ep46:未知が恐れられる理由
──グジャ、ドシャ……
地面が、抉られる音。
それと共に、水っぽい音が響く。
目の前には、抉られた地面に、根元が禿げ、根元から倒れた樹木たち。
後ろを振り返る。
そこには、何の変哲もない、ダンジョン内部の自然。
……前のダンジョンとは違うねぇ。
先程までは、破壊や銃撃の跡に満ちていたダンジョンの自然が、10分くらいで元通りになっている。
壊れないわけではない。
けど、壊し切れる訳でもない。
つまり──壊せても、意味がないってことかな。
……まぁ、全然違うとは思うけど。
一応、壊せはする訳だしね。
…………。
……うーん。
口元が、捻れていく。
喉の奥が、楽しそうに震えてしまう。
……思っきり自爆したら、どうなるかなァ。
…………。
なんてね。
まだ全然探索とか出来てないし、もっと楽しんでからでいいや。
──ボクは、メインディッシュを最後にとっておくタイプなのだよ。
……その方が、楽しい。
◇◆◇
草原に、点々と色の良い樹木たちが乱立している。
自動ドアを潜れば中にはこんな自然が、なんて。
下手な詐欺広告よりも嘘っぽい事実だね。
横倒れにした樹木たちを地面に括り付け、一時的に固定する。
この辺はダンジョン事の性質とかなんとか、色々関係しそうだけど、まぁ、そういうものとだけ捉えておくことにする。
小難しいことを考えると頭が痛くなるのだ。
右隣には、ゴリ……橘。
左隣には、お人好し。
……うん、両手に花だね!
目を遠くして、項垂れておく。
話を聞く気なんてなかったせいか、今がどんな状況なのかは1ミリくらいしか分からないけど、何故か冷たい空気の中。
橘が、口を開く。
「……先程のは、トラップの類いだろう。種類の差はあるが、似たようなものの報告は聞いている」
命の危険が常に纏わり付く場所。
それが、ダンジョン。
なのにも関わらず、橘の声色は依然として、平坦なまんまだ。
産まれたての子鹿を彷彿とさせるひよりんを横目に、笑い声を堪えておく。
早瀬とかいう女から、鋭い視線。
…………?
……あ、口元も抑えとかないとバレちゃうのか。
そんなことを考えているうちにも、話は進む。
「……ダンジョンの最深部は、今まで発見された中だと、最高値で30階層、だったか」
橘の周囲には、空中に投影された画面が、群れを成している。
文字がズラリと並び、その全ては、ダンジョンに関するモノのようだ。
「……今俺たちがどの階層に居るのかは、分からねぇ。調べる方法も、"無い"」
そう、彼は断言する。
これだけの情報を調べた彼が、断言したのだ。
つまりは、まぁ……生き残れる可能性が、ほとんど無くなった、ということなんだろうね。
…………。
……いけないなァ。
口元が、抑え切れそうにない。
──楽しくて、仕方がない。
◇◆◇
「俺たちは、未知の領域であるこのダンジョンの内部、ここの調査を依頼された。これは、分かるな?」
出会った頃と、何も変わらない。
ただ、事実を告げるだけの、冷淡な声。
それは、不安を煽らず、期待を抱かせない。
「このダンジョンは、未開の地だ。つまり、最深部が何階層にあるかも、当然ながら分からない」
「上に進み、出口を取るか」
「下に進み、完全攻略をするか」
「──俺は、下に行くことを提案する」
彼の瞳には、事実だけが、映っていた。
メンバーたちは、喉を鳴らし、震えを隠さない。
…………。
……うんうんっ、そうだよねェ!
こんなにも楽しそうなイベント、思わず喉を鳴らしてしまうよねェ!
あぁ! どうしよっかなぁ!
どんなことして遊ぼっかなァ!!
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ep46:未知が恐れられる理由




