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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 結局は鎌倉内部で色々な事があったものの、日野資朝(すけとも)という人が土佐に流される事で終わった。

 誰も彼もが納得いかない結果になったが、内管領(ないかんれい)外戚(がいせき)が出した結論がこれだ。


 執権は匙を投げていたし、他の者達も好き勝手やってきた奴等が責任をとれと言わんばかりだったんだってさ。

 とにもかくにも、これで一旦は終了となったので、これ以上は何も無い。


 今日は妖怪退治に山へ来ているが、又太郎も仙太郎も納得がいっていないようだ。


 「帝がお怒りな以上は全て明るみにするべきでしょう。

 なぜこのような裁定になったのやら……」


 「言っても仕方あるまい。それに一番問題なのは六波羅(ろくはら)であろうよ。

 連中が間違えなければ元々こうはなっておらぬ。

 そもそも帝が鎌倉打倒を考えておられるなど、まずは慎重に調べるのが先ではないか。

 なぜ明るみに出したのだ」


 「それはそうだね。いちいち騒いだから、こんな事になってるんだしさ。

 そもそも六波羅(ろくはら)の連中は何を考えてたんだろうね?

 それこそ公卿や公家の連中に聞けばよかっただろうに」


 「それは、まあ……そうだな? なぜ六波羅(ろくはら)の者達は騒いだのであろうか?

 それに多治見と土岐という者が出頭を拒否したのも不自然だ。

 もしかしたら鎌倉打倒を考えていたのはこの者達か?」


 「しかし多治見と土岐など碌に聞かん名だぞ。

 仮に考えていたとして、鎌倉打倒の兵を集められるのか? 下っ端の名前で集まるものは多くない。

 鎌倉を本当に打倒したいのであれば、それだけ大きな御輿が必要だ」


 「それで帝の名を勝手に使ったと?

 不敬極まりないですが、六波羅(ろくはら)の者は本当だと思って焦ったのでしょうか?

 だから騒いだ」


 「そうかもしれんが、どのみちもう遅い。今回の失態はまた鎌倉の名を落とした。

 六波羅(ろくはら)の所為だとはいえ、その上にある鎌倉の名も落ちざるを得ん」


 「本当に碌な事ではありませんでしたね」


 本当にね。なんだか段々とだけど、鎌倉が傾いてきている気もする。

 かつての平氏と似たような感じかな?

 大相国が亡くなると一気に傾いたけど、鎌倉は何で傾くんだろう?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は正中(しょうちゅう)二年の六月だ。

 元号が変わったのが十二月だったから、正中(しょうちゅう)元年は一月も無かった。

 それはともかくとして、まだ揉めていた蝦夷(えぞ)の代官職を別の人物に替えたらしい。

 その事で余計に揉め事が大きくなったそうだ。


 「もはや乱のようになっておるそうじゃ。

 代官を安藤季長(すえなが)から安藤季久(すえひさ)に替えたのだが、その結果の乱となる。

 まあ、呆れる他ないの」


 「どうして蝦夷(えぞ)はそこまで揉めているのですか?」


 「どうも最初に蝦夷(えみし)の蜂起があったらしいのだが、その後に安藤氏の内紛も巻き込んでの揉め事になっておるようなのだ。

 その所為で代官の一族郎党まで揉め事に加わっておる始末よ」


 「あーあー、それは駄目だろう。

 そもそも蝦夷(えみし)の鎮圧が先だろうに、なんで自分達の揉め事を優先したのだ。

 そんな事をしておるから解決せんのだろうが」


 「まったくじゃが、言っても無駄よ。

 最早ここまで長く揉めておれば、解決には軍を使った鎮圧しかない。

 とはいえ、なぁ……」


 「負けたら終わりですな。軍を発した以上は、確実に勝たねばなりませぬ。

 とはいえ蝦夷(えぞ)は寒い。こちらで戦うのとは違います。

 上手くいくという考えは甘かろうと思いますぞ?」


 僕もそう思う。

 寒いところなんて行きたくもないし、行かされそうになったら逃げるけどね。

 それはともかく、そこで生きている人達はそこでの戦い方を知ってる。

 多分だけど勝てないと思うよ。


 「その事は横に置いておくとして、そろそろ婚姻だが大丈夫か?

