0123
Side:黒金
今日も僕達は狩りに出る。といっても、今日は海の方だ。
足利家の人達も海の幸は楽しみにしていてくれてるし、最近はサザエとかアサリとかを獲ってきても喜んでくれる。
特にアサリの味噌汁は美味しかったしね。
砂を吐き出させるのが大変だったけど、そこは影兵がやってくれた。
影兵が体の中に海水ごと埋めると、なぜか全部の砂を吐くみたい。
後はそのまま持って帰れば問題なく美味しく食べられたんだ。
神様の加護の眼で視た通りにやったんだけど、なぜそうなるのかは分からない。
本当に意味が分からないんだ。
桜が「出来たんだから、それでいいじゃない」と言っていたから、僕も気にしなくなったけどね。
それでも、ふとした時に思い出すんだよ。
あれはどうやって砂を吐き出させているんだろうってさ。
やっぱり気になるじゃない?
それはともかくとして、八体の水兵を出した僕は、合身させずにそれぞれを自由に放つ。
それが一番早いし、たくさん獲れると分かったんだ。
むしろあっちこっちに逃げられると、八つの首もあっちに行ったり、こっちに行ったりしようとするみたい。
前に首が絡まってたから発覚したんだけどね。
だから大きな妖怪とか強い妖怪でもない限り、わざわざオロチ状態にする意味はなかった。
もしかしたら水の中では、オロチ状態の方が泳ぎが速いのかもしれない。
だから神様はオロチ状態で使っていたのかも。
そんな大蛇達が戻ってくると、何かしらの獲物を銜えている。
この大蛇は大きな魚を獲ってきたみたいだ。
ちなみに僕は鯛とかヒラメとかの高い魚は獲らせていない。
漁師にバレると五月蠅そうだし、他の魚も美味しいのは多い。
僕が好きなのは鯵と秋刀魚だ。
鯵は影兵を使えば安全なものが食べられるし、秋刀魚は脂がのっていて美味しい。
それ以外にもスズキというのの刺身も好きかな。
割とたくさん獲れるから簡単に手に入るし、この魚大きいのが多いんだよね。
「結構な魚が獲れたわねえ。
そろそろ帰る? それともまだ獲っていく?」
「どっちにしようか? どっちでもいいと言えばどっちでもいいんだけど、皆もたくさん食べるしなぁ……。
それを考えると、もうちょっと獲っていった方がいいかも」
「じゃあそうしましょうか。私はこのままアサリを探して掘るから」
「了解」
桜が暇だというので、今日は鍬を持ってきている。
アサリは掘れば見つかるから、掘って手に入れてるんだ。
もちろん山ほど獲ったりはしない。
獲り尽くすといなくなっちゃうから、適度に獲っているだけだ。
魚の方ならまだいいんだけどね。
神様の眼で視ると、アサリは海の水を綺麗にしているらしいので、獲りすぎては駄目なんだそうだ。
他にもそういう貝はあるらしいので、獲りすぎには気を付けようと思ってる。
前に海老が獲れて喜んだけど、一匹しか獲れなかったから困ったよ。
結局は皆に二口しかない刺身になったけど、あれはプリプリしていて美味しかった。
また見つかるといいなと思うけど、数が少ないみたいだから無理に獲らなくても構わない。
蛸とか烏賊でもいいしね。美味しいから。
そうやって僕達が漁をしていると、十人ぐらいの子供がやってきた。
いったいなんだろうね?
「お前達! ここで何をやってる!! この辺りはウチの村の漁の場所だぞ!」
「村はもっと離れてるよ。
ここは誰の場所でもないし、君達にどうこう言われる理由も無いね」
「なんだと!? お前、そこに女が居るからって調子に乗ってるな! お前ら、こいつをブッ飛ばせ!!」
「なんだ、唯のバカだったのか。
<影兵・自在黒命>! そいつらを殴り飛ばせ!!」
「「「「「!!!」」」」」
ドゴォ! ドガッ! バキィッ! ズドッ! ガンッ!
影兵が五体でボッコボコにした子供達は、あっという間に呻くか泣くかという惨状だ。
しっかしなんで僕達に喧嘩を売ってきたんだ?
