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【13】それ、ありなの?

 精神的な休息の時間、という感じだ。

 ピエロとタッチパッドの指示に従うルーティンをこなしながら、私達はもう少し議論を重ねた。


「そもそも、この店を選んだのって、なんでだったの?」

「あ、それは、柳君が選んで予約してくれたから……私は詳しくは知らないんだけど」


 柳君、と言う言葉につられて、つい死体の方を見てしまう。何度確認しても、死体は死体だ。まるで、荷物のようにそこにある。


「でも、なんか、すごくお得なクーポンがあるとか言ってたよ」

「へぇ。じゃあ、そのクーポンを柳君に渡したのが誰か知ってる?」

「全然知らない」


 雪見ちゃんは首を振った。


「王様ゲーム、っていう種目からしても、合コンの参加者を狙ったデスゲームっぽいよな」

「リア充だから、狙われたとか?」

「本当のリア充だったら、合コンなんて来ないよ」

「だよねぇ……」


 私も深く頷く。

 自慢じゃないけれど、こちらは彼氏いない歴イコール年齢だ。

 若い身空で、一度も彼氏ができないまま、おかしなデスゲームに巻き込まれて死ぬかと思うと、泣けてくる。


「生き残った最後の一人は助かると思う?」

「さぁ……どうかな。バッドエンドだったら、全員死ぬんじゃない」

「どうせ死ぬなら、皆でこんなゲーム放棄して、自殺するってのは、どう? 運営とか言う人たちを楽しませて死ぬなんて、悔しくない?」


 私が提示すると、マホちゃんが「やっぱり、皆死ぬのかな……」と呟いた。

 ちなみに、この提案は私だって本気でしているわけじゃなくて、今、この場を監視している「運営」とやらに揺さぶりをかけているだけのつもりだ。


「あ、ちょっと待って、カウントダウン始まってるから」


 そう言って、雪見ちゃんがタッチパッドに触れる。

 現れたのは「臣下」の表示だった。

 タッチパッドを受けとり、少し待ってから私も触れる。

 だが、というべきか、やはり、というべきか。また、当たらなかった。普段からくじ運は、悪い方だ。


 今度は女子からくじを引いていって、男子陣に受け渡し、王様を引き当てたのは、丹藤君だった。これで、まだ王様を一度も引いていないのは、私だけになった。


「害がない範囲で、何か試験的な命令をしてみる、っていうのも手かもな」


 と平之季君がタッチパッドを覗き込みながら言う。


「害がない、試験的な命令って何?」

「あぁ、例えば、ピエロに命令してみる、とかでしょ」


 私が一例として挙げると、「えっ、それ、ありなの?」とリホちゃんが食いついた。


「あぁ、たぶん無理だけど。やってみても害がないでしょ。受理されないだけだろうし。不受理は1度まで、いいんだっけ?」

「一度まで不受理が許されるのは、二つ以上の要素が入った命令の時だけじゃない?」

「ちょっと待って……」


 リホちゃんが、スマホを操作する。

 どうやら、最初に撮影した『ルール』の文面を確認しているらしい。


「あ~……ダメだよ。これ。だって、『王様』を引いたら、『臣下』のうち誰か一人に対して、一つだけ命令ができる、ってあるもん。ピエロはくじ引きをしてないから、『臣下』に含まれないでしょ」

「そっか。じゃあ、やっぱり無理だね」


 私は軽く流した。


「でも、言いたいこととしては、その線で合ってるよ。この『命令』を利用して、何か突破口を見出せないかな、ってこと」

「うーん……。でも、それって、結局、自分が最後の一人になるための方法を探る手段にしかならないんじゃないかなぁ。敵である『運営』は私達の外にいるわけだし」

「そうかな。もしかしたら、俺達の中に、いるかもしれないよ」


 平之季君の言葉に、皆がぎょっとした。


「それ、どういうこと?」

「意外と、黒幕が内部にいる、っていう可能性もゼロじゃないよね。別に、皆を疑心暗鬼にさせようとしてるわけじゃないよ」

「嫌なことを言うのね」


 雪見ちゃんが不快感をあらわにする。

 マホちゃんが、怯えた目で、なぜか私の方を見た。


「もし、この中に黒幕がいたら、黒幕もこのデスゲームに巻き込まれて死んじゃうじゃない。そんなのってバカみたいじゃない」

「いや、意外とそういうパターンって……あ、ちょっと待って。ごめん。そろそろ、俺が命令する時間だ」


 王様に割り当てられている丹藤君が手を挙げた。

 彼の言う通り、タッチパッドは60秒のカウントダウンを始めている。


「どうぞ」

「じゃあ、リホちゃんに命令。柳を生き返らせてくれ」


 ────え?


「は? え?」


 あまりに、自然なさらりとした口調だった。

 リホちゃんが、呆然とする。私だって、同じだ。


「何、それ……」


 てっきり、誰でもこなせるような、簡単な命令をするのだと思っていた。

 よりにもよって、ノーマークだった丹藤君から、こんな命令が出てくるなんて、思ってもみなかった。

 丹藤君は、泣いているような、笑っているような、何とも言えない表情をしていた。


<命令が受理されました。臣下は、王様の命令を実行してください>


「嘘でしょ!? なんで、今の命令が受理されるのよ!」


 リホちゃんが金切り声をあげる。


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