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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 今日は兵達に休みをとらせるとの事で休みとなった。

 なので僕は久しぶりに京の都の中を歩いている。

 なんだか懐かしいような、そうでもないような。ちょっと不思議な気分だね。

 昔と違うところもあるから色々と新鮮な気がする。


 そもそも京の都の外も違ってたんだよね。

 昔はボロの小屋とかが建ってただけだったのに、今は立派な小屋になっていて、その外側にボロの小屋が建っているって感じだった。

 つまり都の外の町が広がってたんだよ。それも驚きだった。


 そんな外はともかくとして、今は下京に来ている。

 僕は未だに覚えている道を進み、そして目的の場所に辿り着いた。

 けど、そこには僕が知っている建物は無かった。

 昔、斯明(かくめい)(つや)葛葉(くずは)と住む為に新しく借りた家はもう無いみたいだ。


 「黒金(くろかね)、行かないの?」


 「あー、うん。昔、斯明(かくめい)達と一緒に住んでた家はもう無いみたい。

 百年以上経ってるって言ってたし、流石にやっぱり残ってないみたいだ。

 仕方ないけどね」


 「そう……」


 ちょっとガックリと来る部分もあったけど、それでも予想していなかったわけじゃない。

 桜が何度も小屋を建て直したって話を聞いた時に、かつての家も同じで残ってないんじゃないかなって思ったんだよ。

 だから予想通りではある。


 少しの間、僕は眺めていたけど、もういいやと思って三人に伝える。

 なぜか休むはずの又太郎と仙太郎も来てたんだよね。

 そんな三人に伝えて歩き出そうとした矢先、その家から人が出てきて話しかけてきた。


 「ウチの前で見てたって事は、伝説の陰陽師である鹿野斯明(かくめい)殿の家と聞いて来たんだろ?

 実はここじゃなくて、晩年は上京の方に移ってたんだ。だから鹿野家はうちじゃねえよ。

 場所を教えてやるから行ってみな。ただし追い返されても知らないけどな」


 そう言って上京の場所を教えてくれたので、僕達はそこに行ってみる事にした。

 そこはかつての陰陽寮の近くで、陰陽寮の西にある場所だ。

 そこへと行くと大きな屋敷があったんだけど、流石にここじゃないよねえ?

 斯明(かくめい)がこんな屋敷に住むなんてあり得ないでしょ。


 そんな事を思いつつも、訪ねて少しだけ話を聞いてみよう。

 声を掛けたら誰か出てきてくれないかな?


 「すみませーん!! 誰かいませんかー! すみませーん!!」


 大きな声で呼んでいると、中から一人の人が出てきた。

 直衣(のうし)を着ているところを見るに陰陽師みたいだ。

 この人の家なのかな?


 「(わらし)がいったい何の用だ。

 ここは鹿野様の屋敷だと分かってきたのか?

 陰陽師に憧れでもあるのか知らないが、お前が門下生になるのは無理だ。

 さっさと失せろ」


 「門下生になんてならないよ。

 それよりここに葛葉(くずは)がいない? もしいないとしたら安倍家の方に帰ったのかな?」


 チャキ!


 「師の事を呼び捨てにするとはどういう了見か知らぬが、事と次第によっては容赦をせんぞ。

 そこな妖怪、貴様もだ」


 「そこな妖怪って言うのは勝手にすればいいけれども、貴方程度の力で私に勝てると思っているの?

 大級までは到達していないとはいえ、私は甲一級なんだけどね?」


 「ふん! 京の都の陰陽師を舐めるなよ。

 地方では【霊波】さえ使えれば陰陽師を名乗るそうだが、京の都では正しく式神と符術を使える者しか陰陽師を名乗れぬ。

 ここで退治してくれても構わんのだぞ?」


 「そんな事はどうでもいいから葛葉(くずは)が居るなら呼んできてくれない? それと、その太刀を抜いたら殺すよ。

 それが誰であろうと容赦はしない。その覚悟を持って抜くんだね」


 「ほう、そこの男達に助けてもらうのか? それとも(わらし)ゆえの強がりか。

 どちらであろうとも、貴様には灸を据えてやらねばならんようだな。

 では覚悟せよ」


 キィン!


