0133
Side:黒金
今日は兵達に休みをとらせるとの事で休みとなった。
なので僕は久しぶりに京の都の中を歩いている。
なんだか懐かしいような、そうでもないような。ちょっと不思議な気分だね。
昔と違うところもあるから色々と新鮮な気がする。
そもそも京の都の外も違ってたんだよね。
昔はボロの小屋とかが建ってただけだったのに、今は立派な小屋になっていて、その外側にボロの小屋が建っているって感じだった。
つまり都の外の町が広がってたんだよ。それも驚きだった。
そんな外はともかくとして、今は下京に来ている。
僕は未だに覚えている道を進み、そして目的の場所に辿り着いた。
けど、そこには僕が知っている建物は無かった。
昔、斯明が艶や葛葉と住む為に新しく借りた家はもう無いみたいだ。
「黒金、行かないの?」
「あー、うん。昔、斯明達と一緒に住んでた家はもう無いみたい。
百年以上経ってるって言ってたし、流石にやっぱり残ってないみたいだ。
仕方ないけどね」
「そう……」
ちょっとガックリと来る部分もあったけど、それでも予想していなかったわけじゃない。
桜が何度も小屋を建て直したって話を聞いた時に、かつての家も同じで残ってないんじゃないかなって思ったんだよ。
だから予想通りではある。
少しの間、僕は眺めていたけど、もういいやと思って三人に伝える。
なぜか休むはずの又太郎と仙太郎も来てたんだよね。
そんな三人に伝えて歩き出そうとした矢先、その家から人が出てきて話しかけてきた。
「ウチの前で見てたって事は、伝説の陰陽師である鹿野斯明殿の家と聞いて来たんだろ?
実はここじゃなくて、晩年は上京の方に移ってたんだ。だから鹿野家はうちじゃねえよ。
場所を教えてやるから行ってみな。ただし追い返されても知らないけどな」
そう言って上京の場所を教えてくれたので、僕達はそこに行ってみる事にした。
そこはかつての陰陽寮の近くで、陰陽寮の西にある場所だ。
そこへと行くと大きな屋敷があったんだけど、流石にここじゃないよねえ?
斯明がこんな屋敷に住むなんてあり得ないでしょ。
そんな事を思いつつも、訪ねて少しだけ話を聞いてみよう。
声を掛けたら誰か出てきてくれないかな?
「すみませーん!! 誰かいませんかー! すみませーん!!」
大きな声で呼んでいると、中から一人の人が出てきた。
直衣を着ているところを見るに陰陽師みたいだ。
この人の家なのかな?
「童がいったい何の用だ。
ここは鹿野様の屋敷だと分かってきたのか?
陰陽師に憧れでもあるのか知らないが、お前が門下生になるのは無理だ。
さっさと失せろ」
「門下生になんてならないよ。
それよりここに葛葉がいない? もしいないとしたら安倍家の方に帰ったのかな?」
チャキ!
「師の事を呼び捨てにするとはどういう了見か知らぬが、事と次第によっては容赦をせんぞ。
そこな妖怪、貴様もだ」
「そこな妖怪って言うのは勝手にすればいいけれども、貴方程度の力で私に勝てると思っているの?
大級までは到達していないとはいえ、私は甲一級なんだけどね?」
「ふん! 京の都の陰陽師を舐めるなよ。
地方では【霊波】さえ使えれば陰陽師を名乗るそうだが、京の都では正しく式神と符術を使える者しか陰陽師を名乗れぬ。
ここで退治してくれても構わんのだぞ?」
「そんな事はどうでもいいから葛葉が居るなら呼んできてくれない? それと、その太刀を抜いたら殺すよ。
それが誰であろうと容赦はしない。その覚悟を持って抜くんだね」
「ほう、そこの男達に助けてもらうのか? それとも童ゆえの強がりか。
どちらであろうとも、貴様には灸を据えてやらねばならんようだな。
では覚悟せよ」
キィン!
太刀を抜いたので即座に古兵を呼び出そうかと思ったら、それより早く火の玉が飛んできた。
しかも僕にじゃなくて、目の前の男に対してだ。
桜も又太郎も仙太郎も思わずポカンとしてる。とはいえ、あれは【狐火】だ。
久しぶりに見たけど、使ったのは葛葉だろう。
男は慌てて横っ飛びで逃げたけど、火の玉は僕達の前で消えた。その事にも三人は驚いたみたい。
あれって自由に消せるんだよね。懐かしい。
「くっ! 師よ、何故私の方に攻撃してくるのです!
それも後ろからなど、いったい何を考えておられるのですか!!」
男は地面に尻をついてたけど素早く立ち上がり、そして屋敷から出てきた葛葉に対して文句を言う。
久しぶりに見たけど変わってないねー。いや、少し霊力が上がってるのかな?
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鹿野 葛葉 女 四百九十二歳
体力・四十七
霊力・百八十八
術技・九十八
知恵・八十三
知識・九十六
運勢・普
あの頃よりも多少は強くなったようじゃが、ここまでになると早々簡単には上に上がれん。こやつなら天級にまで至れるであろうが、先は長そうじゃ。ちなみに狂っておる妖怪であれば祟級という位になる。ちなみに読み方は「すい」じゃからな。
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祟りの側は祟級と読むんだね。
神様がわざわざ言ってくるって事は、葛葉はまだ天級にまでは届いてないって事かー。
先は長そうだ。
「私に文句を言うなんて、まだまだ甘いわねえ。
何も理解していないなら口を閉じていなさいな。
己がマヌケだと示したいなら好きにすればいいけど」
「私がマヌケだと? いったいどういう事ですか! 私は既に甲級の妖怪すら倒せたのですよ!!」
「多くの陰陽師と共に戦ってようやくでしょうが、下らない。
それよりお前は邪魔なのよ、黒金が来てくれたというのに。
ねえ?」
「久しぶりだね葛葉、変わってないようで安心した。
それはともかく、昔より霊力が上がってて驚いたよ。それでも天級には足りないってさ。
神様がそう言ってる」
「てんきゅう?」
「そう。どうも大級の上に天級という位があるみたい。
神様が「こやつなら天級にまで至れるであろう」ってさ。僕も今初めて見て知ったけどね。
ちなみに天地とかの天だよ。
そして狂ってる妖怪は祟りと書いて祟級って言うんだってさ」
「つまり、大妖怪を超えた連中が居るって事ね。
流石に冗談だと言いたくなるけど、黒金が言っている以上は冗談でも何でもないのよねえ。困った事に。
ま、とりあえずは屋敷に上がってちょうだい。
斯明と艶の言葉を伝えなくちゃいけないからね」
「二人の言葉?」
「そうよ、いずれ黒金が帰ってくる事は分かっていたもの。
昔に言ったでしょ、私は宇迦御魂神様の使いでもあるって。
だから神様から伝えられて知ってたのよ。
百年以上後になるけど、黒金が帰ってくる事はね」
「そうだったんだ。
とりあえずここで話してても仕方ないから、上がらせてもらうよ。
まったく馴染みはないけどさ」
「でしょうね。
この屋敷を買ったのは、随分と後になってからだもの。
今は私が管理しているけど、元々は斯明が頑張って買ったのよ。
あ、上がってちょうだい。そっちの三人も」
「とりあえず上がらせてもらおう。ここに居ると目立ってしょうがないし」
僕がそう言うと三人も気づいたらしい。
喧嘩を売ってきた男の所為で目立ってしまっていた事を。
その後はさっさと入らせてもらったけど、僕達に喧嘩を売ってきた男は屋敷の外で立たされる事になった。
当然だろうけどね。




