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ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
ダンジョンマン
39/67

ep32:ドッチボールは返されない。


 短い黒髪に、鋭い目つき。

 筋肉質で大柄な身体に、彼の性格が垣間見えるような、緋色の目。


 彼は、確かにボクへ向けて、何かしら勧誘の言葉を放った。


 そんな彼にボクは──




──ビィィィィィィ!!!


 反射的に、引いていた。


 知らない大人に話しかけられたら、防犯ブザー。


 常識だろう?


「……は?」

「あぁ、いや、ごめんね。キミ顔がアレだからさ、なんというか、こう……鳴らしちゃった♪」


「……は?」


 二回目だなぁ。

 目の前の変人は、相も変わらず困惑しているようだ。


 ショックでも受けちゃったのかな? と思い、下から覗き見ると、銃刀法違反の犯罪者はニヤリと笑い


「いいなぁ、お前」

「そうか、キミは初対面の人にいきなりお前呼びするタイプなんだね」


 何が『いいなぁ』なのか、全く持って意味がわからなかった。



◇◆◇



「それで? 何の用なのかな」


 腕を振り払い、血を落としながら、ボクの全身を舐め回すように見る変人に、そんな疑問を問う。


 見てみると、彼の目元には、薄っすらとだけど、隈が出来ていた。

 やつれたおじさん、みたいな感じだね。


「……お前は、変人だな」

「会話のドッジボールもできない感じかぁ……」


 彼の目は、相変わらずボクへと向けられている。


 観察するような、かといって観測的ではない、ある種の、習慣的な行動のような……。


「普通の人間は、あそこで防犯ブザーを鳴らす選択肢を取らない」

「いや取るでしょ、キミみたいな変人に話しかけられたら。ていうか話聞けよ」


 目の前の変人は、聞いてもいない事を、独りでに話し出す。


「判断力が高いと見るべきか……お前には躊躇が見られない」


 銃を持った変人は、ボクの事を理解したかのように、話を続ける。


「身体能力自体は、そこまで高い訳ではないな」

「かといって、それを覆せるほどのセンスがある訳でもない」


 ボクの分析結果、のようなものかな。

 それともただ単に、ボクを侮辱しているのか。


 まぁ確かに、間違っては無いように思えるけど。


「やはり特筆すべきは、その判断力だ」


 これは……褒めているのかな?

 それとも、ただ事実を並べているだけなのか。


 いや、どうでもいいか。


 そんな事を考えてる間にも、変人は口を開く。


「ダンジョンじゃな」


 一泊、置いて


「……いや、どこでも同じか」


 ぽつりと、変人が呟く。


 その目は、ボクの方を見ているはずなのに、どこか別を見ているように思えた。


 変人は、言葉を続ける。


「強ぇ奴より、迷わねぇ奴の方が、生き残る」

「躊躇した奴から、死んでいく」


 ボクに向けて話す言葉の隅々に、別の何かが見える。


 淡々とした、声だ。


 熱く語るでもなく、脅すわけでも、誇るような声色でもない。


──ただ、事実を語るような、そんな声。


 淀みなく話す彼の目には、やっぱり、別の何かが映っている。



◇◆◇



「人手が足りねぇ」


 その目は、ボクの目を微かに逸れている。


「死ぬ奴らが多すぎる」


 その声には、事実しか含まれない。


 そこで、初めて。

──変人は、ボクの目を真っ直ぐ見て。


「来い」

「ウチに来い」

「迷わねぇ奴は、使える」


 ……ハハッ、なんて、傍若無人な態度なんだろうか。


 思わず、口元が緩む。


 けれど、彼の言葉はそこで終わらなくて


「……迷う奴よりは、何倍も」


──その言葉には、確かに、何かが乗っていた。



────────────────────

ep32:ドッジボールは返されない。


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