とある星間帝国の悪夢 その四
ごたいめーん!
の手前まで行きます。
星間帝国年501.0406 艦長日誌補足
結局、コミュニケーションが間違いなくとれるようになったのは、丸1日たった後だった。
しかし全くの異言語どうしを会話に支障なく翻訳するために必要な時間が1日しかかからないコンピュータとは全く驚き呆れる技術だ。
これを我々の艦に搭載されるコンピュータ(これでも我が艦には最新式のものが導入されている)で行うと、どうなるか?
科学主任に概算を予測してもらったが、よくて単語のやりとりクラスまでで一ヶ月はかかるでしょうと言われた。
全く別の言語である。
共通項が物理的な定数や光速度くらいしか無い状態では、そんなものだろう。
それで丸1日というのは、とてつもない性能だろうな。
音声のみによる会話が終了し、今から映像も交えた同時交信を可能とするために技術班と科学班が共同して、こちらの規格を相手に説明している。
こちらで相手の規格に対応しないのか、だと?
そんなバカバカしいことを聞かないでくれ。
向こうとこちらとでは科学技術の発展段階で数10世紀の差があるんだぞ。
こちらが低スペックな物しか使えないのに相手の規格に合せられるはずがないだろう。
数時間後、ようやくこちらの規格をエミュレーションできたようで向こうとこちらでテスト通信を行っている。
向こうの船内カメラのほうが基本的に優秀なので向こうから見ると、こちらの画像はボケたように見えるんだろうな。
ちなみに、こちらには驚くほどに鮮明な向こうの船内画像が見えている。
さあ、ようやく我々が出会った中では特別な、遥かに進歩した科学力を持つ生命体との歴史的な瞬間が始まるぞ!
「こちら宇宙船フロンティア。船長というか提督の、銀河系は太陽系、地球からやってきた地球人、楠見 糺だ。驚いたね、全く。今まで宇宙を旅してきたが獣人系は初めてお目にかかるよ」
こちらにも向こうの顔と船内が見えている。
「こちらローヌ星間帝国宇宙軍所属、殲滅戦闘艦USDNー1001の艦長、グルグと言う。さっそくだが衝突コースに出てしまい申し訳なかった。そちらも驚いたことだろう」
「了解だ、グルグ艦長。まあ、こちらは多少驚いたが回避行動には全く問題なかったので大丈夫だ。それより、そちらの推進系だと、かなりメインエンジンに無理させてないか?トラブルがあるなら相談に乗るが?」
まあ固有名詞や名前の発音が支障あるくらいは何でもない。
こちらの言葉も支障なく伝えられているとは限らないからな。
「まあ多少は問題があるが、こちらで対処できないほどじゃない。ご提案は有難いが修理班の報告が上がってきてから考えるよ、クスミ提督」
見た限りでは、えらく若い提督だな。
こちらでは提督など名ばかりで老いて引退した者に与えられる名誉職なのに。
まあ、それほど優秀なのだろう、特異能力も持っているようだし。
「了解した、グルグ艦長。こちらは、あてのない宇宙の放浪旅だ。しばらくは、そちらに付いて行こう。そちらにトラブルや故障があるなら、こちらに収容してもいい。見たところ惑星への着陸は考慮されていないようなデザインだが、それでもこちらは支障ないからな」
「ありがとう、クスミ提督。トラブルが我々の手に余るようなら、お世話になるよ」
ということで新型エンジンのテストに、とてつもない助っ人が現れてくれた状況になったのだが……
こちらの艦体はナセルの先端から居住区やコントロールルームのある船体先端まで含めても500mも無い。
片や宇宙船フロンティアについては直径700km弱の巨大小惑星。
凸凹コンビもいいところで完全に基地を引き連れた小型艦の様相である。
少しばかり航行したところで、こちらにアラートが点灯する。
何かとコンピュータに問えば、はぐれ遊星とのこと。
直径1km超とのことなので緊張が走るがフロンティアから通信が入る。
「やあ、グルグ艦長。はぐれ遊星だとさ。遊星一個なら大したことはないだろうが、もしものことがある。そちらの宇宙艦、こちらで収容しようか?」
大丈夫だとは思うが万が一を考える。
「クスミ提督、お願いしたい。小さな流星を引き連れていると厄介なことになりそうだ。そちらの庇護をお願いする」
「了解した。では大型搭載艇の収容場所で大丈夫だろうから、そちらを1つ空けよう。あと数分でドックが開くので、そちらへ入ってくれ」
数分後、小惑星としか思えぬ地表に大きな搬入口のようなものが開く。
これが搭載艇用だと?
こんなものがいくつもあったら動く宇宙要塞だ、この船は。
我が艦は、その大きな収容場所に微速前進で入っていった。
係留も、トラクタービームで行うらしく機械的な物は見えない。
しかし、かなりガッチリと係留されたようで補助動力を動かしてみたが、びくともしない。
あまりの壮大さとバカバカしいほどの巨大さに我々は、しばらく動けなかった。
約1時間後、我々は艦を降り、この巨大宇宙船の案内を受ける。
技術班や科学班は、この巨大船の動力やエンジンを見たがったのでメイドのような服装の女性に案内される。
医療班はメディカルルームの案内ということで、もう一人の女性に案内してもらう。
我々と博士(ようやく気絶状態から立ち直った)はコントロールルームへ案内される。
あ、この船の呼吸用気体は通常の我々の世界と変わらぬものだったようで呼吸用マスクも何も必要なかった。
細菌やウィルス等の病原体についても我が艦内においては滅菌処理が原則だし、この船においても同様のようだ。
しばらく歩くが、とてつもない広さの宇宙船だと改めて思い知らされる。
フロアからフロアへはチューブ式のエアーエレベータで移動するのだが箱も何もない底の見えない空中に飛び込むのは、さすがに最初は躊躇した。
慣れれば、こちらのほうが可視化されている分、自分の位置をつかみやすいとは思うが。
ようやく案内ロボットが目的地に到着したようだ。
映像で確認した限りでは、この船の最高責任者、クスミ提督とはサルの獣人の変異体のように思われる。
顔にも手にも頭部以外の見えている箇所に毛が生えて無かったからな。
我々はコントロールルームへ入っていった。
まあ、宇宙○作戦の世界じゃ、ク○ン○ンやらロ○ラ○やら、その後のシリーズでは暴愚やら不定形生命体やら出てきますが、でも人間が一番マシ!
ってな書かれ方してます。
しかし、それはおかしいのでは?
ってのが今回のお話。
正義は、それぞれ。
善悪の判断基準も、それぞれ違うだろうし、少なくとも大きな星域を支配するような形であれば、力だけじゃ無理なはず。
絶対的に悪いのは、他の生命体を殺してでも支配地域を広げようとする行為だと思います。
作者、帝国制度も悪くはないと思ってます。
短期ならね。
民主主義が絶対だ、などと衆愚政治を考えたら絶対に言えない言葉を口にする某政党の政治家では無いので、どんな政治体系でも、自由と生命とを抑圧することが無ければ存在するのは自由だし、それを受け入れる人民が愚かでなきゃ良いと思ってます。




