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【17】王様って言うか、女王様

 残り人数4人、デスゲームも佳境と言えるこの状況で、ようやく私に王様が回って来た。

 正直、あまり嬉しいタイミングではない。場も温まって来て、王様を処刑するムーブをうっすら、感じるからだ。

 これを切り抜けるために、私は命令を試さなければいけない、と思う。


「うん。うまく命令が通るか分からないんだけど……。平之季君に命令で、私が死んだら、あなたも死ぬこと、っていうのは、どうかなぁ、と思ってる」

「……えっ、城和さん。それ、どういうことですか?」


 雪見ちゃんが即座に反応し、怯えた声を出す。

 たぶん「死ぬ」という単語に過剰に反応しているのだと思う。


 ────リスクが無いわけじゃないけど……。ここまで来たら、賭けるしかない。


  腹をくくり、もう一度、正式に命令らしく言葉にしてみた。


「平之季君に命令で、今後、私が死んだら、あなたも死ぬこと」

「────────へぇ……」


 平之季君は、タッチパッドを覗き込む。

 今、タッチパッドは、私が持っている。画面の表示がパッと変わった。


<命令が受理されました。臣下は、王様の命令を実行してください>


「あ、すごい。命令が通ったね。びっくり!」


 私は、自分の命令が受理されたことに驚き、ちょっと興奮してしまった。


「変化球だね。────別にいいけど、その命令ってさ、俺はどうやって、実行すればいいの?」

「そのままの意味だと思ってるけど。もしかして、このターンで、私が死ななかったら、平之季君も死ななくていい、ってことになるのかな?」

「そんなのでいいの? それじゃあ、簡単すぎない?」


 平之季君は、自身が『死』の可能性の標的にされたことに不快感を表している様子はない。


「だとしたら、60秒タイムアウトするまで、何もせずに待つってこと? それ、怖いなー。普通に実行できませんでした~、ってピエロに宣告されて、俺、死にそうじゃん」


 この声にも、あまり感情がこもっていない。


「ふふっ……なんで、平之季君ってそんなにずっと冷静なの?」


 つい、笑ってしまった。


「ん? いや、これでも動揺してるよ。俺の場合、あんまり感情が表面に出ないだけで……」


 言いながら、画面を見つめるが、画面の表示は命令を実行するパートのままだ。このまま放置して、達成したことになるかどうか、分からない。

 どちらかといえば、平之季君が危惧する通り、達成できていない、ということになりそうな気がする。────どうだろう……。


「これで60秒のカウントダウンが始まって、平之季君が死んじゃったら、私も『詰み』なんだけどなぁ……」


 平之季君を殺した暴君として女子二人に断罪される未来がまざまざと目に浮かぶ。

 私は結構本気で参ったなぁ、と思いながら、頭を掻いた。


「じゃあ、そうならない可能性、ってあるの? もちろん、城野さんなりに何か考えがあって、命令したんだよね?」

「うん……。一応ね。もし、この命令が次のターン以降に持ち越せる場合は、局面が動くかな~と思って」

「次ターンに持ち越せる……? あぁ、そうか……」


 平之季君は、納得してくれたみたいだ。

 雪見ちゃんは首を傾げている。


「え? どういう意味ですか?」

「実験的にね、命令してみたんだよ」


 これが、どういう命令なのか、雪見ちゃんに分かりやすく説明する義理は無いので、私は適当にいなした。


「でも、その実験のためなら、もう少し平和的な命令で試しても良かったんじゃない? 何も、自分と俺の命を巻き込まなくてもさ」


 と、平之季君が言った。


「だーめ。そうすると、もう残り4人だから、私が何を命令したって、あとは投票で暴君に認定されて殺される可能性の方が高いもの。もう、ここで王様になっちゃったら、一か八かの命令に賭けるしかないよ」


 私は首を振る。

 時間稼ぎをしましょう、と言っている雪見ちゃんには申し訳ないけれど。

 無害な子羊を装っている雪見ちゃんも、戦意喪失しているように見せているマホちゃんも、目の前の平之季君も、信用しきれるかと言ったらいまいちだ。

 たぶんここまで来たら、王様の命令の質に関わらず、挙手する可能性が高いのではないかと、私は思う。

 ちょっと、疑い深すぎるだろうか?

 だって、残り3人まで持ち込めば、あとはほぼ運任せで3ぶんの1の勝者になれるのだから。


 実はもう一つ、悩んだ選択肢があった。

 類似の命令で、もう少し穏和なものは『次に始まる私を暴君かどうか判断する時に挙手しないこと』だ。しかし、これではワンターンをやり過ごす効果しかなくて、その1回のリターンのためだけに、命を賭けるのは、割に合わない気がして、やめた。


「分かった。じゃあ、『かしこまりました、王様』」


 平之季君は、私の前で膝を折って、恭しくお辞儀をした。


 ────え~っ。これじゃあ、王様って言うか、女王様じゃん……。


 男子に面と向かってそんなことをされると、なんだか、恥ずかしい。私は慌ててしまう。

 すると、突如ピエロが画面に表れて叫んだ。


『オッケー! ミッションクリア~! じゃあ、早速、次はみんなの投票だ~』


「わっ……」


 手にしたタッチパッドから発せられた大音量にびっくりしてしまう。



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