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【20】運営の指示に背いた子

 ちょうど、残り、30秒だ。

 このままマホちゃんの口をふさいで、命令の機会を奪うつもりなのかと思ったら、そういう意図ではなかったようだ。

 冷たいことを言うけれど、それはそれで、どうなるか興味があったので、少し残念だ。


 では、今のマホちゃんの立場では、どんな命令をするのがベストなのか。

 私を殺せないなら、雪見ちゃんか、平之季君を狙う?

 でも、それもダメだ。どちらかが死んだとしても、結局その後の投票で暴君認定されてしまう可能性が高い。


「ぁ……、命令……私……」


 まだ、時間はギリギリある。

 だけど、マホちゃんはすっかり混乱しているようで、何も言葉が出てこないようだった。結局、そのまま、タイムオーバーになった。


 ────この動揺から察するに、マホちゃんは本当に『命令』で私を狙うつもりだったのかも。


 苦い気持ちが胸に広がる。

 平之季君の言う通り、少し考えれば、それが悪手であることは明らかだ。

 私を死なせれば、連動して平之季君も死ぬ。すぐに投票が始まって、マホちゃんも死ぬ。そうしたら、最後に残った雪見ちゃんが優勝だ。

 ここまで結構真剣に頭を働かせてきたのに、マホちゃんの迂闊な一手で死ぬところだったのかと思うと……リアルだけど、空しい。


『ぶー。時間切れ! あ~ダメだよ。運営からの指示には、ちゃんと従おうね~? 運営の指示に背いた子にはペナルティが課されま~す』


 ピエロが楽しそうに言う。

 王様が時間内に命令できなかったことに対する警告だ。

 時間切れイコール『運営からの指示に従わない場合』に該当するだろう、という予想は当たった。

 さて、ではどんなペナルティが課されるのだろう。流石に即死ってことはないと思うけれど……。


 ────罰ゲーム的な何か痛いこととか、グロいことだったら、死ぬより嫌かも……。


 画面の中でピエロがトランプを一枚取り出した。ジョーカーの模様だ。


『只今の違反については、イエローカードでーす。おっと、間違えた。こっちだった』


 ピエロは慌てた様子で、トランプを黄色いカードに持ち替える。くだらない寸劇だ。


『イエローカードが2枚集まると、そのプレイヤーは処刑になりま~す。気を付けてね~』


 説明は以上だった。

 意外とあっさりしたものだった。

 そして、平之季君にもペナルティがあるかと思ったが、無いようだ。

 さっきのあれが、「著しい暴力」に当て嵌まらなかったということだろう。判定としてはかなりグレーな気がするけれど……。


 ピエロが消え去り、画面上には文字列が浮かんだ。


<命令が受理されませんでした。王様は、もう一度命令をやり直してください>


「もう一度、命令できるみたいだね」


 平之季君はもう邪魔するつもりはないようだ。さっきのあれは、本当に単純にマホちゃんに忠告するためだけの行為だったということか。


「命令……しないと、またイエローカードになるのかな……」

「酷いよ、平之季君」


 雪見ちゃんが、マホちゃんをかばうように、マホちゃんと平之季君の間に立った。

 平之季君は手を降参の形に両手を軽くあげて、後ろに下がった。


 じゃあ、マホちゃんは、今度こそ自由意思で、何を命令する?

 何を命令しても、次の投票で暴君に認定される可能性は高い。

 私がやったみたいに暴君に認定されないための命令をするのが、たぶん唯一の活路だ。

 しかし、皆が皆、同じような命令を始めると、ジュースに持ち込んだテニスの試合みたいだ。泥試合になる予感がする。


 マホちゃんは、しばらく考え込み、ようやく口を開いた。


「────……じゃあ、城野さんに命令で、今後私を暴君かどうか決める投票では絶対に挙手しないこと」


 今度は、割と妥当と思える『命令』が出てきた。


 ターゲットは私か。

 確かに今一番優位なのは私だから、戦力を削ぐには……いや、そうじゃないか。寄らば大樹か、もしくは、もっと感覚的な理由かもしれない。


 ────でも、その命令はどうかな…………。


 私は自分のことのように不安に思った。

 通るかどうか、不確定要素がある。


<命令が受理されませんでした。王様は命令をしなかったこととみなされます>


「え? なんで……これ……」


 画面には命令の不受理を示す文言が表示されている。


「なんで? バグ?」


 バグ────ではないだろう。

 誰が悪い? 何が悪い? はっきりしないうちに、ピエロが現れて言った


『あれ~? ダメだよ。運営からの指示には、ちゃんと従おうね~?』


 ────運営の指示に背いたから……。


『運営の指示に背いた子にはペナルティが課されま~す』


 ピエロが黄色いカードを二枚取り出し、手品のような手つきで1枚の赤い札に変化させる。


『イエロー二枚で、レッドカード!』


 あぁ、やっぱり……、と思った。


「ちょっと待って……なんで……そんなはずない……」


『レッドカードを受けた者は、処刑されま~す』


 マホちゃんは宣告を受けて狼狽え、足元から崩れ落ちた。

 そういう絶望の表現かと思ったら、違った。

 床の上で体を丸め、呻き、そのまま動かなくなった。


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