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とある星間帝国の悪夢 その一

新しい章の始まりです。


距離的には、アンドロメダ近傍銀河から、ようやく離れたところかな。


星間帝国年501.0402 艦長日誌補足


我が星間帝国が開発した新たなる恒星間エンジンのテスト艦である、このUNSD−1001に関して私は若干の不安を抱えている事を書き残す。

今までとは段違いの推力とエネルギー係数を持つ新型エンジンを積んだ我が艦船ではあるが、新しすぎる理論を、あまりに早急に技術体系に組み込みすぎたのではないか?


我々は近傍の恒星系を次々と制覇し、小さいながらも星間帝国を造り上げた。

だがしかし星間帝国皇帝陛下は、それだけで満足せず我が星系や星間帝国が含まれる銀河を丸ごと支配下に置きたいと仰せである。

私も個人的には小さな星系でゴタゴタするくらいなら我々の星間帝国傘下に入り、臣下ではあるが平和を享受したほうが良いとは思う。

しかし、だ。

それを今まで阻んでいたのが宇宙の広さだった。


近傍星系までなら今までの超空間バウンドで充分に到達でき、時間ロスも気にしなくていい。

もし今の星間帝国の最遠部で反乱や災害が起こったとしても今の帝国宇宙艦隊ならば急いで駆けつけることが可能。

この艦に積まれた新型エンジンが、その飛躍的性能を発揮すれば確かに星間帝国は今の数倍、いや数10倍以上の支配地域を得ることができるだろう。

だが、そんなことをして大丈夫なのか?

この技術や理論の完璧さを説いていた学者の弁ではないが、


「今の理論が廃れる時は今です。この私が発見した新理論によるエネルギー発生量は理論値では無限大となります。技術的には無理なので実用として数10倍から数100倍を達成することは充分に可能です!」


しかし、と、その学者は付け足す。


「この新理論が廃れる時も来るでしょう。今は完璧に見えても次の理論では穴だらけかも知れません。しかし未来のためには、やってみるしかありません!」


あの学者、もう紙一重のポイントを飛び越してたな、あれは。

未来への尊き犠牲という名文句で人体実験を平気でやる奴の言葉だよ、この””%%’’&&!(あまりに汚い罵倒なのでマスクしました)

でもって、この艦が実験台。

最新艦の艦長だからと飛びついたんだが、こりゃ選択間違ったかなぁ……


星間帝国年501.0403 艦長日誌補足


まあ、とりあえずは最新実験艦ということで皇帝陛下の命名と発進セレモニーを済ませて、ついさっき発進したところ。

まだ新型エンジンの起動すら行っていない。あのキチ(ピー)博士が、この新型艦に乗り込んできてテスト航行の全てを仕切るんだと宣言しやがったからだ。


技術主任も科学主任も艦医すらも、このやり方に反感を持っただろう。

しかし皇帝陛下の全権委任状などという物を持ちだされたら、どうしようもないじゃないか。

ああ、また勝手に出歩いて勝手な指示と命令を出しているな。

しかし実験ポイントまでは計画されたとおりに行動するしか無いのだ。

この宙域の管制を勝手に乱すことは許されない。


「ドクター、あなたの出番は、まだまだ先ですよ。実験ポイントまでは我々の指示に従って下さい。勝手に指令を出したり許可も無しにコントロールルームへ入ることは今の段階では許されませんよ」


皇帝陛下からの全権委任状が、いつでもどこでも効果を発揮すると思ったら大間違いだ、博士。


「なんじゃとぉ?!恐れ多くも、この皇帝陛下の全権委任状がある限り絶対的な行動の自由と命令権は儂にあるんじゃぞ!」


大きな文字しか読めないのか、こいつは。

しかたがないな、


「ドクター、ここに小さいですが『ただし実験ポイントへ着くまでは、この限りでなし』と書いてあるでしょう?あなたが全権を握るのは新型エンジンの実験ポイントに到着してからなんです!」


「なんじゃ、つまらん。ではポイントに着いたら知らせてくれよ。儂は新型エンジンの微調整をやっとるでな」


こ、こいつは!

しかし今、気になる一言が。


「ドクター、微調整ですと?」


「ああ、理論上は完璧に目標とするエネルギーを発生することは間違いないが、それでも理論と実際は違う。わずかな部品の定数の違いや組み立て時のショックでのバランスの狂いとか、微調整しなきゃまともにフル出力は出せん」


これは実験艦だが実験が終了して目標数値が出され次第、旧エンジンから新型エンジンへの全艦換装が計画されているはずだ。戦闘宇宙艦に微調整が必要なエンジンを積むとはド素人の発想か、はたまた悪魔の計画か……

ものすごーく悪い予感に苛まれながら最新艦UNSD−1001は新型エンジンの実験ポイントへと、その巨大な艦体を進ませていったのであった。


もうSF好きな方ならピンと来たでしょ。


今回、あの有名なTVSFシリーズの土台を借りてます(同じような話にはしませんよ。軍事行動は大嫌いな作者ですからね)


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