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【11】ピエロに『命令』してみようか

 私は、初めて自分にくじが回ってきたことに胸をドキドキさせながら、画面に触れた。


 ────『王様』が出たら……。ここまで来たら、2ぶんの1の確率だ。


 しかし、身構えたのも空しく、私はまたもや『臣下』だった。

 王様は、最後にくじを引いた雪見ちゃんになった。


『王様だ~れだっ!?』


「また、私だ……もうやだ……」


 雪見ちゃんは顔を覆った。気持ちは分からないでもない。

 人に死ねというような命令を出す勇気も無いし、暴君になりかねない機会がまわってくるのも怖い。

 でも、『王様』になれば色々な可能性があるのだから、ラッキーとも言える。

 私はいくつかの、有用そうな『命令』を想像している。


「ねぇ、私、どうすればいいの……?」


 雪見ちゃんは、女子陣の方を見る。

 だけど、リホ、マホちゃんは、共同戦線を張っている。さっき柳君を死なせているのもこのリホちゃんだし、相談相手としては、微妙だ。

 雪見ちゃんの視線は、一瞬迷い、私の顔の前で定まった。


「城和さん。どうしたらいいと思いますか?」


 私の方が年上ということが分かったためか、幾分改まって敬語で尋ねられた。


「えーと……そうだね。命がかかっているのに迂闊なアドバイスをするのも躊躇われるんだけど、私が提案するとしたら、とりあえず皆で協力して、時間を引き延ばす作戦とか、かな」

「どういうことですか?」

「さっき、電波が繋がってるときに、警察と、友達に連絡したんでしょう? じゃあ、その人達の助けが来るまで、このゲームをズルズル引き延ばすのが、有効かもしれない、ってこと。皆で当たり障りのない命令をして、王様も死なせないで、何ターンも引き延ばすの」

「そっか……。それ、いいですね!」


 雪見ちゃんの顔が明るくなった。


  まだ、スマホの電波が入っていた時に、柳君が警察に通報をしている。リホちゃんも、異変を感じてからすぐに、友達にSOSのメールを送っている。

 あれから、既に1時間以上が経過している。

 こちらのスマホが圏外になって連絡がつかなくなっていることを不審に思ってくれると良いのだけど。私達がいなくなっていることについて、外界で調査してくれている人はいるだろうか。


「でも……そのためには、皆が協力する必要があるよ。裏切り者がいると、成立しなくなる」


 それを聞いて、平之季君もうん、うん、と頷く。


「裏切り?」

「自分に王様が回ってきた時に、攻撃に出る人がいたら、時間の引き延ばし作戦は成立しない、ってことだよ」


 平之季君が、あからさまにリホ、マホちゃんの方に視線を向けてから言った。

 そう。

 現時点で自分が『暴君』になる恐れなしで他人を攻撃できる、またその意思を有していそうなのはリホ、マホちゃんなのだ。


「そんな……二人とも、リホちゃんも、マホちゃんも、そんなことしないよ……ねっ?」

「うん……しないよ。もちろん、様子見する、っていう作戦なら、もちろん、皆に従うよ。輪を乱すような真似は、誓ってしない」


 リホちゃんが即答し、マホちゃんも頷いた。

 しかし、その言葉はあまりに嘘くさく響いた。


「良かった……」


 胸を撫でおろしているのは雪見ちゃんだけだ。

 雪見ちゃんは直接リホ、マホちゃんと友人だから、信じることができるのかもしれない。

 でも、本当に信じられる?

 殺されそうになった男性陣、丹藤君と平之季君はリホ、マホちゃんを信用しないだろう。

 それに、その光景を傍で見ていた私だって、そうだ。


 そもそも、私が雪見ちゃんに請われて提案した作戦は、最初から破綻している。

 リホちゃんは、言葉を守るとは思えないし、この作戦は、実際に約束を守るかどうかよりも、それを周囲の全員が信じるかどうか、の方が大切なのだ。


「じゃあ、私の命令は、ごめんね、城和さん、その場でジャンプしてくれますか」


 私は、王様の命令に従うため、その場で立ち上がる。

 初の名指しに緊張している。もし、これを失敗して、ジャンプできなかったら────そんなことは無いと思うけれど────私は死ぬことになる。


 立ち上がり、ジャンプして、もう一度座布団に座ると、足から力が抜けるような虚脱感が襲ってきた。


『オッケー! ミッションクリア~! じゃあ、早速、次はみんなの投票だ~』


 良かった。何とか、実行できた。


 さっきからピエロは同じ文言を何度も繰り返し使っている。

 自由意志で動いているわけじゃなくて、録画を何パターンか用意して、それを入れ替えて繋いでいる感じだ。


 ────私が王様になったらピエロに『命令』してみようかと思ったんだけど、ただのプログラムだとしたら、やっぱり無理そうだね……。


『王様を暴君だと思う人は、挙手して~』


 雪見ちゃんを『暴君』かどうか判定する投票では、誰も挙手しなかった。

 雪見ちゃんは自分の責務が無事に終わったことにほっとしたようで、私に御礼を言った。


「城野さん、ありがとうございます」

「いやいや、全然……」


 大して良いアドバイスをしたわけじゃない。

 そう言おうとして、もしかして「挙手しないでくれてありがとうございます」という意味だったのかも? という発想が浮かんだので、そのまま言葉を濁した。


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