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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 今日は赤橋の方について行き、護衛のような事をしている。

 まあ、外に買い物に出るという事だが、屋敷の中に居るだけなのも良くない事でたまにあるんだ。

 僕としては山に行こうと思ってたんだけど、何故か僕が来る事になった。


 理由は霊兵で守ってほしいという事と、今日は又太郎も仙太郎も仕事で来られないからだ。

 足利家はそれなりに所領を持っているし、一族や庶家も多い。

 次期当主の又太郎だけじゃなく、仙太郎が代理で出なければいけない事もあるんだ。


 それが重なった所為で僕が護衛の真似事をする羽目になったという事だね。

 まあ、護衛として出しているのは古兵だ。守るのには十分だろう。

 そして今僕達は雑貨屋に来ている。


 目を輝かせながら売り物を見ている赤橋の方だけど、又太郎と婚姻を結んで足利家に来るまで、屋敷を出た事がほとんど無かったらしい。

 理由は町中が危険だからだ。流石に危険なところに行かせられないって事だろうね。


 子供は遊んでいたりするけど、あれは下級の家か庶民の家の子だ。決して上位の武家の子供じゃない。

 又太郎や仙太郎でさえ、十歳ぐらいになるまで家を出る許可が簡単には出なかったっていうしね。

 男でもそれなんだよ。


 言い換えれば、それだけ治安が悪かったという事だ。

 今はそこまででもないけど、それでも子供を外で遊ばせるなんて事は少ない。

 そもそも人攫(ひとさら)いとかも出るらしいしね。


 僕の場合は(さら)われる前に殺すから大丈夫だけど、それは簡単な事じゃないし、普通の子供には無理だ。

 だから子供を外で遊ばせるとかは少ない、もしくは子供達同士がまとまって遊ぶ。


 そうしないと自分達が守れないからだし、危険そうな大人が近付いてきたら石を持つ。

 当然だけど何かしてきたら投げる為だ。

 子供も抵抗するのが当たり前だからね。だからこそ容赦がない。


 雑貨屋の売り物を未だに見ている赤橋の方はともかくとして、僕も買う物があったら買おうか。


 ―――――――――――――――


 歯ブラシ


 稀人が伝えた歯を綺麗にする為の道具。馬の毛などで作られている事が多い。口の中が不潔だと病に掛かる事が多く危険である。影兵を使っているそなたならば、何の問題も無いがな


 ―――――――――――――――


 そうなんだよね。僕は影兵に毎日綺麗にしてもらってるから問題ないんだよ。

 影兵の指が口の中に入ってくるけど、特に嫌な感じではないしね。

 そして口の中の汚れを全部取って捨ててくれるんだ。

 だから綺麗なんだよ。


 水でうがいっていうのを何度かして、影兵に綺麗にしてもらったら、最後にもう一度うがいをして終了。それだけで綺麗になる。

 ちなみに体とかもそうで、裸になって影兵の体に埋まると、体の汚れを全部取ってくれるんだ。


 寒い時季は川に行っても冷たいからね、源平の頃もそうやって綺麗にしてたんだよ。

 斯明(かくめい)だけじゃなく(つや)葛葉(くずは)も喜んでたっけ?

 冷たい水で体を拭くの辛いからさ。


 どこもそうだけど、秋から冬は水で濡らした布で体を拭くだけなんだ。

 でも綺麗になった気がしないし、なんか嫌なんだよね。

 それが影兵が綺麗に出来るって分かってからは、皆が影兵に綺麗にしてもらってた。


 懐かしいけど、僕は今も影兵で綺麗にしてる。御蔭で毎日綺麗だ。

 ついでに水干(すいかん)とか(ふんどし)も綺麗にしてる。

 なので、これしか服が無くても問題ない。


 又太郎や仙太郎は幾つか着物を持ってるけど、平民はそんなにたくさん服なんて持ってないからね。

 着替えたりなんて無いよ。


 ―――――――――――――――


 石鹸


 稀人が伝えた綺麗にする為の道具。乾燥させて固形石鹸にしている為、持ち運びに便利。ただし肉の臭いがするのが玉に瑕。これを使って歯磨きをする者が多いが、飲み込まないように注意するべし


 ―――――――――――――――


 これと歯ブラシを使って洗うの?