 太刀を抜いたので即座に古兵を呼び出そうかと思ったら、それより早く火の玉が飛んできた。

 しかも僕にじゃなくて、目の前の男に対してだ。

 桜も又太郎も仙太郎も思わずポカンとしてる。とはいえ、あれは【狐火】だ。

 久しぶりに見たけど、使ったのは葛葉(くずは)だろう。


 男は慌てて横っ飛びで逃げたけど、火の玉は僕達の前で消えた。その事にも三人は驚いたみたい。

 あれって自由に消せるんだよね。懐かしい。


 「くっ! 師よ、何故(なにゆえ)私の方に攻撃してくるのです!

 それも後ろからなど、いったい何を考えておられるのですか!!」


 男は地面に尻をついてたけど素早く立ち上がり、そして屋敷から出てきた葛葉(くずは)に対して文句を言う。

 久しぶりに見たけど変わってないねー。いや、少し霊力が上がってるのかな?


 ―――――――――――――――


 鹿野 葛葉 女 四百九十二歳


 体力・四十七

 霊力・百八十八

 術技・九十八

 知恵・八十三

 知識・九十六

 運勢・普


 あの頃よりも多少は強くなったようじゃが、ここまでになると早々簡単には上に上がれん。こやつなら天級にまで至れるであろうが、先は長そうじゃ。ちなみに狂っておる妖怪であれば祟級という位になる。ちなみに読み方は「すい」じゃからな。


 ―――――――――――――――


 祟りの側は(すい)級と読むんだね。

 神様がわざわざ言ってくるって事は、葛葉(くずは)はまだ天級にまでは届いてないって事かー。

 先は長そうだ。


 「私に文句を言うなんて、まだまだ甘いわねえ。

 何も理解していないなら口を閉じていなさいな。

 己がマヌケだと示したいなら好きにすればいいけど」


 「私がマヌケだと? いったいどういう事ですか! 私は既に甲級の妖怪すら倒せたのですよ!!」


 「多くの陰陽師と共に戦ってようやくでしょうが、下らない。

 それよりお前は邪魔なのよ、黒金(くろかね)が来てくれたというのに。

 ねえ?」


 「久しぶりだね葛葉(くずは)、変わってないようで安心した。

 それはともかく、昔より霊力が上がってて驚いたよ。それでも天級には足りないってさ。

 神様がそう言ってる」


 「てんきゅう?」


 「そう。どうも大級の上に天級という位があるみたい。

 神様が「こやつなら天級にまで至れるであろう」ってさ。僕も今初めて見て知ったけどね。

 ちなみに天地とかの天だよ。

 そして狂ってる妖怪は祟りと書いて(すい)級って言うんだってさ」


 「つまり、大妖怪を超えた連中が居るって事ね。

 流石に冗談だと言いたくなるけど、黒金(くろかね)が言っている以上は冗談でも何でもないのよねえ。困った事に。

 ま、とりあえずは屋敷に上がってちょうだい。

 斯明(かくめい)(つや)の言葉を伝えなくちゃいけないからね」


 「二人の言葉?」


 「そうよ、いずれ黒金(くろかね)が帰ってくる事は分かっていたもの。

 昔に言ったでしょ、私は宇迦御魂神(うかのみたまのかみ)様の使いでもあるって。

 だから神様から伝えられて知ってたのよ。

 百年以上後になるけど、黒金(くろかね)が帰ってくる事はね」


 「そうだったんだ。

 とりあえずここで話してても仕方ないから、上がらせてもらうよ。

 まったく馴染みはないけどさ」


 「でしょうね。

 この屋敷を買ったのは、随分と後になってからだもの。

 今は私が管理しているけど、元々は斯明(かくめい)が頑張って買ったのよ。

 あ、上がってちょうだい。そっちの三人も」


 「とりあえず上がらせてもらおう。ここに居ると目立ってしょうがないし」


 僕がそう言うと三人も気づいたらしい。

 喧嘩を売ってきた男の所為で目立ってしまっていた事を。


 その後はさっさと入らせてもらったけど、僕達に喧嘩を売ってきた男は屋敷の外で立たされる事になった。

 当然だろうけどね。


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