ep47:目に見えない真実は愚か。
ダンジョン内部のトラップ情報の一つに、『階層間移動系トラップ』というものの事例が、ダンジョンがこの世界に現れて以来、世界全体で約5000件程の報告があったらしい。
魔法陣しかり、落とし穴しかり。
その事例の中では、移動先の階層が、元の階層より下であった場合の方が、報告の数が多かった。
生き残り、その情報を提供できた人間の、数が多かった。
そんな、"事実"。
橘は、事実しか言わない。
少ない期間しか共に過ごしていないボクですら、これは、信用できる。
それもまた、事実だったのだから。
…………。
……まぁ、だからこそ、なんだろうね。
一歩後ろに下がる。
目を動かして、その濁りだらけの世界から、彼らの姿を、その顔面を、眺める。
……随分と、楽しそうな顔をするじゃないか。
探索隊のメンバー。
彼らの顔に、迷いは見当たらなかった。
もちろん、各々に思う所なんかはあるんだろうね。
けれど、橘の指示に従い、このダンジョンを完全攻略する。
この一点に関して、彼らの覚悟は決まったかのように、ボクからはそう見えた。
…………。
……それで、なんでそんな目を、君がしているのかな。
視界の中には、探索隊を見ているようで、別のどこかを見ている、橘の姿が映っていた。
なんだか、前も見たことがあるような目をしているね。
ボクが橘と出会った、あの日。
確かにボクは、あの目を見ている。
見ているようで見ていない。
別の何かを、"見てしまった"かのような、そんな目を。
……ふふっ、なんだか、楽しくなってきちゃったなぁ。
昂りが、蠢いて、渦巻いて、体を突き破って。
溢れ出してしまいそうなこの魔力を、今は、抑えておくことにする。
さて。
それじゃあ。
楽しい楽しいダンジョン攻略、頑張っていこうかな♪
◇◆◇◆◇
──他メンバー。
タケチ「(戯楽くん……彼もこの状況では流石にそうなってしまうのか。顔を俯かせて……。いつもなら笑っていそうなのに)」
はーやーせー「……(驚きましたね、彼のような人も落ち込んだりするとは)」
野郎パツキン「……チッ(新人……いつもの気持ちわりぃ笑みはどこやっちまったんだよぉ……ッ)」
──一方。
愚道「……(あぁ……! 何からやろっかなー! 楽しくて仕方がないよォ……ふっ、ふへっ、フハハハハッ!!)」
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ep47:目に見えない真実は愚か。




