ep55:どこかの愚か者みたいな説明欄
「これ、名前なんて言うんだっけ?」
「これ自体は特に名前がないんだ。ルーペの形をした、鑑定効果の弱い、永続型U-Item、みたいな感じで分類されるはずだ。簡単な詳細しか確認できないとか……」
やっぱり、タケっちはこの探索隊の良心と言っても良い存在だね。
脳内でタケっちのことを賞賛しつつ、ルーペのような形状をしたU-Itemを持つ。
外見は、本当にただのルーペだ。
透明なレンズがあり、銀色の金属が縁を覆い、持ち手の部分は、何らかの木材で出来ている。
……最初は、U-Itemなんてどうやって見つけ出したのかと思ったけど、こういうのがあるのなら、まぁ、納得はできるよね。
偶然見つけだした、何らかの鑑定効果を持つU-Itemで、ダンジョン内の物を、何から何までしらみ潰し。
そうして、その他のU-Itemを見つけ出す。
まぁ、大体こんな感じだろうね。
U-Itemには、そこら辺の石とか、白紙とか。
一見、普通の物と見分けがつかない、何の変哲もないものもあるらしいし。
…………。
……アレも、そうだったり、するのかな。
天井に、顔を向ける。
目の先には、水色に輝く、巨大な水晶。
ダンジョン内にあるモノ全てに、U-Itemの可能性があるだなんて……ふふっ、フハハ♪
──心が、踊ってしまうじゃないか♪
口端が捻れていることなんて、気づきもしなかった。
……少し遠くで、パツキンと直人がドン引きしていることも。
◇◆◇
表面を指の腹で、線を引くように撫でる。
硬質で、冷たい感覚だけが指先を伝い、ボクへと感じさせる。
目の前には、大剣のように太い、刀剣。
ホブゴブリンが棍棒のように振り回して、ボクに一回も当てられていなかった、あれだ。
フフッ、可哀想なものだね。
使い手が"あんなの"では、いくら質が良くてもその力が発揮されることはないのだから。
所々に損傷した部分はあるけど、綺麗な反りに、ブレのない平らな表面。
あんまり武器とかには詳しくないけど、質が良い、と言ってもいいんじゃないのかな。
刃先をスっと撫でれば、ボクの指先からは、赤色の液体が、たらりと流れ落ちていく。
うん、切れ味もいいようだね。
包丁にでも使いたいくらい良い切れ味してるよ。
……まぁ、こんなの使ったら、まな板どころかキッチンごと切り落としてしまいそうだけどね。
…………。
……それもいいかもしれない。
なんて、思慮の欠けらも無い思考はそこら辺に投げ捨てて、ルーペを目の前に寄せる。
視界が湾曲するように、ルーペの内部だけが大剣の表面に近づいて──
──文字が、並んでいく。
───────────────
【小太り小鬼の小太刀】
なんか……あれを流すと、ちょこっとだけ強くなる。
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…………。
……なにこれ。
説明欄? フレーバーテキスト?
目の前には、結構前に見たステータス画面と似た感じの画面に、名前と、微塵も詳細とは言えない説明文らしきもの。
…………。
「……ねぇ、タケっち」
「……大丈夫。何が言いたいかは、よく分かる……。このルーペ、永続的に使える代わりに、効果がほんっとうに弱いんだ」
…………。
……ハハッ、壊してしまおうか。
なに? 『なんか……あれを流すと』って。
何がどう強くなるのかも不明だし……。
「ふふっ、ふははっ、フハハハ……」
あまり、笑わせてくれるなよ。
思わず、包帯ぐるぐる巻きの右腕を、その拳を、握りしめる。
はぁ、全く。
『インパクトォォォ!!!』が疼いて仕方ないね。
◇◆◇◆◇
ぎーらく「なにか分かった?」
タケっっっっち「特に。めっちゃ重たいってことくらいしか分かんないな」
はやせー「隊長、本気です……?」
タチバナ「ちょうど包丁の代わりを探していたんだ」
パツキン屋「片手で持って……ッ!?」
なおっと「……は、ははっ」
ひよっりん「…………(絶句)」
ぎーらーくー「あっ、魔力流すとちょっと鋭くなったかも……? ふはっ、危ないなぁ。あともう少しで指が落ちちゃうとこだったよ(独り言)」
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ep55:どこかの愚か者みたいな説明欄




