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【16】逃げ続ける作戦

 私と雪見ちゃんの押し問答に、平之季君が、口を挟んできた。


「それに、まだ城和さんは一度も『王様』になってないから、どんな命令を秘めているか分からないよ。本当に信じられると思う?」


 結構ずけずけと言ってくれる。

 まぁ、この期に及んでオブラートに包んだ行儀の良い言葉を交わしていても仕方がないのだけど。


「どうする?」


 平之季君が、床に落ちているタッチパッドを拾い上げて持って来た。


<順番に、この画面をタッチしてください。>の表示が、ちょうどカウントダウンの60秒に切り替わった。


「俺から引くよ」


 画面に表示された単語は『臣下』だった。


「私は、次に『王様』を引いても、時間稼ぎしますから。神に誓って」


 そう言って、雪見ちゃんもくじを引いた。


 ────雪見ちゃん一人に誓ってもらっても、しょうがないんだけどなぁ……。別にクリスチャンでもないし……。


 表示は……これも『臣下』だ。

 私は苦笑した。


「そうだね。それに、ここまではとにかくライバルの数を減らすことで自分の勝率が高まってるわけだけど、この先は、難しいんだよね。最初の方に議論が出てたけど、3人になると膠着しちゃうし、2人になると、運頼みになっちゃうし。まぁ、実は4人だって、ここまでくれば3人とあんまり変わらないんだけど……」

「どういうことですか?」


 雪見ちゃんが首を傾げる。

 私も受け取ったタッチパッドの画面に触れた。現れたのは、『王様』の二語だった。

 さすがに、そろそろ出るだろう、と思ったら、本当に出た。


「えーと、つまり、今から私がこの3人の中の誰かを命令で殺したとするでしょ。そうすると、残りの2人は投票で私を絶対に『暴君』に指定するでしょ。それで私が死んで、残り二人になって、後は運任せの生き残りくじ引き、で。はい、おしまい、ってこと」

「あ……ほんとですね……」


 雪見ちゃんは、驚いたように口を開き、手をあてた。


「じゃあ、誰も殺さなければいいってことですよね」と、嬉しそうに言う。


 これで、無益な戦いを避けられる、と思ったのだろう。警察が来るまでの時間稼ぎ。

 だが、ゲームをしながら既に結構な時間も経っているし、部屋の中には4人の死体。

 考えれば考えるほど、警察が来るとは思えない


(そもそも、本当に誰も殺したくないと思ってるなら、なんで雪見ちゃんは、さっき挙手したのかな?)


 私は、このセリフを喉元でグッと飲み込んだ。

 この状況下で彼女を挑発しても、私にメリットがないからだ。藪をつついて蛇を出す、とも言う。


 雪見ちゃんが、本当に無益な戦いを避けて、警察が来るのを待ちたい、と思ってるなら、さっき丹藤君が王様だったときに挙手する必要は全くなかった。

 そう。雪見ちゃんは、ずるいところがある。

 ここまでの経験で分かって来たけれど、このゲームでは積極的に攻撃を仕掛ける人間の方が不利なのだ。


 狙われる要素、殺されても仕方がない、と思われる要素を避け続けて、無害な人間を装い続けたほうが、危険を避けられる。

 雪見ちゃんは、したたかにそれを狙っているように見える。


 例えば、ドッジボールみたいに。

 攻撃に出ようとすると、自然と前に出ることになるから、反撃で標的にされやすい。捕球のミスでアウトになる危険もある。

 逃げに特化した方が、生き残る確率は高い。

 特に今回は、最後の一人になることを勝利に仮定しているから、逃げ続ける作戦というのは更に有効だ。


 ────まぁ、それならばそれでもいいんだけど……。


 雪見ちゃんは、前のリホちゃんの時も、今回の丹藤君の時も、王様の処刑に挙手して賛成の表意をしている。

 人殺しに加担しておきながら「え~こわ~い。そんな酷いことするの、やめようよ~」と言っているような、偽善を感じてしまう。


 ────それが普通で、女子らしくて、優しい、ってことなのかもしれないけどね。


 でも、私は何となく好きになれない。

 ヒステリックに感情を出しながらも、結構建設的な意見や行動を示しているマホちゃんの方が、まだ好もしいと思える。


『では、王様は、誰に、何を命令するかお答えくださ~い』


 ピエロの命令を、とりあえず無視する。命令を決めるまでの留保時間が4分ほどあるから、それほど慌てる必要はない。


「ねぇ、私達の心臓にも、何か細工がしてあるとしたら、そういう手術を受けた心当たりがある?」


 私は自分の心臓を押さえた。

 普通に鼓動を感じる。いや、緊張してるから、いつもよりは少し速いかもしれない。


「ないよ。親知らず抜くために入院したくらいだな」

 と平之季君が言う。


「親知らずなら、私も抜いたことありますけど、だいぶ昔ですよ」


 雪見ちゃんも首を傾げる。

 親知らずを抜くための入院というのは、麻酔をするものなのだろうか。私はその経験がないから知らない。


「私は交通事故にあって、病院に運ばれたことがあるから、心臓に細工されたことがあるとしたら、その時かな、って思うけど、微妙なんだよね」

「で、城野さんは、命令は、どうするつもり?」


 平之季君は、ストレートに聞いてくる。


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