67.集合
夜都は元気を取り戻して昼食を平らげ、食後に植物の植え替え作業に取り掛かった。ベランダに新聞紙をひいて鉢とプランターを置いていく。
「えっと、生命力の強いヤツは鉢を分けたほうがいいんだよな」
「じゃあ、ハーブ系をまとめる?」
「そうだな…因みにハーブ、野菜、花、あと種が何種類か。それから観葉植物が一鉢、そっちは室内にそのまま置こうかな。鉢カバー買うの忘れたわ」
天気の良い昼下がり、あれこれ考えながらなんとか植え替えた。
「今日は、夕方に日比谷のホームでレタス達と待ち合わせだよね」
「ああ、後、夕依が少し遅れてくるらしい」
「じゃあ少し早くログインして寛いでようか」
二人は軽食を食べてからログイン。時刻は16時前、結構ガーデニングに時間がかかってしまった。
夜都は2日ぶり、大和は1週間ぶりのログイン。そして案の定、大和は夜都の“畑“に驚いた。
「これが畑の大木。ハンモックでも引っ掻けてみたらどう?」
「それ、いいな!でも昼寝しそう~」
「そしたらいつの間にかログアウト? アハハハ」
枝の強度は問題なさそうだったため、ハンモックをぶら下げてみた。少し木陰になり良いかんじだ。二人でブラブラ揺らしながら、畑を眺めていると癒された。
夜都はこういう生活を余暇時間にしたかったんだよな、と思い出していた。
そのうち、バラバラと約束していたメンバーが集まりだし、大木の下に椅子を置いて話を始める。
「ヨルくん、この木の赤い実植えてみたけど芽がでなかったわよ」
「レタスんちじゃだめか。うちの妖精のお陰かな…何か育てたいけど難しそうな苗とか種があったら植えてっていいよ。いい匂いのやつだけだけど」
「“匂い“は君しかわかんないと思うよ…」
「ヨル!私今度持ってきます♪」
「ユイちゃんも持ってるの!」
一頻り畑の話をしてから、大和が本日の目的である“ヨルの新しい職業“について説明を始める。これは、大和が自分にさせて欲しいと事前に言ったのだが――
「――というわけで、ヨルは夢で創造主から“御告げ“を受けとるようになったわけだけど――」
なぜか大和は“御付げ“という言葉を使っていた。あくまで受け身で一方的な話をもらう、ということだ。前にレタスには夢の事を少し話していたのだが、大和の説明と相違があっても特に何も言ってこない。
(きっと大和は前もってレタスに、みんなへの説明の内容を言い含めてあったみたいだな。俺が、創造主と強く共鳴して得た情報、とはならないように)
夜都にも大和の意図がよくわかる。これは、どちらかというと、夕依に対する説明、外部向けの説明なのだろうと。なぜなら夕依は竜騎士と繋がりがあり、夜都がまるで創造主の記憶を持っていると誤解されたら大変だからだ。
大和は、創造主はまだどこかで生きている、それは夜都ではないし、夜都の中に隠れているわけではない、と信じている。
(大和は、根拠のない直感とは言ってたけど、あいつが信じてくれてるなら俺もそう考えないと…!)
大和の説明の後、夜都がこの新しい職業を選ぶかどうかの話し合いになった。
「選んでも問題ない」と主張するのは、大和、レタス、レイナ、「危険だから選択肢からキャンセルしたほうがよい」とは夕依だった。そして、夜都は――
「俺は、転職しようと思う。転職しても今ある特殊能力は消えないし、可能性も広がる、タイムリミットがあるんだし、恐れて先に進まないより、選択したい。例え後悔することになってもさ。それに」
そこで一旦区切って少し俯いて一息入れ、やや照れながら続きを話す。
「みんな、協力してくれるために来てくれたんだろ。何かあったら、困ったら、頼らせてくれよな!」
もちろんだ、と三人の声が重なった。仕事もあるし、それぞれ立場も理由も違うけれど、頼れる仲間であることは同じ、夜都は改めて覚悟を決めることにした。
転職の方法は他の手続きとは異なり、少し変わっている。
別に教会やギルド、領主などの権威ある者に頼んで行うわけではなく、基本的に自分でどこでもいつでも行うことができる。
転職後に出来るだけ速やかに冒険者ギルドか生産者ギルドに向かい、ギルドカードの記載を変更してもらうこと、と規定されているが、“速やかに“という曖昧な表現のせいで、いついってもペナルティなどは発生しない。クエストを受けたりしない限りバレないので、ごくたまに変更していない人もいたりする。
なお、具体的な変更方法だが、ステータスに出てきた新しい職業名を正しく読み上げ、最後に転職する、と意識して宣言すると、魔法的なエフェクトが発生して完了だ。転職候補から外すときは、最後にキャンセルする、削除する、などの文言でようとされている。
夜都ははっきりと宣言した。
「俺は、『世界再生管理者』に転職する!」
とたんに夜都の身体が虹色に光りだす。色は職業によって異なるようで、二回目の転職でおそらく上級職業にあたるものだろうからか、ちょっとカラフルな色合いだ。
「……」
「ヨル、何か職業以外に変化してない? 特殊能力は?」とすかさず夕依が聞いてくる。
「えっ、あ、あー……うん。まだ職業名だけみたいだ」
夜都はステータス欄を見ながらゆっくりとそう答える。実際には口に出せない能力が増えていたとしても。
ぎりぎり一日一回の投稿に間に合ったでしょうか?!




