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【12】ゲームに巻き込まれる心当たり

「警察が来るまで、どれくらいの時間、様子見する?」


 丹藤君が言った。もちろん、閉じ込められたまま。永遠にここにいるわけにはいかない。

 机の上には、1人1杯ずつのドリンクと、お通しの小鉢が並んでいる。

 これらを食いつなげば、長期間耐え忍ぶことも可能だろうが、あまり意味があるとは思えない。


「トイレが我慢できるまでじゃない? 小は部屋の隅ですればいいとしても、大はつらいだろ」


 ふざけているような台詞だが、平之季君は結構本気で言っているようだった。


「それにしても、最初、スマホの電波が入ったのが不思議だよなぁ……油断させるためだったのか、それか、運営側の不手際なのか」


 しかし、その答えは分からないままだ。


 少しずつ、恐怖が麻痺してくるのが自分でもわかる。

 どうせ死ぬんだろうな、という気持ちと、本当に私が死ぬの?という気持ちが混ざり合っている。

 それでも、部屋の隅に並んだ死体を二つ見ると、怖さが実感として戻ってくる。

 そんな不毛な感情の起伏の繰り返しだ。


「そろそろ、くじ引きを始める?」

「うん」


 ここまでで、何ターンくらい経過しただろう。

 1ターン目の王様は、雪見ちゃん。

 2ターン目の王様は、平之季君。

 3ターン目の王様は、リホちゃん。

 4ターン目の王様は、また、雪見ちゃん。


 つまり、今回が、5ターン目か。

 いい加減、そろそろ、私が当たっても良い頃だと思うけど、確率は6ぶんの1だから、高くはない。


 結局、平之季君が王様になった。

 その瞬間、ピリッとした緊張が漂ったけれど、平之季君は当たり障りのない命令しかしなかった。

 もしかしたら、約束を破ってリホちゃんを狙うかと思ったけど、そこまで馬鹿じゃないらしい。

 ここで輪を乱せば、満場一致で『暴君』にされてしまうこと、間違いなしだ。


「他に、何か試してみたいこととかある? 気がついたこととか、何か、良い案があれば。城和さんが言ったみたいに、できるだけたくさん、皆がこのピンチを切り抜けられるなら、その方がいいもんな」


 丹藤君が、前向きな発言をした。


 今の所、時間を引き延ばす作戦は順調だ。

 この間に、皆で協力して有意義なディスカッションができるなら、それも良い。


「あの、さっき誰かが言ってたけど……。ここがもし、地下だったとしたら、上に逃げればいいんじゃないでしょうか」


 と、マホちゃんが言った。


「天井から出れるなら、ロープを伝って上るとか、非常階段が設置されてればもっといいよな。この部屋から逃げ出すことは禁じられてないから、それもありだね」


 丹藤君につられて、天井を見上げる。

 照明器具が嵌っている穴が二つと、小さな真四角の換気口がある。

 机上の名案、と言う感じだが、否定する気にはならなかった。たぶん、他の皆もそう思っただろう。

 こういう場合、相手の意見を否定するよりも自由な発言を促す、ブレーンストーミングをするべきだ。


「あの、私から一つ、念のため聞いておきたいんですけど」


 私は、そっと口を挟んだ。


「ここにいる皆さんは、何かこういう目に遭う心当たりというか、ありませんか?」

「────心当たり?」


 皆、揃って首を傾げる。


「こんな酷いゲームに巻き込まれる心当たりなんて、普通は、なくない?」

「えぇ、まぁ、そうなんですけど。私もないんですけどね」


 ただ、私はこの場に唯一の部外者、コミュニティ外の人間なのだ。

 もしかして、このゲームに巻き込まれるはずだったのは、自分ではなくて、元々来るはずだった、バイト友達────名前を久慈さんというのだけど────ではないか、という疑いも抱いている。


「言いたいことは、分かるよ。創作だと、デスゲームの参加者って、犯罪者とかが多いもんな」

「えぇ……まぁ」


 私は言葉を濁す。

 別に、ここにいる参加者全員を犯罪者呼ばわりする気はないのだが……。

 それでも、もしかしたら全員過去にいじめっ子だった経緯があったりしないかな、と想像は……しないでもなかった。


「馬鹿な事言わないでよね。もう少しマシな意見を出して欲しいわ」

「ごめんなさい」


 リホちゃんに怒られたので、私は素直に謝った。

 ただ、もしも背景があるならば、そっちの線から対策の取り用もあるのではないか、と思ったのだ。


「あ、『王様』だ……。やだぁ」


 マホちゃんが汚らわしいものに触れたように、タッチパッドを押しやる。


「大丈夫だよ。今回も、当たり障りのない命令をしておけば」

「うん……」


 これもまた、一種の賭けなのであった。

 もしかしたら、リホちゃん、マホちゃんは結託して皆を裏切るかもしれない。

 しかし、心配していたようなことは起きなかった。


「じゃあ。リホちゃんに命令で、ジャンプしてもらえるかな」


<命令が受理されました。臣下は、王様の命令を実行してください>


 リホちゃんは立ち上がり、淡々と命令をこなした。これも、もちろんクリアになった。


「一つずつ、時間をかけてやった方が、時間稼ぎにはなるよね」

「そうだね。次は、カウントダウンが出るくらいまで待とうか」


 少しだけ、張り詰めていた空気が和らいだ。


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