 僕は影兵を使うまで塩を使ってたけど、石鹸で歯を磨く人が居るんだね。


 ―――――――――――――――


 櫛


 髪を梳く為の道具。歯の間が狭く、この櫛を通して問題なければ髪は綺麗であろう。汚れていたりすると絡まりやすいので、目安にはなる


 ―――――――――――――――


 これは赤橋の方もだけど、金沢の方も上杉の方も自分のを持ってる。

 絵が描かれている物もあって、それぞれの絵柄が違ってたんだよね。一度見せてもらった事があるんだ。

 ちなみに男性陣も持ってるけど、僕は持ってない。


 ―――――――――――――――


 簪


 髪に付ける装飾。様々な形の物があるが、金属を使った物は値段が高い。平民が買うのは木で出来た物である


 ―――――――――――――――


 今、赤橋の方も着けているけど、上級の武士の家の女性なら着けている人は多い。

 下級でも銭があると着けているね。見栄を張って娘に買う人も多いみたいだけど。


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 陶器のコップ


 稀人が伝えた物ではあるが、似たような物は古くから存在する。稀人が伝えた物には取っ手がついており、これが今までの物とは違っていた。なので他の物より使いやすい


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 へー……これは知らなかった。

 古い時代のコップには取っ手が付いてないのばかりだったんだね。

 お湯とか入ってたら熱くて持ちにくいだろうに、それでも頑張って持ってたのかな?


 色々と見ていると色々と知れて楽しいね。

 昔も調べた気がするけど、忘れてる事も多いみたいだ。


 ―――――――――――――――


 爪切り


 稀人が伝えた物の一つ。爪が綺麗に切れるのと、怪我をしなくなった事が大きい道具。作るのはそれなりに技術を要するが、現在では普通に作られている


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 これは僕も足利家のを使わせてもらってる。

 使った後は綺麗に洗って影兵で拭いて返しているよ。

 爪が伸び過ぎると引っ掛けたりして困るんだよね。

 まあ、爪を切ってくれてるのは影兵なんだけど。


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 耳かき


 古くからある道具の一つ。これで耳垢を取るのは構わぬが、深く入れたり耳の中を傷付けるのは危険じゃ。そこから病になったり耳が聞こえなくなったりするからの


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 恐いね。僕は使った事ないけど、使う人とかが居るみたいだ。

 気をつけないと耳が聞こえなくなったら大変だからね。

 それでも使う人は使うんだろうけど。


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 孫の手


 何故か孫の手という名前の稀人が伝えた道具。背中が痒い時に使うと便利だが、それ以外にあまり用途は無い。しかしながら背中が痒い時には必要とされる道具。お主には要らんな


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 まあ、背中が痒かったら影兵に掻いてもらえば済むしね。

 僕には必要ないかな? とはいえ背中って、たまに猛烈に痒くなるんだよねー。

 なぜかは知らないけどさ。あれ急になるから止めてほしい。


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 段差付き箸


 先の方に段差がついていて、つまんだ物が滑りにくくなっている箸。稀人が伝えたが賛否両論ある。使うのは邪道だと言う者もいれば、滑りにくくて便利だと言う者も。わざわざ争う必要など無いと思うがの


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 それはそうだね。どっちでもいいじゃん、としか思わないよ。

 滑りにくいなら使いやすいと思うんだけどね? なにが邪道なんだろう?


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 木のフォーク


 稀人が伝えた食器の一つ。先が四又に分かれており、突き刺して食べる為の物。麺を巻いて食べる事も出来るので便利な食器である。箸で突き刺すのは礼儀の無い仕草なので、これを使うとよい


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 確かに箸で突き刺すのは見た目が良くないよね。

 突き刺す専用の物なら使っていても悪く見えないし、こういうのがあった方が良いのかも。


 おっと、赤橋の方が次の店に行くみたいだ。

 護衛の僕も行かないとね。


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