0112
Side:黒金
僕は山姫に聞いた西の方へと進み、それなりに移動すると霊力をハッキリ感知した。
これ、さっきの山姫よりも大きい霊力だ。
もしかしてだけど、大級までいってない? 今回は強敵の予感がするから気合いを入れよう。
霊力が感じられる場所から古兵を四体に斬兵を四体出して歩かせる。
僕の後ろに影兵を一体出して黒馬に乗せ、背後と正面の守りとする。
あとの六体は影兵を出しておいた。この影兵はどちらかと言うと防御の為と拘束の為だ。
土蜘蛛を倒す時に拘束したけど、あれなかなか良い戦い方だと思ったんだよね。
今は残り六体しか出せないから影兵だけど、八体出せるなら水兵にしていた。
さて、そろそろだ。
途中で木々が無くなり、目の前にはボロ小屋が見えた。
なるほど、たくさんの人が噂をしていたから混ざったんだね。
おそらく山姥に泊めてもらった人も、山姫に泊めてもらった人も居たんだろう。
それで噂が混ざっちゃったんだろうけど、それって山姫からしたらいい迷惑じゃない?
っと、霊力がこっちに来る? しかも速い!?
ガキィ!!
「キィヒィ!! キキキキキキヒヒヒヒヒヒ、ヒャァァァァァァァァァ!!!」
「全然違うね。山姫が狂ってるって言うはずだよ。完全に狂ってるとしか思えない姿だ。
古兵、斬兵、殺せ。影兵は腕を縄にして拘束するんだ」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
「クゥゥヒィィィィィィィィィィィィィ!!!」
ボロボロの包丁を逆手に持って襲ってくるお婆さん。
しかも髪の毛はしっちゃかめっちゃかだし、眼は吊り上がって着物はボロボロ。
そんな姿の妖怪が山姥だった。
この姿は流石に驚くしかない。山姫と違いすぎる。
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山姥 大八級
大級まで昇ったという事は、数百年に渡って相当の者どもを喰うてきた証であろう。このまま進むと山に祟りを引き起こす者になりかねん。ここで確実に始末するのだ。影兵を使うのは正しい。が、簡単ではないぞ?
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山姥は凄い速さで僕に突っ込んで来ようとするけど、古兵四体がそれを許さずに止める。
しかし山姥の攻撃は速く、そして強い。
ギィィィン!! ドォン!!
古兵が剣で防いだものの、もう一体の古兵が蹴られて吹っ飛んだ。
包丁で戦うのかと思ったら、それだけじゃないみたい。しかも足が速くて凄い力をしている。
古兵が吹き飛ばされるなんて初めてだよ。
すぐに斬兵が攻撃を繰り出すけど、山姥にはあっさり避けられる。
そのうえ左手で殴り飛ばされてしまった。
古兵や斬兵の相手をしながら、それでも狙いは僕らしい。
大級ってこんなに強いの?
「キヒヒヒヒヒヒヒ!! ヒャァァァァァァ!!!」
ズドォン! ドゴォン!!
派手に古兵と斬兵が殴って蹴られ、吹き飛ばされた。
それでも時間は稼げたらしく、影兵が一気に接近して腕を振る。
すると山姥の手足に絡みついた。
しかし山姥は無理矢理に力で引っ張り始める。
すると影兵が少しずつ「ズルズル」と引きずられていく。
そんなメチャクチャな事ある!?
影兵六体に縄を掛けられているのに、それで引き摺るとか冗談でしょ!?
「古兵、斬兵! 一気に切り殺せ!!」
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
ザシュ! ドシュ! ズドッ! ドスッ! ドゴッ! ズバッ!!
古兵と斬兵が切っているにも関わらず、表面程度しか切れていない。
流石にこいつ相手だと将門の短刀を抜くしかないみたいだ。
出来るだけ使わずに倒したかったんだけど、流石に大級だと無理みたい。
僕は腰の将門の短刀を抜き、皆に霊力をさらに注ぐ。
強くなった影兵は引き摺られる事もなくなり、古兵や斬兵も強化されたので勝てるだろう。
そう思っていたら、山姥が突然息を吸い込んだ。
「ヒュアアアアアアアアアア!!!」
ボォォォォォォォォォォォォ!!
