0111
Side:黒金
鎌倉に戻った僕は先代の執権に霊玉を見せて説明。
そして執権からの命令書を返したら足利家の屋敷に戻った。
すると早速と言わんばかりに詰め寄られ、金沢の方、上杉の方、赤橋の方に連れて行かれる。
どうやら伊豆の方の事はよく分からず、詳しい話が聞きたかったらしい。
なので僕は途中で見た風景とかの色々を語っていく。
そして土蜘蛛の件になると少し微妙な表情をしたものの、無事に倒せた事には喜ばれた。
ただし、僕は先代の執権にも足利家の人にも黒霧の話はしていない。
しても仕方ないし、向こうも迷惑だろうと思ったからだ。
なので、そのまま誰にも話す事はなかった。
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今日は嘉暦四年の一月二十八日だ。
すでに正月も明けているけど、この日、僕は東へと移動している。
目的の場所は荏原郡という場所だ。そこの森でなにやら妖怪が出たらしい。
再び妖怪退治に出た僕は、黒馬で一気に駆け抜けて行き、荏原郡に到着した。
ここにある町で色々と聞き込むんだけど、また同じ事になったりしないかな?
いちいち面倒だけど見た目が子供だから舐められやすんいだよね。
とりあえず陰陽所に入って詳しく話を聞くかな。
「すみません。ここの近くの森に強い妖怪が出たって聞いて来たんですけど」
「あん? ここは童の来るところじゃねえ。とっとと失せろ!!」
「言うと思ったけどね。じゃあ、これ。執権様からの命令書」
「はあ? 執権からの命令書だと? ふざけてんのか、このガキ!!
こんなも「破くと攻められるよ?」んを出し……」
「一応言っておくと、それ本物だから。
破ると、この町は攻め滅ぼされるよ。
冗談でも何でもなく」
「……………これが本物だとしたら、おめえに合力しろって書いてあるんだが?」
「僕は噂になっている妖怪を退治しに来ているからね。
だから協力しろと言われるのは普通の事だと思うよ?」
なんだか面倒だなぁ。
そう思っていたら、近くに居た奴らがニヤニヤしながらこっちに来た。
バカな事を考えているのが丸分かりだけど、僕は容赦しないよ?
「おいおい、お前みたいなガキがいったい何の用だってんだ?
それに妖怪を退治にしに来ただと? はっ! 寝言は寝てから言いな。
とにかくここから、さっさと失せろ」
「必要な情報を聞いたら出ていくさ。
それより強い妖怪の情報が欲しいんだけど?」
「てめえ……失せろっつってんのが、分からねえのか!!
これ以上ウダウダ言うなら斬り殺すぞ!!」
「その太刀を抜くの?
別に抜いてもいいけど、代わりに死ぬ覚悟をしなよ?
死んでもいいっていうなら抜いてもいいけどね」
「っ! この、ガキィ!! ブチ殺してやる!!!」
キンッ!
「<古兵・勇壮猛夫>! <斬兵・豪壮武辺>! 殺せ!」
「「!!!」」
ザシュッ! ズドン!!
太刀を抜いた男は古兵に首を切られ、斬兵に真っ二つにされた。
他の男達もニヤニヤしていたけど、まったく反応も何も出来ていないね。
正直に言って遅すぎる。話にならないよ。
「「「「「なっ!?」」」」」
「太刀を抜いた以上は殺す。僕を舐めているお前達も死ぬ覚悟があると見做すよ、当然ね。
舐められたら負けなんだ、なら舐めてきたヤツは殺すしかないだろう?
僕はわざわざ執権様の命令書まで持って来たんだ。僕以外にも舐めているよねえ?」
「「「「「………」」」」」
「で、どうするの? このまま情報を渡す?
……それとも執権様を舐めていたと報告しようか?」
「………すまねぇ!! この通りだ!! ワシが悪かった!!
だから頼む、報告だけは止めてくれ! 皆殺しにされちまう!!」
「なら最初から情報を渡せば良かったんだよ。
渡したところで損は無いんだしさ? 出さなかったのは舐めてたからだよね?
