29.クエスト
あらすじがあまりにイケてなかったので直しました!
夜都は、大和のチュートリアルクエストに付き合う約束をしていた。このゲームはこういうところは寛大で、依頼をきちんと達成できるかどうかの確認作業だから、手を出さなければ他の人がいても問題とされない。
またアドバイスしたり、戦闘後にHPポーションを渡すなどのサポートもいいことになっている。
二人はクエストを受注するためカウンターに向かった。大和は先ほどと同じくナディアに話し掛ける。
「ナディア、教官から訓練修了書をもらったからクエストを受注したい」
夜都は、大和が受付に親しげに話し掛けているのを見てびっくりした。
(へえ、RPGでNPCにこんな接し方する人もいるんだ…)
夜都を含めプレイヤー達は、住民に対してNPC-ノンプレイヤーキャラクターとして接し、事務的なやりとりしか行わない。住民はいつもあまり代わり映えない様子で同じ行動をしているし、何より話し方に少し機械っぽさが残っているからだ。VRになってほぼ人間に見えるようになったが、RPGはどのゲームも進め方が定型化していて、無意識にこれまでと同じ接し方、つまり機械に対するそれになっている。
しかし大和は、努めて丁寧にかつ相手を人間として接していることが見てとれる。
夜都が興味深く見ていると、ナディアはにこやかに応対してきた。
「ヤマ さま。訓練修了お疲れ様でした。 確かに 修了書 を承りました。 それでは ヤマ さまの職業で受注可能なクエストをご案内します」
「ああ、職業だけど転職しているんだ。先に冒険者カードを更新するか?」
「さすが ヤマ さま!もう転職されたんですね。カード をお預かりします」
夜都はこのやりとりを見ているプレイヤーが周りにいないか見回したが、幸い離れたところにしかおらず安堵した。
(いったいなんなんだよ、この二人の親しそうな会話。受付があんな風に話すの初めてみた……)
「―――更新しました。カード をお返しします。こちらが クエストの一覧 になります」
「はあ?クエスト一覧?」
思わず夜都は反応してしまった。
「どうした、ヨル?」
「い、いや……何でもない。ごめん、気にしないで」
だが大和は夜都の反応に、少し納得したような表情を見せた。夜都はその"何でも知ってます"というを見て、少し顔をしかめた。
「ありがとう、ナディア。全部で3つか……、ヨル、どれがいいか見てもらえる?」
「えーっと、こんなにあるのか。」
「ヤマ さまが転職されたので 選択肢が増えたのです」
夜都は、自分にまで受付に話し掛けてきたので驚いたが、動揺を見せないようリストに集中した。
「(何か、特別扱いしてないって言い訳してるみたいだ) なになに、1.始まりの町の南の街道沿いに出没するウェアウルフの討伐 2.始まりの町の西南西にある廃村シルワの遺物の捜索 3.始まりの町の東の森にあるルルの滝付近でダンジョンの入口の探査……。」
「どうした?」
「いや、これ……、初回のクエストなら1.でいいと思う。ウェアウルフは大抵2、3匹の群れだけど一番下のランクのモンスターだし。ただ、2.と3.は、ぜひ受けたいクエストだね」
「ナディア、2.と3.も今、受注しておいて後で消化できる?」
「これらは 同時の受注 はできませんが どちらも 至急の依頼 ではありませんので 仮受注 として一定期間押さえておくことが可能です」
「一定期間とはどれくらい?あと、破棄したときのペナルティはある?」
「期間は どちらも1ヶ月間です。仮受注 にペナルティ はありません」
「ヨル、2つを押さえてもらえばいい?」
「ああ、願ってもいないことだ。って、そんな方法あるなんて…」
「では、1.を受注、2.と3.を仮受注で。ただ、2.と3.は後で私を含めたパーティーで受注したい」
「ヤマ さま 承りました。書類を作成しますので サインをお願いいたします。また冒険者カードにも記録いたします」
ありがとう、とにっこり笑って返しているのを見て、夜都は改めて、後で色々聞かなければと考えていた。
……………………
「そーれーでー?」
「ヨル、今は時間がないしゲームを楽しもう。」
言外に"今は聞くな"と言ってることに、夜都はハッと気がついた。
(そうか…この仮想空間では会話を見られているかもしれない?って…運営会社にか?理由はわからないが、さっきの大和と受付とのやりとりは普通じゃなかった、いや、普通だったというか……)
夜都は気になって一人でグルグル考え始めたが、それには構わず大和は色々と質問してきた。
「でさ、魔法の体系なんだけど」
「体系?」
「そう。四大属性と言われる火・水・風・土。これはRPGでは定番なんでしょ?そして、このゲームでは、本来は、属性に得手不得手がある」
「ああ~、職業に適性があるのと同じだな。それが?」
それが、と言いながら、大和は軽く手を前に付き出して詠唱し始めた。
『***』
二人が歩いている街道の先に、脇の藪から水色のゼリーの塊が飛び出してきた。大和の手から火炎バーナーのような細長い火が吹き出してゼリーを貫く。
「定番のスライムに出逢えると感動するな」
「その割にあっさり攻撃してるじゃん。…今何て唱えたんだ?」
「brennen 、ドイツ語の動詞だよ」
「なんだ、そっか。そういや第二外国語で選択してたな」
「そうそう、知ってるけど普段使わない単語、ぴったりでしょ。ヨルに送った呪文の案にもドイツ語の入れておいたけど見なかった?」
「ああ~、知らないし発音できないしで選ばなかったわ」
「じゃあどれを選んだんだよ。唱えてみてよ」
うっ…と夜都は唸った。なぜなら他に提案してくれた呪文は文章になっていて、人前だとちょっと恥ずかしくなる言い回しが多かったからだ。
ニヤニヤしている大和をみて夜都は、またやられた、と嘆いたのであった。