霊兵を見たら勝てないって分かるだろうに、それも分からないくらい頭が悪いの?
そう思っていると、三人の髭が濃い男達がやってきた。
なるほど、こいつらが子供達を嗾けたのか。
通りで子供達がバカみたいな事をするはずだ。
「おいおい。お前、ウチの村の子供達に何をしてくれんだ。
事と次第によっちゃ、この脇差を抜くぞ?」
「子供達を煽って手を出させたんだろ?
すぐに失せるか、それともここで死ぬか。好きな方を選んでいいよ。
その脇差を抜くなら抜いてもいいけど、抜いた瞬間に殺す」
「はぁ? クソガキが随分と調子に乗ってるみたいじゃねえか!
だったらここで死ね!」
キンッ! キキンッ!
「<斬兵・豪壮武辺>! 殺れ!」
「「「!!!」」」
ズドン! ドスン! ドォン!!
影兵を三体消し斬兵を三体出した僕は、脇差を抜いた三人を斬らせた。
いつも通りに頭から股間まで真っ二つにしたんだけど、それを見て怯える子供達。
……っていうか漏らしてるね? その程度なら喧嘩を売ってこなきゃよかったのに。
「君達も死にたい?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
一斉に顔を左右に振っているという事は、死にたくないんだろうね。
ま、当たり前だけど。
「で、この死んだバカ三人は、本当に君達の村の者なの?」
「そ、そう。村の中で偉そうにしてるし、脇差とか持ってるから強いんだ。
それに村の人も逆らわないし……」
「ふーん……どのみち子供を使うようなクズなんだから、大した力も無いと思うけどね。
君達は勘違いしてるんだろうけど、脇差や刀だって使い方を知らないと使えないよ?
何も知らなくても使えるのは突きだけだね。説明しても理解できないだろうけどさ」
と言ってもポカーンとしてるから、そもそもの知識が無いんだね。
刀を相手にぶつけたって斬れないんだ、正しく刃を滑らせないと相手は斬れない。
その練習を又太郎や仙太郎はしていたし、僕はそれを見てたから知ってるんだよ。
「ま、とりあえず村に帰りな。こいつらは僕が処理しておくからさ。
もし何か言われたら殺されたと言っておけばいいよ。
鎌倉に住んでるって人に殺されたってね。
実際に僕達は鎌倉に居るから間違いのない事実だし」
「か、鎌倉の人だったのか……」
「これってマズいんじゃ……」
「だから、今のうちに行けば見逃すって言ってるんだよ。だから今のうちに帰りな。
これ以上いると喧嘩を売られた事も表に出さなきゃいけなくなるからさ」
「わ、分かった。それじゃオレ達は行くよ。
本当に申し訳なかった。それじゃ!」
そう一人が言うと、次々に謝って子供達は去っていった。
本当に僕が鎌倉の者かどうかも分からないのに、子供達は信じて去っていったねえ。
楽でいいとはいえ、簡単に信じるのはどうなんだろう? 素直なのは良い事だと思うけど……。
「思ってるよりも素直な子供達だったわね? っと、古兵で処理をするの?」
「まあね。細かくした後で、水兵に海の中に捨ててきてもらう。
そうすれば魚か何かが食べてくれるよ。
妖怪に食べられるマシじゃないかと思うけど、海にも妖怪が居るからねえ。
……ま、いいか」
「いいんじゃない?
どのみちどこに捨てても何かしらの影響はあるでしょうし、魚に食われるだけマシでしょ。
腐るよりはさ」
「よし、細かくなった。後は水兵を出して海に捨ててきてもらおう」
僕は古兵や影兵の大半を消し、代わりに水兵を出して海に捨ててきてもらった。
着ていた服は軽い物というか、一枚だけの布だ。
腰元で縄で縛っていた物でしかない。
いわゆる布の真ん中に穴が開いていて、そこを被って身に着ける服。
稀人が貫頭衣と読んでいたもので、安い値の服であり子供達のと変わらない。
とはいえ汚れる仕事や汗を搔く仕事の人はこの服が多いんだよね。
こいつらは、そんな仕事もしてなさそうだけど。




