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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 今年も秋になった。今日は九月の二十三日だ。

 特に何かがある訳じゃないけど、僕は山に山菜やキノコを採りに来ている。

 ちなみに食べられるキノコと食べられないキノコは神様の眼で見極める事が可能だ。


 なので基本的にキノコを採ってくるのは僕の役目となる。

 キノコには危険な毒キノコとかがあるので、余程に見極められる人じゃないと危ない。

 実際に足利家では毒味後にしか食べない物だったんだ。

 僕は関係なく食べるけどね。


 ―――――――――――――――


 椎茸


 キノコの王様と言う者もいるキノコとなる。乾燥させた物は高値で取り引きされるが、原木栽培で数を増やす事は可能。ただし熟練の技が要るので、稀人が挑戦し失敗した。ただしその知識は継がれており、原木栽培に成功した者が居る。軸も美味いので捨てるべからず


 ―――――――――――――――


 おおー! キノコの王様とは凄いね!

 それに軸の部分も美味しいらしいのでギリギリまで掘って抜こう。

 といっても影兵がやってくれるんだけどね。


 ―――――――――――――――


 舞茸


 見つけた者は嬉しさに舞い踊るともいう話があるキノコ。揚げても汁物に入れても美味しい。さらに健康になる効果も複数持つキノコ。なかなか見つからない物なので、運が良かったな


 ―――――――――――――――


 これなかなか見つからないキノコなんだね? 昔採った事があったような……。

 あんまり記憶にないなぁ、とはいえ食べられるなら喜んで採って帰るけどね。

 美味しいらしいし健康にも良いって凄い。


 ―――――――――――――――


 なめこ


 ヌメヌメしているキノコ。このヌメリは毒ではなく体に良い物なので、落としすぎないように注意すべし、お薦めは味噌汁に入れる事だ。異論は認める


 ―――――――――――――――


 味噌汁かぁ……。

 とにかく台所の人達にこのヌメヌメをなるべく落とさないようにって言っておかなくちゃね。

 体に良い物を捨てるなんてもったいない。


 ―――――――――――――――


 松茸


 稀人がキノコの王様と呼んでいたキノコ。赤松の下に生えているキノコだが、日の本では大量に生えているので、王様と呼ばれるのは変な気もするがのう?


 ―――――――――――――――


 そうなんだ……。

 もしかして、たくさん生えているから王様なのかな?

 ま、とりあえず食べられるキノコならなんでもいいよ。

 この松茸っていうのも多くあるから、出来るだけ採っていこうっと。


 ―――――――――――――――


 ぶなしめじ


 味に癖がなく、旨味が豊富なキノコ。あまり有名ではないが、食べると美味いので採っていくがよい


 ―――――――――――――――


 おお、まだ美味しそうなキノコがあったよ。

 影兵を既に二体出してキノコを持たせてるけど、三体目も出した方がいいかな?

 影兵の体に埋め込んでいるのに足りないや。


 僕がそうやってキノコを採りながらも探していると、変な蔓に説明が出た。

 これ、もしかしたら初めて見たかも。


 ―――――――――――――――


 自然薯


 むかごが成長し地面の下に芋を付けた、いわゆる山芋の一種。すり下ろして麦飯などに掛けて食べるとよい。もちろん米でもよいが、精がつく食べ物なので、悪癖持ちのヤツに食わせて頑張らせるべきである。最近、妻の方が五月蝿いらしいしの?


 ―――――――――――――――


 この神様が言っている(さい)は間違いなく赤橋の方だろうね。

 竹若丸も居るし、越前の方の子も居る。

 にも関わらず、自分は子が出来ないと悩んでいたからさ。

 これは無理矢理にでも又太郎に食べさせよう。


 そう思って地面の下を掘らせるものの以外に時間が掛かる。

 影兵の力も強いけど、地面を深く掘るのはなかなか大変だ。

 予想以上に深く掘らないと芋が出てくる事すらなかった。


 そこからさらに掘っていくと下の方に伸びている事が分かったので、さらに深く掘る。

 これはあれだね、鍛冶屋に行って円匙(えんぴ)っていうの作ってもらった方がいいかもしれない。


 稀人が伝えて作らせた物で、穴を掘るのに便利な物があるんだ。

 ………うん? 影兵の手をその形にしたらいいんじゃないの?


