表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
ダンジョンマン
47/67

ep40:肉の代償


 ……………………


 …………。


 ……ぼんやりと、目が覚める。


「知らない天井……でもなかったね」


 数回ほど見た、知っている天井だ。

 探索隊の拠点内には、幾つかの空き部屋があった。


 たしか……ここもその内の一つであったはずだ。


「って、あ〜……。まただ」


 何か違和感を感じて、辺りを見回すと、魔力が、波打つように体表を蠢いている。


 以前から、それこそテオールの基地で過ごしていた時から、こうなることがあった。


 それも二日に一回ペースと、かなりの頻度で。


 魔力ってのは、どうも扱いが難しい。

 手や足のような、身体の一部みたいに動かせる割に、無意識になると、勝手に動き回る。


 ……まぁ、そのお陰で得られるものも、あったりはするわけだけど。


 魔力は、以前よりも柔らかく感じられた。


 空気よりも軽く、それでいて、意のままに形を変えていく。

 球、ブロック、輪、剣……それから、赤鉄の大剣。


 イメージのままに、ころころと姿を変えては、気化するように消える。


 色を変えて、温度を変えて、質そのものを──




──グシャぁッ


「おわっ、と。ははっ、変な声出ちゃった」


 腕を見れば、弾けたように筋肉は裂けてしまっていた。

 白い骨は、姿を露わにしていて──激痛が奔る。


 痛い。

 ……けれど、何回も何回もやれば、多少なりとも慣れはするものだ。


 …………。


 ……露出した傷の中から、産毛ほどもない魔力の糸を、引き伸ばしていく。


 縫い付けるように、筋肉、血管、その他諸々。


 いい加減な考えのまま繋ぎ合わせていく。

 後はまぁ、包帯でも巻いとけば、たぶん治るだろう。



 ……糸の扱いは、ボクのことをこき使ってきやがった老骨のせいで、無駄に精度が良くなっている。


「フハハッ」


 習慣……いや、もはや依存といっていい。


 魔力遊び、こんなチンケなものですら、他に変えようのない楽しさというモノを、感じて仕方ない。


 風が吹いている。

 若干にめくれたカーテンの隙間からは、眩い光が漏れ出していた。


「ふあぁ……」


 気の抜けたあくびが漏れる。



◇◆◇



「おい……この新人やっぱ変だぞ……」


 ドン引きしたように呟くのは、パツキン生意気野郎の、相馬蓮とかいう奴だ。


 机の上に広がるのは、テオールの基地から奪い去り、今の今まで大切にしてきた……と思ってはいる、ボクの肩掛けカバンだ。


 開かれ、中身の露出したカバンの中に混在するのは、謎の機械部品と、カバンの大多数を占めるゴブリンの干し肉たち。


「変って、全く、失礼なものだね。別に食べれないことは無いんだ、問題ないだろう」

「……そういう問題じゃねぇだろうがよぉ」


 何かを思い出したかのように、顔を青くし、その身体は小さく震えていた。


 それは、アイーバくんだけでなく他のメンバーも。


 ……フハハ。面白い反応をするじゃあないか。


「直人も食べてみるかい? それと……えぇっと、あ、ひよりんも」

「遠慮しとくよ。……つか呼び捨てなんだ。距離の詰め方バクってんだろ……」

「わ、私も、遠慮しておきます……」


 ゴブリンの干し肉を見せびらかせながら、探索隊の2人に勧めてみるも、直人には脊髄反射が如くの即答で、断れてしまう。


 早瀬じゃない方の女こと、小鳥遊日和たかなし ひより

 通称"ひよりん"にも断られてしまった。


 ……ふぅ、危ないところだったね。


 危うく名前をあんまり真面目に聞いていなかったことが、バレてしまうところだったよ。


 謎の達成感を感じながら、メリケンサックの手入れを続けていく。


 探索隊は、今日を持って──


「お前たち、準備は出来たか。そろそろ行くぞ」


──この街を出る。


 ……そういえば、この探索隊の名前、まだ知らないんだよなぁ。


 なんて考えながら、橘の言葉を右から左へと受け流し、白い布でメリケンサックを拭き続ける。



 ……あっ、ちょっと待って! あと1分! いや、あと5分! ちょ、ま──



「──探索隊、出発するぞ」


 短い、橘の号令。


 数瞬だけ、哀れみのような目を浮かべられる。

 それを感知した頃には、既に彼らは背を向けて、出口へと進み出していて。


 片や、メリケンサックにお熱なボク。

 片や、過ぎ去って行く探索隊のみんな。


 ボクの元へは、彼らからの日陰しか届かなかった。


「このぉッ! 薄情者共がァァァ……ッ!!」


 そう叫びを挙げる頃には、彼らの背中すらも見えなくなっていた。


 全く、どうしてこうも薄情になれるものなのか。


 ……悲しいよ、ボクは。

 涙を禁じ得ないとは、この事だね。


 遠くで、パツキン野郎の笑い声が聞こえた気がしたけど、たぶんボクの聞き間違いなのだろう。


 手に嵌められたメリケンサックは、今までにないほどに、光り輝いていた。


 ……ははっ、眼球も日焼けとかするのかな。



────────────────────

ep40:肉の代償

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