻めは、おそらく我が足利一門である新田小太郎がするはずだ。
この度の戦に六万貫も出せと命じたらしいのでな、我慢の限界を超えておるであろう。
後は足利一門などを募って鎌倉を攻めるだけ。あの男ならやってくれるはずだ」
「まさか、すでに鎌倉攻めの為の布石を打っておったとは……。
いや、まっこと見事であるな!」
「たまたまそうなっただけよ。
天の配剤ともいうべき事であり、新田小太郎が護良親王殿下の令旨を貰っておったからだ。
それもあって今の形になっておる。
それに鎌倉は下手を打ち過ぎた」
「それはあろうな。
鎌倉の者どもは正しいと思うておるのであろうが、遠くから見ておれば下手を打つばかり。
それが分かっておらんのだから、尚のこと離れる者は増えようぞ。
それに鎌倉攻めが始まれば、むしろ鎌倉を攻める者が増えるであろうよ。
そなたの事は知っていようからな」
「我が足利でさえこれだ。
なら己らの家は……そう思えば、今の内に滅ぼしてしまえ。そうなったところで不思議は無い。
どのような者とて、己の家が滅ぼされるとなれば牙を剥くものだ。
北条の者どもはまるで理解しておらぬがな」
「内で揉めてばかりであり、外に目を向けぬからこうなるのだ。
日の本の全てを鎌倉で支配するなど不可能ぞ。あり得ぬわ」
まあねえ。それは僕もそう思う。東に偏りすぎなんだよ、実際。
東の事は耳にするんだろうけど、西の事なんて何も分かってない。
そのうえ西の事を見下して軽んじていたしね。
そんな事をしているから反逆されるんだよ。
当たり前の事だとしか思えないね。
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Side:足利高氏
今日、篠村八幡宮に鏑矢を奉納する。
そしてオレ達は出発するのだが、皆が矢を奉納いたした所為で小山になっておるぞ。
神主殿の顔が若干引き攣っておるが申し訳ない。
皆の必勝祈願なので受け取ってもらわねば困る。
その後は気を取り直した神主殿に祓ってもらい、オレ達は京の都に向けて出発する。
赤松殿が既に南より攻め寄せようとしているという情報がある為、オレ達も素早く京の都に行き着陣せねばならん。
赤松殿を囮にしてもよいのだが、名のある者なので止めておいた方が無難だ。
進軍したオレ達は都の北と西に陣を敷き、まずは京の都の外で睨みを利かせる。
赤松殿が来たという情報が無い為、オレ達の方が少し早かったようだ。
京の都の中の様子を探らせに行ったが、実は黒金にも探ってもらっている。
古兵であれば簡単にやられたりはせんので、中を調べてくる事は容易い。
言葉が発せぬのは厳しいが、それでも分かるだけで十分であろう。
そう思っておったら中の様子を探らせた者が戻ってきた。
とりあえず早速呼んで話を聞く。
「京の都は六波羅において、既に篭もる手筈は終わっておるようでございます。
また六波羅の者どもは、帝に後伏見院、そして花園院を六波羅に連れて行ったとのこと」
「帝や院を人質にする気か? もし負ければ鎌倉に連れて行こうという魂胆であろう。
とりあえず帝や院が戦火が交わる所におられる事はあるまい。
我らは六波羅攻めを始めるぞ。
ここで確実に奴らを倒す。よいな!」
「「「「「「「「「「おおっ!!!」」」」」」」」」」
北からは千種殿、西からはオレ、そして南からは赤松殿に攻めてもらう。
六波羅の者どもの数はそこまで多くない。一気に攻めれば勝てよう。
今は早朝であり、まだ夜が明けておらぬ。
少しでも夜が明けてきたら一気に攻める。
六波羅の者どもを蹴散らし、すり潰してしまわねば面倒にしかならん。
ここで勢いづかせる為にも、徹底的にやるぞ。
二度と立ち上がれぬように叩き潰す。
そして後醍醐帝に帰洛の文を出すのだ。もちろん足利の名でな。
それで我が家の安全は保たれるはずだ。




