表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/82

74.風邪薬

『――で、一人で湿地帯となった元砂漠エリアで稲刈りしていたんだね』


「そう、稲に似てるって聞いてたけど、実が薄いピンク色でさ。それが稲穂と同じように実ってて不思議な植物だったよ。で、その匂いがサクランボでさ!」


『サクランボはちょうど日比谷がこの間買ってきて室内で育ててるよね?』


「そうそう。いい匂いだったし、観葉植物でもokだって言われたから」



夜都が昨日、南の港町(ポルタ)で立ち上げたギルドに仲間が加入した件を大和に話そうと電話したところ、大和はすでにレタスから仕事の合間に聞いていたので、ついでにその後の出来事を説明していた。

状態異常回復に必要になりそうだった“アガタの実“が稲穂ではなくサクランボであったという衝撃の事実、しかもこの話には続きがあった。



「それでログアウト後、サクランボに色々加えてったんだけど、一つだけ組み合わせが見つかったんだ。状態異常回復の材料になりそうな“葛“がね。ただ、もう一つくらい必要そうだけど」


『葛ってプランターに植え替えたあの葉?』


「葉のほうは匂いが弱くて、根のほうが必要らしい。今日スーパーで葛粉を買ってきて試したら、ずっと治らなかった鼻水が止まってさ」


『え? それって風邪薬?!』


「ほら、葛根湯ってあるじゃん、葛の根。俺にとっては香水みたいにすごくいい匂いなんだよな。それでもしかして、と。今回は先に現実世界(こっち)で作れちゃいそうだな」



大和は、暢気に話す夜都に流されないよう慌てて話を確認する。もし本当に()()()()()回復薬なら大変だと。



『日比谷、それ、風邪、つまり()()だからね、効能が上がると色んな細菌性やウイルス性の病気に効くようになるんじゃない? とんでもないことだと思うけど』


「!」


『まだ完成した回復薬ではないんだよね?試してない組み合わせは残ってる?』


「家にあるものは全部試したよ。あと、購入してないけど薬草の匂いを感じた植物をリストアップしてある。特に樹木系はマンションには持ち込めないから多いな。スーパーで買えるものがあるから試してみるよ。でも、えっと、これ極めたらエリクサーみたいなのになるのか…」


『…2度転職してるから案外難しいポーションもそのうち作れるかもね』



夜都は、大和からヒントやアドバイスを貰い、今後の方針をある程度立ててから電話を切った。大和は平日忙しいのに本当に感謝しかない。

現実世界では何に繋がるかわからないけど薬師関連を磨き、異世界では創造主探しに繋がることをする。夜都はチラッと時計を見て、今日もログインすることにした。




………………………………



夜都がログインすると、そこは西の砂漠の町ラクスの道端だった。昨日は時間がなくて中途半端なところでタイムアップしてしまった。現在の時刻は23時、いつもよりやや遅い時間だ。だが、ギルドメンバーの状態を調べるとマリリン、マッド、テッドがログイン中だった。恐らくギルドホームだろうと、夜都もゲートでそこへ向かう。



「よーヨル!」



ホームの門を開けると、ちょうど工房から出てきたマッドが声を掛けてきた。



「よう、マッド。テッド達もいる?」


「ああ、テッドも工房の中だ。マリリンは薬草畑で何やら作業してたよ」


水撒き人形(あれ)か?」


「そうだ」



何となくマリリンが関わると本人にも意図しない何かを起こすので、夜都はすぐに畑へ向かった。



「???」


「あ、ヨル、いいところに!」とマリリンは嬉々として駆け寄ってきた。


「……マリリン、これは一体?」


「んー、何かね、妖精さん的な世界の繋がり?」



夜都は呆気に取られた。昨日見たときはこんな風ではなかった。東の町アルマにあるマイホームの畑からいくつか植え替えをしておいたが、そちらでも一際目立つアウロラの木がすでに大木に成長し、更に木のウロ周辺から例の光る丸い綿毛のようなものが出て来ている。そして――



「もう水撒き人形(ギミック)が水撒き妖精になってる!これ、最初からか?」


「んー、設置したとたん進化?して、おおーって思ってるうちにあのフワフワがあの木から出て来て。ここの畑って、アルマのヨルの畑と、木を通して繋がってるのかなあ」


「どれどれ」と夜都が木のウロを覗くが、ゲートのように別の場所に行ける様子はない。でもここからフワフワが出てくる。あっちの畑から引っ越してきているみたいに。それに、畑の植物が自分が植えたものより種類が増えているように見える。


「よくわかんないけど、あっちと同じようにこっちでも収穫できるなら助かるな。そうだ、こっちの妖精にも名前を付けようか。あっちがミリィだから…マリリンに因んで“マリィ“でどうだ!!」


「おおー、私の名前から、いいね!よろしくね、マリィ」



マリリンがマリィの頭をよしよしと撫でると、マリィはフワッと微笑んだ。少し発光が強くなり畑の上をクルクルと回る。



「喜んでるみたいだな」と夜都はその様子に満足していたが、後ろから、はーっと、大きなため息が聞こえた。


「あれ、アカやん、いたんだ」


「何が“喜んでるみたいだ“だ。その大雑把なとこが理解できんわ。…新しいゲートはどうなった?」


「ああ、受け取った分は完成させたよ。ただ…」


「ん?」


「ごめん。実は一つ、呪文を間違えて作ったやつがあってさ。見た目は他の完成品と同じなんだけどちゃんと起動するかわからなくてさ。上手くいけばGPS機能?がついてるはずなんだけど」


「なんや面白そうやな。どっかで設置して試そう!」


アカやんならそう返すよな、と夜都は内心思いつつ提案した。


「じゃ、ダンジョン系の攻略エリアのセーフティエリアだな。どっか必要なとこないか?」


「んー、レタスが北の氷山攻略で一ヶ所セーフティエリアが見つかったと言ってたな。ヨルは北に全然行っとらんやろ?丁度いいから設置がてら見てきたらどうや?」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