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15/28

【15】あとは私達4人だけ(残り人数4)

 今回の王様は、丹藤君だった。

 丹藤君は、リホちゃんを殺した。

 絶対に実行できない難題を下すという、逃れられない死の命令だ。

 では、丹藤君は、『暴君』だろうか?


 動機は、親友である柳君が死んだことに対する、リホちゃんへの復讐だ。抒情酌量の余地は十分にある。

 だけど────……。これは、裁判ではない。ゲームとして、今、挙手すべきかどうか、考えれば、答えは明白だ。


 ────多分、平之季君は挙手するだろうな。マホちゃんと雪見ちゃんは、分からない。お行儀よくするかもしれないし、ゲームに積極的に参加することを放棄するかもしれない。


 そう思いながら、指示に従って、眼を開いた。

 ぐるりと、皆を見る。

 果たして────皆は────……。


 満場一致、だった。全員が挙手している。

 それは、逆に意外な結果だった。

 『暴君』と烙印を押された丹藤君は、私達の方を見なかった。

 怒っているとか、怖がっているとか、そういう感じは一切なく、ただ、ただ、柳君の顔をジッと見つめている。


『それでは、暴君の王様を処刑しまーす』


 ピエロの声が響いた。

 画面にギロチンのイラストが映し出される。よく考えれば、『暴君』の認定による処刑は、これが初めてだ。


 ────まさか、今度は本当に、首を切るの?


 私は息を飲んだ。

 数秒後に、ザシュッ、という音が響いた。

 その後、丹藤君は柳君の死体に覆いかぶさるようにして、動かなくなった。

 気が付くと、私は自分の首を守るように竦めていた。


「……死因は、皆、同じみたいだね」


 平之季君が、丹藤君の死体に近づく。屈みこんで、お腹の所から服を捲った。


「心臓に、何か異変が起きているみたいな感じがする。素人だから分からないけど」


 私も近づいて覗き込む。リホちゃんと丹藤君、立て続けに二人も死んでしまうと、本当に頭が麻痺してくる。

 丹藤君の左胸のあたりに内出血のような色がある。私が以前に確認した御堂君の死体と同じだ。


「人為的に死を引き起こしているのかな……? どうやって……」

「ゲームの主催者は、神様なのか、人間なのか、どっちだと思う?」

「そう、そうなんだよね。私も、そこが分からなくて、気になってるんだけど…………」

「もしも、このゲームを仕組んでいるのが神様じゃないとしたら、俺達の心臓にさぁ」


 平之季君が自分の胸のあたりをトンと叩いた。


「予め何らかの細工がされている可能性がある、でしょ」


 変な所で、意見が一致した。


 丹藤君の死体は、御堂君に被さるような恰好だが、このままで良い。

 しかし、リホちゃんの方は机の下に頭が潜った状態になっていて、放置しておくわけにはいかなさそうだ。

 私と平之季君で、リホちゃんを運んだ。重心が定まっていない人体はとても重かった。

 リホちゃんの死体は、窓側右手の部屋の隅に寝かせた。

 左手の隅には、御堂君、柳君、丹藤君の死体がある。心情的に、死体は一つの場所に固めておきたいけれど、リホちゃんと柳君を並べて置くことは、丹藤君が許さない気がしたので、分けて安置した。


「ぁは、は……あははは…………………………ぁはははは!」


 びっくりした。

 振り返ると、マホちゃんが、その場に座り込んで哄笑している。


「あはははははは!」


 すぐに泣いたり、叫んだり、エキセントリックなところのある子だとは思っていたけど、いよいよ、精神的に参ってしまったのだろうか。


「大丈夫? マホちゃん……」

「もう、どうせ死ぬのよ! なんで!? 私達、何もしてないじゃない! なんでよ! こんなの、ひどいよっ。最初から、ゲームなんて、しなきゃ良かったのにっ」


 その後、マホちゃんは言ってもどうしようもないことを喚き散らし、最後は部屋の隅で膝を抱えるように身を小さくして固まってしまった。

 雪見ちゃんはマホちゃんを心配そうに宥めていたが、最後は諦めたように私達の方に来た。


「どうしよう……マホちゃんが」

「大丈夫だよ。ああ見えて、ちゃんと投票で挙手したり、タッチパッド壊そうと行動したりする判断力があるんだから」

「冷たいこと言わないであげて」

「ごめん」


 平之季君が謝る。雪見ちゃんの方は、まだまだ精神的にもしっかりしているように見える。

 ちなみに私も、こんな異常事態だけど、比較的平気のようだ。

 自分がデスゲームに巻き込まれたらどうなるか、なんて、想像したこともなかった。意外と冷静な自分、雪見ちゃん、それに平之季君を見て、たぶん、こっちの方が変なんだと思う。

 死に対する実感が無さ過ぎる。


「遺書でも書いておこうかなぁ……」

「いいんじゃない。表にでるとは思えないけど」


 それは、そうだ。

 私は家族のことや、友人のこと、自分の部屋に残してあるもののことを考えた。

 思い残しも、未練もタラタラだ。でも、もう仕方がない。


「ねぇ、それより、今度こそ、時間の引き延ばしをする作戦継続でいいんだよね?」


 雪見ちゃんが、念を押すように言った。


「え……あぁ……どうしようね」

「だって、城野さん、警察が来るまで待つ作戦にしよう、って言ってたじゃないですか」

「そうだけど……丹藤君の例を見てわかると思うけど、人間の腹の内なんて、分からないよ。土壇場で裏切られるかもしれないから……」


 私は言い訳をするように、言った。

 雪見ちゃんのいら立ちが感じられて、しどろもどろになってしまう。


「そんなことないです。だって、あとは私達4人だけなんだから、もう、よっぽど大丈夫でしょう? 裏切ったりするような人もいないし」

「マホちゃんあたりは、自暴自棄になって、早く終わらせたい、って思ってるかもよ」


 部屋の隅で蹲っているマホちゃんを軽く見遣る。反応は無い。


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