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75.氷山の迷宮

アカやんの提案に、夜都は確かに丁度いいと思った。


(創造主の記憶を辿るのに、北にも一度行っといたほうがいいしな。問題は、上手くゲートの設置が出来て、大和がそのゲートを使う必要が出来たとき、そこまで連れていかないとだけど…ま、連れていけばいいか)


グルグル考えて夜都は北の氷山方面に行くことにした。氷山の麓にも一ヶ所セーフティエリアがあり、そこはアカやんも夜都も登録済みなので其処からのスタートだ。



…………………………………



「失敗したかな」


「ああ、アカやんも気がつかなかったか。二人で勢いできちゃったよな…」



今、一番ホットだが一番難易度が高いと言われているエリアに生産職二人で来てしまったのだ。早々に教会行きになってもおかしくない。



「ヨル、何かいい能力ないんか?」


「んー、マッピングは使えるとして、後はなあ。あ、凍結の状態異常回復薬とHPMPポーション渡しとく」


「サンキュー!このポーション瓶のサイズが小さくていいよな!」



創造主の記憶を探るのはもう少し見晴らしのよい場所にしようと思い、取り敢えず先に進むことにした。


この氷山クエストは、“氷山“と名付けられているが、山登りではなく、氷山の中の洞窟を進んでいく。道は蛇行し多岐に分かれ、モンスターの強さだけでなく、この迷路の攻略の困難さが難易度を上げている。

これまでの夜都は、地図が読めない、方向感覚が怪しい、頭の中で地図を描けない、と、兎に角相性が悪かったが、今では寧ろ得意なエリアになっていた。また、潤沢にある凍結の状態異常回復薬を事前に飲んでみたらそれが意外と効果的で、凍結状態にする攻撃をレジストすることがわかった。



「スイスイ進んでいくよな。ヨルって反射神経いいし、弓矢も投擲も正確で、攻略にも向いてるんやな」


「アカやんこそ攻撃力あるじゃん、その如意棒みたいな槍」


「これはオレ特製の電子回路を組み込んでおって、手元のスイッチで自在にリーチを変えられるという優れもんでな」


「何それ俺も欲しい、って、右の側道200より2匹フローズンフロッグ」



遠距離だが、夜都は発見したモンスターの説明をしながらも小型の木製の杭を2本投げる。グェッという鳴き声がして倒したことがわかった。



「索敵も早いし、楽や~」


「近接は苦手だし非力だからよろしくな!」



暫く進むと、洞窟内が急に拓けて、大きな空洞が現れた。地面の一部が一部凍結した湖になっている。その湖の天井部分が10階建ての高さほどあり、更にその上の方に横穴が見えてそこから光が漏れだしている。



「なんや、あそこまでジャンプしろ言うんか?」


「無理じゃね? ここ、行き止まりだったか?」


「ヨル、あれ見てみ!」



アカやんが指差した先には、四隅に石を置いた布が置かれていた。



「これは…! セーフティエリアや!」



アカやんの言うとおり、その場所にゲートを設置しようとすると、選択可能な状態になっていることがわかった。



「や、やるか?」


「ハハ! ここに来て何をビビる」


「ま、失敗したら、普通のゲートを設置し直せばいいか」



夜都は目印になっていた布をどけ、そこにゲートのリングを置いた。

それは通常のリングと形状が異なり、細いリングが重なるようにくっついていた。

夜都はしゃがんでリングに触れながら設置の呪文をとなえる。



ゲート設置(Activate )



フォンッと複数の音が混ざった電子音のような響きと共に、光がリングから立ち上がる。いつもと違う設置音に合わせ、細いほうのリングが浮かび上がり、ゲートエリアをなぞるようにクルクル回転する。


夜都が目を凝らしてその細いリングを見ると、なにやら数字のような文字がキラキラと光りながら絶えず流れていっている。



「――これ!座標だ。上手く起動している。天空の草原(あそこ)に行けるかも!」


「よし!試してみよう!オレは行ったことがないから、お前と手を繋いで試させてくれな。もしオレ一人が駄目だったら、普通に町に戻るわ。それでどうや?」


「それでいいよ。この洞窟の攻略はまた改めて来よう。あの横穴に行く方法を考えないとな」



二人でゲートエリアに入り、夜都は目を瞑って天空の草原の座標を探す。


(…あった! 選択できる! なんだこれ面白いな)


ゲートの行き先は選択メニューが脳裏に浮かぶのだが、今回はその行き先の後ろに座標情報が表示されている。そして天空の草原のみ、その数字が絶えず変化しているのだ。

夜都は行き先を選択して決定させる。体がやや持ち上がったような感覚がして目を開けると、そこは思い浮かべていた通りの風景だった。清涼な空気と少し湿った土の匂い、先ほどとは違い、心地よい涼しい風…



「あ、アカやん…?」と、思い出し、夜都はキョロキョロ辺りを見回すが誰もいない。が、ふと木の影から何かが動いたような気がして慌ててそちらに向き直す。


「……遅かったね。待ってたよ、ヨル」



急に側に現れたアレクに対し、夜都はとっさに何も返せなかった。










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