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28.戦士

夜都はゲートを使って始まりの町グラドスに戻ってきた。

ここグラドスはほぼ綺麗な真円の形状をしており、町の中と外を塀で隔てている。ゲートは町の中心部にある教会内と、町の四方に設けられた各門の内側に、計5ヶ所設置されている。

夜都は前回と同じく教会内のゲートに降り立った。ここは、正確には教会内主祭壇の脇にある予備室内である。部屋からでるとすぐ主祭壇が見える。その祭壇前に、神父に捧げられた復活の祈りによりリスポーンしたと見られるプレイヤーが次々に出現する。


(いつ見てもシュールだ。って、あれは!)


近くに駆け寄ってみると、先日チャットしたれたす(レタス)がリスポーンしてきたところで、夜都に気がついて声を掛けてきた。



「ヨルくん見っけ!」


夜都は思わず逃げたくなったが、なんとか堪えて返事をした。レタスは、話し方は気さくで女性らしいのに、黒い髪を全体的に短く切り込んだ、いかつい戦士のような二十代半ばの男だ。職業は夜都と同じ『薬師』を経て『医薬師』になった。この職業はプレイヤーに何の薬がよいか直感でわかるそうだ。レタスは生産職にも関わらずいつも戦士のように鎧を身につけている。まあ似合っているし、実際戦うとすごく強くて頼りになるけれど。きっと次の職業は戦う医者系だ、と夜都は内心思っている。


「どこでやられたの?」


「北の氷山よ。山越えクエスト、今プレイヤーに一番熱いのよ~」


「寒くて熱い、ね。また戻るのか?」


北の氷山を越えると新しい町がある、と住民から情報が出て、今、多くのプレイヤーが挑んでいるらしい。

攻略依頼を出したのは、なんとプレイヤーだ。自力で攻略出来なくて、かなりの額を投資している。まあ、あまりに難易度が高くて誰も攻略出来ないから気持ちはわからないでもない。


「うん、パーティー組んでて、わたしのサポート少しは役に立ってそうだったし。あ、ユイちゃんと一緒だったのよ~。あのこ、君に会いたがってたわ」


「そっか。戻ったらよろしく言っておいてくれ。暫くグラドス近辺にいると思う」


「はあい。あ、ヨルくん、クエストに氷結の状態異常を解除できる薬が必要なのよ。なんとか作ってね!」


「ああ、もし出来たらすぐ知らせるよ」


「じゃあ戻るわ。近くまでゲートで行く。またね!」



レタスはゲートが設置された隣の予備室内に入っていった。夜都も移動して大和のところへ向かった。



…………………………



訓練所には話が通っていたらしくすんなり入れた。

まずはこっそり様子を見ようと、ドアの陰から覗き込むと――


『*****』


魔術師の濃い紫色のローブを着た大和が、前に手を翳して小声で何かを呟いた。すると手のひらが発光し始め、次第にパリパリと帯電する。光が大和の顔を照らし幻想的な雰囲気を演出している。クラシカルな衣装も様になって、悔しいがすごくかっこよかった。


(ってあれ何?帯電?)


何の系統の魔法なのか、いや、恐らく『雷魔法』とでもいうのだろうか。そういえば、ゲームのまとめサイトで見たような……、使う魔術師はいるのかもしれない。だが少なくとも、夜都は見たことがなかった。


(くそ……呪文が聞こえない。声が小さすぎるんだよ)


仕方なく、夜都は中に入って声を掛けた。



「よう、ヤマ。調子はどうだ?」


「ああ、四大属性の初級魔法はなんとか出せるようになったよ。威力は弱いけど。あと、せっかく適性が高いから他の属性も試したら、って教官に言われて雷魔法を試してた。あ、教官はもう帰ったよ」


「なんだ、順調に進んでたんだな。いきなり他の属性って教えてもらえるんだ。意外と簡単に体得できるのか」


「いや、どうだろ…。ちょっと会話を誘導していったからかも。雷魔法って初級ではないらしく、職業が魔術師だと使えないんだって。実は四大属性をマスターした後ステータスを見たら、職業の欄に赤字で『他の職業の選択が可能になりました』ってメッセージが出ててさ」


「は?訓練中にそれ出たのか!?適性高いって…高過ぎじゃないか。チートかよ!」


「まあそれで職業が変わったんだ。『魔術師(改)』だって。(改)ってくるとは思わないよねー」


「普通は『中級魔術師』っぽいのが次に出てくるらしいけど……ああ、熟練度が足りてないから普通の進化系じゃないのかな」


「へえ~。やっぱりヨルに聞いてもらってよかった。熟練度ね」


そう言うと、大和は再び手を翳して何かを呟いた。先ほどとは違い、発生した雷がキュッと軽く丸められたかと思ったら、その塊が前方に飛んでいった。


「!!」


少し遅れて、ドーンッと地面を震わせるような重低音とともに訓練所の壁に衝突した破壊音が鳴り響く。


「はあ?何したの!?」


夜都は、驚きっぱなしでクラクラしてきた。



「足りない熟練度を適性で補うんだろ?だから、熟練者だったらやってそうなことをイメージしてみたんだ」


「は、はあ……」



夜都は何かに負けたような気分だったが、意識したら駄目だ、と自分に強く言い聞かせ、気を取り直して先に進むことにした。





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