ep43:被検体は慣れっこ
……あァ、思えば、あの時からだったかなァ。
こんなにも、笑えるようになったのは。
「……フハハ!」
──身体が、黒い底なし沼のようなナニカに、飲み込まれるような、そんな感覚。
浮いているような、押し潰されているような、言葉では、とても言い表し難い。
進んでいる……はずなのに、実感が出来ない。
気にせず、歩を進め……れているのかな、これ。
分からないけど、身を任せるように、押し進む。
前は、見えない。
黒くて、暗くて──奥の見えない、不思議なものだね。
フハハ……。
時間でみれば、ほんの数瞬に過ぎないんだろう。
……もっとも、体感では長くも短くも感じる、変な感じなわけだけど。
目の前から、少しずつ、灯火のような光が広がっていくように。
それは、陽の光のように温かみを帯びている。
とても現実とは思えない、底なし沼のようなこの空間。
…………。
……まァ、また今度でいいや。
蠢き、今にでも溢れ出さんとしていた魔力を、体内に放り込む。
泥濘のような足元の抵抗を蹴飛ばして、そのまま進んでいく。
……ダンジョン、ぶっ壊せるのかな〜。
温かい風が、花咲を撫で付けた。
◇◆◇
青白い、光。
それは、ボクの右腕から拳を覆うように、揺れ動いていく。
捻れ、蠢き、腕の周囲には、小さく雷が唸っている。
そのまま、青白い光を限界まで纏った腕を、弾け飛ぶかの如く、振り抜く──
「──《魔纏撃》」
瞬間。
巨大な狼の頭が、肉片と共に──爆ぜる。
血と臓物が、草原に飛び散った。
……ハハッ、グロいなぁ。あと臭い。
腕に纏まれていた青白い光、魔力は、役目を終えたとでも言わんばかりに、空中に溶けだし、霧散する。
陽光が、差している。
目の前には、黄緑色の、草原。
風に吹かれ、揺れ動く草木は、見ているだけでほんわかした気分になってしまう。
ふと、横を見れば……
魔物の集団を蜂の巣した、橘。
動きのノロイ巨体を、その大盾で抉り取り、血みどろになっている、タケっち。
…………
……むさ苦し──うーん、ほんわかとした気持ちになるものだね!
なんて、血を払いながら、そんなことを考える。
横からは、睨まれるような気配。
別に怖くなって考えを変えた訳では、断じてないよ。
断じてね。
視線が逸れたのを見て、一息。
当たり前ではあるけど、さっきのあれはスキル……ではもちろんない。
魔力をそれっぽく操って、橘のスキルを腕で真似した、要はスキルもどきみたいなものだ。
皮膚が焼き爛れた腕を見ながら、魔力をくるくると弄る。
スキルではないからなのか、半ば自傷技みたいになっているけど、この探索隊にはなんと言っても、ヒーラーが存在するのだ。
……遊びの幅が広がっちゃうなァ。
いやー、困っちゃうね。
自分の口元が、今どうなっているのか、なんて、知る由もない。
……色々試しちゃお。
勿論、自分の身体でね。フハハ。
◇◆◇◆◇
ひよりん「ま、また、ですか」
ぎらーく「許してちょ」
ひよりん「……ヒール」
ぎーらく「ありがと! よし、ではもう一度!」
ひよりーんっ「……(絶句)」
タケシ(タケっち)「ぎ、戯楽っ、ストォォップ!!」
パツキン「止まんねぇなぁ……(傍観)」
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ep43:被検体は慣れっこ
愚道戯楽のこと書こうとすると、ちょっとだけハイテンションになってしまい、そのままのテンションで作ってみた小話です。
好評かどうか、教えてくれると幸いですよ。
好評だったら続けます。小話をね。




