ep52:生存日数、15日目。
一、二の三っと、リズム良く駆け下りていく。
他のメンバーは、とっくに先へ行っている。
両手のひらのように枝分かれした奇妙な草を、三角座りで一時間ほど観察していたら、いつの間にか先に行ってしまったらしい。
地面に捨て置かれた置き手紙に、『先に行く』とだけ、仏頂面な文字で簡潔に書かれていた。
凄いものだよね。
文字だけで誰が書いたのか理解できてしまうよ。
自然に形成されたかのような、大岩の螺旋階段。
駆け下りて行き、肌を撫でる空気が変わるのを、体感した。
階段を抜けた先。
そこには──あまりにも奇妙な光景が、広がっていた。
灰色の、草原。
風が吹くたび、
乾いた草が、かさり、と音を鳴らした。
奥には、墨汁のような黒色の樹木が、葉を枯らしてポツポツと生えている。
上を向けば、スカイブルーという言葉がよく似合う巨大な水晶が、天井から真っ逆さまに突き出て、まるで太陽の代わりと言わんばかりに、青白い光を放っている。
…………。
……あのトラップに引っかかってから、10階層くらいだったかな。
いくらダンジョンとはいえ、今までの階層は、まだ、現実にあってもおかしくはない、と言えるであろう環境だった。
けど、これは……こんな景色では、もう、言い逃れは出来ない。
既存の環境では、どう足掻いても、こんな景色が形成させることなど、ありえないのだろうね。
だから、やっと、腑に落ちた気がする。
……本当に、あの空想たちは。
あの、現実になることなど有り得なかったはずの、非現実は。
──現実に、なっていたんだ。
…………。
「……ふ、ふふへっ、ふはっ、フハハハハッ、アヘッ、あははっ、アハハハハァ♪」
やっぱァ──
──この世界、楽しいや。
フハハ!
「……おい、直人。あの新人、変っつうか、怖いっつうか、なんかキモ怖いぞ(こそこそ)」
「……僕に言わないでくれ。僕も怖い(こそこそ)」
◇◆◇
──自動ドアダンジョン、???階層。
なーんとなく分かってはいたけど、ここまで露骨だと確信してしまうね。
抹茶色の皮膚に、筋骨隆々の肉体。
片手には反りのある刀身約一メートル弱の太い刀剣。
手足からは黒色の鋭い爪が生え、眼光すらも、鋭さを増している。
それが、7体程。
外見的特徴に、目の前の魔物たちが発する、唸り声。
それらを加味すれば、この魔物たちをなんと呼べばいいのか、理解できる。
平たく言えば、この魔物たちは──
──ゴブリンだ。
……もっとも、あの人間の超劣化版みたいに弱々しいわけでは、ないけれど。
あれかな、ホブゴブリン、とでも言えばいいのかな。
「ねぇ、パッツキン?」
「なんだぁ? そのパックマンみてぇなあだ名。だせぇから相馬サマと呼べ」
「ボクたち、このダンジョン入ってから、結構経ってるよね……。二週間くらい」
「無視かよ……。まぁいいわ。そうだなぁ、確かにそんくれぇ経ってるかもなぁ」
「そうだよねぇ。さて、そんなボクたちは、とっても疲れています」
「……」
「目の前には、強靭な体格の、醜いボディビルダーもどきが7匹、おりますとも」
「…………」
一歩、前に出て。
穢れた抹茶共を前に、背を向けて。
十字架に打ち付けられた偉人が如く、両手を広げて、顔だけは、前を向いて。
口端が、捻れる
「みんなァ!」
一瞬の、静寂。
息を飲む音だけが、微かに聞こえて。
「今日は、とっても愉しいねェ!!」
片足を軸に振り返りながら、短剣を振り上げるように抜き、逆手に持つ。
そのまま、纏わりつく魔力を滾らせて。
体を縮め、地を跳ねる。
「さーァ!」
「──遊ぼうか♪」
愚かな特攻兵の後、呆れた顔の彼らが、続く。
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ep52:生存日数、15日目。
【愚道戯楽が貰い受けた短剣】
刃が僅かに青みを帯びた、両刃の短剣。
全長が、ものさしより少し長い位で、刃渡りが約20cm程。
一日に一度は、早瀬サマから点検の催促、及び『半透明の球』を利用した強制的な催促がなされるため、手入れが行き届いている。
本文に出す機会は無さそうなのでm(*_ _)m




