ep56:目立たない人外
両手で、思い切り持ち上げ、横振り。
続けて、体内の魔力を纏わりつかせるように絡ませて片足を軸にそのまま、もう一振。
──倒れ落ち、地面が沈む音。
目の前には、綺麗な断面で切り落とされた、一本の、巨大な樹木。
そして、幹の上の方には、深くも、芯には届かない切込みが出来ていた。
うん、重い!
こんなんじゃ、あの醜い筋肉抹茶たちか、探索隊の筋肉ダルマくらいしか扱えないよ。
魔力を流すことで、若干切れ味が増した小小小太刀を前に、そんな事を考える。
……これも地面に埋めたら、吸収されるのかな?
なんて。
刃の部分を適当に魔力パンチで砕いて、地面に撒きながら。
さっ、もうこの階層には用ないし、おさらばなのだ。
荷物の関係上、一つしか持ち運びが許されなかった小小小太刀とは、ここでお別れ。
「じゃあね、ちっとも役に立たなかったよ」
地面に突き刺された、刃がボロッボロの小太刀に向けて、手だけは振っといてあげた。
◇◆◇
探索隊は、魔物との正面衝突が、限りなく少ない。
ほとんどの場合は、背後からの奇襲か、遠距離からの一撃必殺攻撃で、階層内の魔物たちを駆逐していた。
それが出来るのは、ひとえに──
──根暗直人……はなんか嫌だな。
やっぱり、猫背フードのお陰だろう。
前に、タケっちとの体験時に使った、周囲の敵の位置情報とかが分かる、あのミニマップ。
あれは、猫背フードの持つ力らしい。
視界の端では、タケっちや橘の後ろで、地べたに座り込んでいる猫背フード。
その顔の周りには、無数のホログラム画面が展開されていて、その中のキーボードに似た何かを操っていた。
それぞれの手に一つずつ、キーボードの画面。
要するに、両手で異なる行動をしているわけだね。
……ははっ、手の動きがなんだかムカデみたいだ。
スキルの名前……なんだっけな。
確か、《微弱な電気妖精》とかだった気がする。
なんでも、本来は静電気を近くのモノに数回当てることくらいしか出来ない、使えないスキルだったけど、ドローンとスキル、それにデバイスをあれこれ繋げることで、向かうところ敵なしの広範囲索敵能力に仕上げたんだとか──
「──であってるんだっけ」
「訳の分からないこと言ってないで、周囲を警戒してください」
以心伝心は上手くいかないものだね。
理解不能な変人を見る目で一瞥されてしまったよ。
そうしていく間にも、広がっていくミニマップに、赤色の点が、百、二百と増え続けていく。
視界の端には、5機程のドローンが、それぞれ別の方向へと飛び交っていた。
…………。
……?
5機程の、ドローンが……?
目を擦って、もう一度猫背フードを見る。
間違いなく、彼の手は2本だけだね。
…………。
……人、間?
◇◆◇◆◇
ぐどう「それ、指どうしているのかい?」
ネクラ「ん? ここをこうするんだよ。そして次に……(難解な呪文のような何か)」
パッツキン「やべぇアタマ痛ぇ」
は・や・せ「これだけは、本当に理解できませんね……。そこの変人とは別ベクトルで」
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ep56:目立たない人外