それに、そこのお前達も同じだろ?」
「「「「うっ……」」」」
「こいつらにちゃんと言っとく。だから鎌倉への報告だけは止めてくれ!」
「そうしてほしかったら、さっさと情報を寄越しなよ。
こんなところで問答なんて、いちいちしたくないんだからさ」
「あ、ああ! 分かってる! すぐに話す!」
それから話を聞いたところ、森の中というか、小山の中に誰かが住んでいるらしい。
小屋はボロだったり綺麗だったりと色々で、本当かどうかは分からないとのこと。
そこに山越えで泊めてもらった者が居たそうだが、夜中に妙な気配がするので起きたら妖怪だったらしく、慌てて逃げたんだそうだ。
それで助かったらしいが、慌てていた所為でどんな妖怪かは覚えていないとのこと。
他にもそんな事を言っている人は何人か居たらしいけど、その小屋が見つかる人と見つからない人が居るらしい。
北西の山だという事は分かったので、まずはそこへと行く事にした。
………死体? そんなものはあいつらが片付けるでしょ。
そもそもこっちを舐めたのが原因なんだし、僕は鎌倉に戻って舐められたという報告をすれば済むだけだ。
その結果、町の奴らが攻められたって知らないよ。そもそも相手を舐めるのが悪い。
町の寺に泊まった次の日。朝餉を飯屋で食べたら北西へと出発。
黒馬に乗って一気に進み、話のあった北西の小山に入った。
獣道みたいなところしかないけど進み、霊力を元に調べていく。
土蜘蛛の時と同じで霊力の数が少ない。
これはおそらく目的の妖怪が他の妖怪を食べているからだろう。
そう思っていると、大きな霊力を発見した。
僕はそちらに近付いていきつつ、ある程度の距離から古兵を四体出しておく。
まずは守りの古兵を出しておくのが正しい。いきなり攻撃してくる可能性もあるからね。
そう思って進んで行くと、そこには確かに小屋があった。
ボロではなくて割としっかり丁寧に作られているのが分かる。
そんな小屋を見つつ近寄ると、小屋の裏から鋭い声が飛んできた。
「なにやつ! 事と次第によっては殺しますよ!!」
「僕はここに住んでいる妖怪を退治しに来たんだけど、君が旅人を殺して食おうとした妖怪?」
「えっ? 私は人間を食べようとした事など、随分前から無いけれど?」
「えっ? どういうこと? 小山の小屋にそういう妖怪が住んでいるって聞いたんだけど……」
「………とりあえず勘違いみたいね。傍迷惑なこと……」
そう言って小屋から出てきたのは、僕と同じような水干を着た女性だった。
やたらに美人だけど、何故こんな人が山の中に住んでいるんだろう?
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山姫 甲三級
人間を食う妖怪として幾つかいるものの、この山姫は二百年ほど人間を襲ってはおらぬらしい。どうやら別の者が原因のようだぞ? お主が探しているのはこの者ではない
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「あれ? 本当に人間を襲ってないんだ。
神様の加護の眼で視たら、貴女が原因じゃないみたいだね?
山の小屋もボロだったり綺麗だったりって言ってて、いまいち判然としないんだ」
「………神の加護の眼。
お前が土蜘蛛を退治した稀人の童ね。女天狗殿から聞いているわ。
それと、貴方が探している人を泊めて喰おうとしている者は、おそらくここから西へ行ったところの者でしょう」
「知ってるの?」
「知ってる。あいつは狂ってしまった者だから退治してやって。
私のように正気を持つ前に狂ってしまってるの。
ただし強い力を持っててね、私では勝てるかどうか分からないのよ。なので放っておくしかなかった」
「その妖怪は?」
「山姥。
私のように正気を保てない者は狂ってしまうの。そして山姥に成り果てる。
ああなると、もうどうにもならないんだけれど、その分だけ強くなってしまうのよ。困った事に」
「うーん………正気を保っていると山姫で、正気を保てないと山姥になる?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわ。
私達は元々はね、山女という妖怪なのよ。
そこから正気を持つと山姫、正気を持てないと山姥になる。
ただし山姫でも正気を失って狂うと山姥になるの。
西の者はそうではないけれどもね」
「つまり山姫から山姥になった訳じゃなく、元々から山姥?」
「そう。そのまま強くなってしまったというわけ。
山姥は見境無く人間や妖怪を襲うから強くなりやすいの。
だから気をつけた方がいいわ」
「分かった。ありがとう」
「西の者を倒せたら、一度ここに戻ってきてちょうだい。お礼もあるし」
「うん、そうする」
そこで話を終え、僕は西の方へと向かっていく。
それにしても元は同じ妖怪というのも変わってるね?
それに山女なんていう妖怪、初めて聞いたよ。そんな妖怪、居たんだね。