何故かは分からないけど、山姥の口から炎が吹き出る。
あんなの反則でしょ! と思うけど、それどころじゃない。
黒馬と後ろの影兵が壁を作って助けてくれなかったら、炎に焼かれて死んでたよ。
あの山姥、完全に僕狙いで炎を吹いて来たしさ。
大級ってこんな妖怪ばっかりなの? 思っていたより遥かに強いよ。
確かに葛葉も強いけどさ、幾らなんでもこれは無いでしょ。
ザシュ!! ドシュッ!! ズドォン! ズダァンッ!!
炎が途切れたからか影兵が前を空けてくれたけど、その時には山姥がバラバラになっていた。
どうやら古兵や斬兵が斬り殺したらしい。
やれやれ、大級がこんない強いなんて………あれ? 消えない?
「古兵! 斬兵! まだ死んでない!!」
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
「ヒュァァァァァァァァァッ!!!」
山姥の手足や胴体に頭が宙を浮き、そして僕に襲い掛かってくる。
素早く影兵が縄になっている腕で叩き落とすも、山姥は僕を殺そうと何度も浮き上がって襲ってくる。
あまりにもしつこい!!
僕は斬兵を消し、代わりに猛兵を四体呼んで山姥を射らせる。
「猛兵! 撃ち殺せ!」
「「「「!!!」」」」
ズドドドッ!!
「ギュアァァァァィィェェァァァ!?!?!」
どうやら効いているみたいだ、さっきと叫び声が違う。
切った後に矢で攻撃しないと倒せないって、強すぎないかな? 流石にメチャクチャすぎるでしょ。
おかしいよ、この強さ。
「「「「!!!」」」」
ズドドドッ!!
「ギィヒィアッ!?!」
ドサドサドサドサドサッ!
山姥の体が地面に落ちると、ピクリともしなくなった。
そのままジッと待っていると消えたので、やっと僕達の勝利のようだ。
「あー、疲れたー! 本当に疲れたよー。
幾らなんでも強すぎじゃないかな? これで大八級とか嘘でしょ?
なら大二級の葛葉はどんだけ強いのさ!?」
なんか大級から強さの桁が変わるとか言ってたけど、本当にその通りだったよ。
級位が一つ違うだけで強さが変わるというのは、冗談でもなんでも無かったんだと思う。
嫌になるほど強いって初めてだよ。
僕は疲れを溜息で吐き出しながら、古兵が持って来てくれた霊玉を受け取る。
ビックリするほど大きいし、中の霊力が明らかに多い。
初めてだよ、こんなに霊力の篭もった霊玉を見るのは。
そんな事を思いつつ、僕は黒馬だけを残して他は消し、東へと黒馬を歩かせる。
とにかく山姫に終わった報告はしておかないとね。
とはいえ人間を食う妖怪でもあるから、警戒はするけど。
黒馬に乗って帰っていると、空の上に何かが飛んでいるのを発見。
あれって………黒霧? なんで飛んでるのか知らないけど、何かあったのかな?
不思議だなと思いつつも山姫の小屋に到着したら、そこには黒霧も一緒に居た。
いったいどうしたんだろう?
「おっと、帰ってきたな。
既に聞いていたので見に行ったのだが、あの大級にまでなっていた山姥を倒すとは思わなかったぞ」
「えっ? 見てたの? だったら助けてよ。
特にあの炎なんて冗談じゃなく死に掛けたんだからね?」
「私の敵ではないのだから、いちいち戦ったりなどせん。
それよりも土蜘蛛に次いで御苦労だったな。
お前の御蔭で見回りの範囲が狭まって助かる。長い距離を飛ぶのも面倒でな」
そういえば黒霧は見回りをしてるんだっけ?
確かに見回る妖怪が居なくなったら楽だろうね。