 「影兵、腕を円匙(えんぴ)の形にして掘るんだ」


 僕がそう命じると、影兵は右腕を円匙(えんぴ)の形にして掘り始めた。

 すると一気に深く掘る事が出来たので、この方法で良かったらしい。

 やっぱり良い方法とかは自分で考えないといけないね。


 でも円匙(えんぴ)って切れそうな気もするんだけどな?

 そう思ったら、鍛冶屋で見たのと違って、影兵のは掘る所も周りも分厚くなっていた。

 やはり影兵は切るのは駄目みたいだね。そういう兵みたいだ。


 他にも自然薯という芋があるところは見つけたので掘り、全部で四本を手に入れる事が出来た。

 キノコもたくさん手に入ったし、そろそろ帰ろう。


 …

 ……

 ………


 戻ってきて台所方に渡すと凄く喜んでくれた。

 特に椎茸の喜びようは尋常じゃなかったので、やっぱりキノコの王様だけはあるらしい。

 稀人(まれびと)のキノコの王様である松茸も喜んでくれたけど、椎茸ほどじゃなかった。


 そもそも妖怪が出る山には行ける人が多くないし、陰陽師でも山深くまでは行かない。

 それだけ妖怪が多いからだし、周りが見えなくて不意打ちを受けるからだ。

 だからこそ賊が出てきたりするんだよね。


 台所方に自然薯を渡し、神様の言葉を伝えると微妙な顔になった。

 おそらくは「悪癖」の部分に理由があるんだろう、僕も気持ちは分かる。

 神様ですら又太郎の悪癖だと言っているくらいだからね。


 神様にそう思われているというのも、結構恥ずかしい事だと思うんだけどな。

 反省してればいいんだけど、またやりそうな気もするし……。

 困ったヤツだよ本当。


 「あら? 黒金(くろかね)殿。帰られていたのですね?」


 僕が台所方と共に微妙な気分になっていると、ちょうど台所に赤橋の方が来た。

 なにか用なのか知らないけど、早い時間に来るのは珍しいね。


 「さっき帰ってきたところだよ。

 山に行って妖怪退治をしてたんだけど、ついでにキノコを採ってきてたんだ。

 それと精がつくっていう自然薯も採ってきたよ」


 「それは又太郎殿に是非食べていただかないといけませんね。

 最近、私は気付いたのです。又太郎殿の悪癖を封じ込めるには、毎日搾りとればよいと。

 なのでその<じねんじょ>とやらを又太郎殿にお願いしますね」


 「「「「「ハッ!」」」」」


 台所の人達に対して笑顔だけど、すっごい迫力のある笑顔をしてる。

 台所方の人達を脅しても意味は無いと思うよ?

 そもそも悪癖を持ってるのは又太郎だしね。

 それはともかく、全員が食べる分はあるんじゃないかな。すり下ろすんだし。


 僕は台所の人達に頼んで、稀人(まれびと)が伝えたというすり鉢を出してもらい、準備を整える。

 まだ少々早いので今すったら美味しくなくなってしまうだろう。他の料理の手伝いでもしていよう。


 魚を切ったりしながら手伝いをし、ようやく時が来たので影兵に自然薯をすらせていく。

 持って帰る前ぐらいに影兵で綺麗にしているので、洗う必要も無い。

 そのまま一本すりきれたら小鉢にそれぞれ入れる。


 その後はまたすっていき、四本の自然薯をすり下ろした後で見ると、結構な量になっていた。

 台所方の人達も「飯に掛けて食べる物」だって言ってたから、後は自分達で掛けて食べるだろう。


 僕は手伝いが全て終わったので部屋に行くと、既に義観さんと赤橋の方が居た。

 又太郎じゃないのに、早くから待ってたの?


 「キノコは好きですから楽しみなんです」


 絶対にそれだけじゃない気がするんだけど、僕は黙っているよ。

 言ったところで余計な事になるだけだし。


 そうして待っていると全員集まり、そして膳が運ばれてきた。

 そこに乗っている物を見て喜ぶ又太郎。


 「おおっ! これはすり下ろした自然薯か! 久しぶりに食べられるな。

 オレはこれが好きでなぁ」


 「そうなのですね。

 黒金(くろかね)殿が採ってきてくださったんですよ。

 又太郎殿が好きな物だったとは、それはそれは……」


 「「「「「………」」」」」


 皆もそうだけど、そっと視線を外して食事を始めた。

 皆が微妙な雰囲気なのを理解していないのは又太郎だけだ。

 あれは放っておくのが一番だね。


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