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62.誓いと覚悟

安達(レタス)は、夜都達も夕依の兄の話を聞いていたことを知ると、夕依の兄の“治らない病“を治したのは夜都達か、と聞いてきた。

医者として守秘義務を守りつつも確認したかったらしい。



「いや、俺まだそんなポーション作れないぞ。たとえあっちのレシピがわかっても実在する材料で作れるとは思えない。お兄さんの完治はそんなに奇跡的な話だったのか?」


「まあな…それで夕依は元気になったかと思ったらまだ暗い顔をする時があってなあ。それが竜騎士(恋人)のせいだったってのか」


「ま、確かにな。取り敢えずお前はその二つの特殊能力を磨いていったらどうだ。いつかそれが何かの助けになりそうだ」



安達の話に大和がすかさず念を押す。



「安達さん、日比谷の能力を医療に使おうとはしないよね?」


「ああ、勿論だ!医者の名に賭けて誓ってもいい。なあ、向井(レイナ)、お前もそうだろ?」


「もしかして向井さんも医者?」


「“レイナ“でいいわよ~。私はリハビリ専門ね。あ、名刺渡しとくわ。私もこの職業に賭けて口外したり利用したりしないと誓うわ!」



お互い情報交換をした後、今後の方針を話し合った。予定とは違ったがやはり協力できる仲間はありがたい。



「私が思うにさあ~、もうさっさと竜騎士達とも連携とっちゃえば?夜都くん、そのうちの二人とフレンド登録してるんでしょ?」


「アレクはしてないよ。アサは返事ないけど夕依経由なら。でも夕依が、竜騎士には近づかないでほしいって。事情を知ったからには連れて行かれて終わりにされそうだと」


「タイムリミットってのが気になるな。そこは夕依は何て言ってたんだ?」


「アレクにあと3ヶ月、と言われたらしい。その後も組み立てたゲームの機構は残すけどいつ断絶するか保証できない、とか」


「ふむ…」


「俺と日比谷は、まずあの世界、便宜的に“ナイト“と呼ぶけど、ナイトで創造主を探しますつつ、その機能を代替できるものがないかをゲーム攻略しながら模索しようと考えている。夕依の話だと、竜騎士達はもうずっと創造主を探しているのに見つけられていない。別の視点を持つ俺達が何か新しいものを見つけられるかもしれない」


「もし竜騎士達がコンタクトを取ってきたらその時は受ける、という訳か。積極的には動かないってことか」


「幸い、ゲームの舞台となっているエリアは“原初の大地“と呼ばれる聖地があるから、何かしら痕跡がありそうだしね」


「んじゃ、ヨル、お前早くそこに行けるゲートを完成させろよ!」


「ああ、そうだな」



話し合った結果、レタスとレイナは創造主探しと聖地や創世にまつわる情報集め、夜都はゲート作成や能力の熟練度上げ、大和は夕依やAIなどからの情報収集、と大まかな役割を決めた。

そして、何時間にも及ぶ重い話の後は自然と酒を飲もう、という流れになり、外も明るいうちに皆かなり出来上がっていった。

最初は安達が歳上のため遠慮がちに話してた夜都達も酒が入り段々たうちとけていく。



「――んで何?お前、振られちゃったのか?」


「うるせえ。まだ何も言ってねえよ。お前こそ、なんだレタスって名前、女かよ」


「知らねえのかよ、安達レタス、俺の近所の八百屋で売ってて旨かった」


「知らねーよ、んなローカルネタ。それになんであっちじゃ女言葉なんだよ」


「それ、夜都くん、安達先輩のお姉さんのマネよ。美人看護師で有名でね。先輩はシスコンかもねえ~」


「だから知らねーって!」


「そういえば、私ね、ヤマちゃんは精神科医かと思ってたのよね~。それが、まさかのバンカー!キャハハハ」


「おい向井、こいつにぴったりじゃねーか。理詰めで粘り強くて、んでしつこい。ちゃんと俺んとこ融資しろよ~!」


「あ~、わかる。大和は昔からしつこい! アハハハ!」


「…………。」


打ち解けるどころかお互い傷つけあっているかもしれないオフ会がこうして過ぎていったのであった。



………………………


その日の夕方、店の前で三人と別れた夜都はとある大手の園芸専門店に来ていた。雨が降っているせいか、屋外の販売エリアに人気(ひとけ)はない。

夜都は今日、自分に割り当てられた役割が決まって、やっと本格的にこの世界で力を使う覚悟ができた。なぜかこの呪文を現実(こっち)で唱えたことがなかったのだ。


薬用植物(Scent)嗅覚感知(Snesthesia)


熟練度がかなり上がった夜都には、東京ドームくらいの広さがあるこの園芸店でも簡単に感知エリア内に納めてしまう。


(はあ~…わかっていたけどすごいなこれ)


大和はここのところ滅多に夜都に特殊能力を現実(こっち)で使わせようとしなかった。せいぜい、料理した際に副次的にできるポーション効果くらいだ。新しい調合も最近は試していない。一度、携帯探しで座標設置ができるか試すよう頼まれたがあれが最後だったかな…。俺と同じで好奇心と恐怖心が相まって上手く行動に移せないのだ。

今、感知した薬草は二桁位ある。一部、樹木エリアにもあるようだ。


(さて、どうしようか。全て買っていくわけにはいかないしな)


夜都は、取り敢えず全部の植物の名前と匂いの特徴をメモしていく。雨の中の作業だったため紙がしわくちゃだ。

その中で、これは、というものをいくつか買っていくことにした。持ち帰れる量ではなかったため、その他に購入した土とプランターと一緒に配送の手配をお願いした。すべて終わる頃には日がすっかり暮れていて身体も冷えきっていた。


その日の晩、夜都は見事に熱を出して寝込んだのであった。



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