 生まれた子は既に伊豆山神社に居るし、竹若丸となったがの。

 何とかバレずに済んだが、又太郎が口走らぬか心配だ」


 「オレが言う事はないが、(いず)れは発覚する。

 その時はオレが抑えるから大丈夫だ。さすがに殺せとは言うまい」


 「ま、それならよいがの。とにかく、ようやく婚姻じゃ。

 向こうも長く待たせてしまったからの。余計な事はするなよ。

 お前は一度やらかしておるでな」


 「大丈夫。大丈夫だ、たぶん……」


 駄目だこりゃ。なんか同じ失敗をまたやりそうな気がする。

 もうこれが又太郎なんだから、諦めるしかないかな? 仙太郎は溜息を吐いてるよ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから大きな事もなく、又太郎がやらかす事もなかった。

 赤橋家からきた登子(なりこ)という女性は「赤橋の方」と呼ばれている。

 普通の女性というか、特にこれといった特徴は無い。


 ついでに神様の加護の眼で()たけど、おかしな事は無かった。

 つまり性格が悪かったり、おかしな部分は無いようだね。

 後は又太郎が頑張るだけだ。


 それはともかく、今日は正中(しょうちゅう)三年の三月二十三日。

 この日、驚くべき(しら)せが舞い込んだ。

 なんと揉めていた邦良親王が急逝したみたい。

 三つ巴で争っていた内の一つの人が亡くなったとは……。


 その後をどうするかは揉めたらしいけど、<持明院統>の量仁(かずひと)親王が帝の太子となる事で決着したらしい。

 それでも沈静化までは至ってないらしく、色々とあるみたいだ。


 そろそろ揉め事は止めてほしいね。

 後、執権が病気を理由に執権職から退いたらしいけど、次の執権で揉めているらしい。

 放っとこう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は五月二日。

 またもや改元がされたようで、今年は嘉暦(かりゃく)元年になった。

 ま、いちいち物を言う気もなくなってるから無視するよ。面倒くさいし。


 「黒金(くろかね)殿、いらっしゃる? 皆様がお茶にしましょうと言っておられますよ」


 「居ますよー。とにかく行きます」


 なぜか「赤橋の方」がちょくちょく僕を誘いに来るのはなんだろう?

 今までは「上杉の方」だったのに、今は「上杉の方」が遠慮してる感じ。

 ま、いちいち口を出すと面倒な事になるかもしれないので、僕は何も言わない。


 部屋に行った僕は座り、皆がしている話を聞く。

 どうやら蝦夷(えぞ)の話のようだ。


 「黒金(くろかね)が来たのでもう一度言うが、侍所の工藤貞祐(さだすけ)が追討に派遣されたらしい。

 これでさっさと終わればいいのだが、この件も長く揉めすぎておる。簡単には終わらぬであろうよ」


 「勝ったところで現地の者は従わぬか。

 仕方がないが、従ったところで地位が悪くなるなら従わんのだろう。

 気持ちは分からんではないがな」


 「それでも面倒このうえないですよ。さっさと終わればいいと思います。

 どうせ、最後は負けるんですから」


 「それはそうじゃが、意地というものもある。

 そこを汚すと揉めに揉めるからのう。

 そもそもは内管領(ないかんれい)が双方から賄賂を貰って下らぬ事をするからよ。

 ほんに愚かな事を……」


 「今さら愚痴を言っても始まらんが、ここまで尾を引くとはな。さっさと終われと思うだけだ」


 「ええ。それに、そもそも揉めていても誰も得をしていないでしょうに」


 それでも揉めるんだよねえ。これも頼朝が言っていた愚か者が争う醜き世かな?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は七月十九日。

 蝦夷(えぞ)に派遣されていた工藤貞祐(さだすけ)という人物が安藤季長(すえなが)を捕縛して鎌倉に来たらしい。

 これでようやく蝦夷(えぞ)の揉め事は終わりそうだ。


 と僕は思ったんだけど、義観さんはそう思っていないみたい。

 片方を捕縛しても、その残党が騒ぎ立てる可能性があるので、まだまだ終わるかどうかは分からないそうだ。


 特に下の者が騒ぎ立てていた場合、上の者を捕らえても終わらない事があるみたい。

 面倒だね、本当に。


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