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【27】再会

 後日、私はバイト先の久慈さん経由で雪見ちゃんからの連絡を受け、平之季君が私に会いたがっている、と伝言をもらった

 たぶん、あのデスゲームの真偽のほどについて、議論を交わしたい、もしくは、最後どういう結末を迎えたのか、なぜ、皆が生き返ることになったのか、私からヒアリングしたいのだろうな、と予想がついた。

 その気持ちは、よく分かる。だけど、私は断った。

 あのデスゲームの面子のうち、『再会したくない人ナンバーワン』は、他の誰でもない、平之季君だ。


 それから、私は雪見ちゃんとは、何度かラインでやり取りした。

 一度、誘われて、美味しいカレー屋さんにランチに行った。

 雪見ちゃんもデスゲームの出来事を覚えていて、そしてあれが完全に夢だったとは思っていないようだった。


「でも、夢みたいなものだった、ってことでいいと思ってます」


 その言葉通り、雪見ちゃんはあのデスゲームの出来事を進んで話題にしようとはしなかった。全然関係ない、大学の話とか、恋愛相談なんかに話を咲かせた。


「でも、なんで私とランチに来ようと思ったの?」

「え~、それは、城野さんと仲良くなりたいな、と思ったからです。あの夢の出来事で、城野さんって、冷静で毅然としてて、かっこいい人だと思いました。私、今まで年上のお友達っていなかったし。ご迷惑じゃなければ、これからも仲良くして欲しいです」


 にこにこと笑う雪見ちゃんの社交性というか、人懐っこい魅力に感動してしまう。まさに、こういう女の子こそ、万人に好かれるのだろう。

 デスゲームでちょっと鼻についたあざとさは、現実世界で生き抜くにはこれ以上ない武器に見える。私も人として見習いたい。


「あ、それと、また平之季君からメールが来てます。どうしても城野さんに会いたいそうですよ。私が今日城野さんに会ったって言ったら、嫉妬されそう。ふふっ……このメール、転送しますね」

「え~……要らないよ~……」


 私は難色を示したが、雪見ちゃんは目の前でそのメールを私に転送して寄こした。


「せめて、城野さんの連絡先だけでも、平之季君に伝えていいですか? 私、毎回こうやって転送するのも、何というか、無駄な気がして」

「ごめん。ちょっと、それは勘弁して欲しいかな」


 板挟みになっている雪見ちゃんには申し訳ないが、平之季君から直接メールが来るようになると思うと、想像しただけで気がめいってしまう。


「毎回転送してもらうのも申し訳ないし、とにかく、もう、送ってこないで、って言っておいて」


 好奇心が抑えきれないのはよく分かる。

 だけど、もう、そっとしておいて欲しい。


「うーん……でも、それも可哀そうかなぁ、って思っちゃうんですよね。平之季君、本気で城野さんのことが好きみたいですよ?」

「そんなわけないでしょ。分かった。じゃあ、私が平之季君が嫌いだから、会いたくないって言ってる、って伝えて」


 思い切って言うと、雪見ちゃんはさすがにびっくりしたようだが、私の気持ちを察してくれたようであった。


「分かりました。城野さんが、そこまで言うなら、もうメールの転送も、橋渡しも止めておきます。それでいいですか?」

「うん。お願い。ごめんね」

「いえ、こちらこそ、ご迷惑おかけしてたみたいで、すみません」

「そんなことはないよ」


 嫌い、は言い過ぎかもしれない。

 でも、これで、ようやくせいせいする────そう思った。

 実際に、それ以降、雪見ちゃんから平之季君関連の連絡が来ることはなくなった。


 **


 平穏な日常が帰って来た。

 ゼミと卒論の準備で週に2日ほど、大学に行く。それ以外はバイトと、資格の勉強、それとちょっとした旅行や遊びで埋めた。

 来年の就職も決まっていて、自由に時間を使える、私の人生の中で最も恵まれている期間であるように思えた。


 そろそろカーディガンだけでは寒くなって来た冬の初めだった。

 ゼミに出るために大学に来て、時間があったので生協に寄った。生協の本は普通の本屋とラインナップが違うので、眺めているだけで楽しい。


 後ろから誰かに、ポンと肩を叩かれた。


「城野さん」


 振り向き、私は目を丸くした。

 まるで、夢の中の登場人物が出てきたような錯覚を覚えた。

 色白と茶髪────平之季君だった。


「え……、なんで」

「やっと会えた」


 平之季君が呆然とする私の手を握り、引っ張って行く。私は慌てて手を振り払ったが、誘導され、とりあえず生協の外まで一緒に出た。


「どうして、なんで、ここにいるの?」

「城野さんに会いたくて、探してたから」

「探してた、って言ったって……」


 そう簡単に見つかるはずはないのだ。私は実名でSNSをやったりしていない。

 雪見ちゃんが、何か教えたのだろうか?

 いや、それもない。雪見ちゃんは、女子の個人情報を勝手に漏らしたりするような非常識なタイプではないし、私が平之季君に会いたくないと言っていたこともよく知っているはずだ。


「大学と、学年を知ってたから。あとは、人づてとしらみつぶしに、調べた」

「嘘でしょ?」

「時間がかかったよ。ゼミの曜日を狙って、何回か来たけど全然会えなかったし、先週、初めて駅で見かけて、声をかけようとしたんだけど、タイミングが合わなくて残念だった」


 それでは、まるっきりストーカーだ。

 人の思惑をよそに、平之季君は満足げにため息をついた。


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