表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE2『大厄災』
37/67

閑話:テオール・インサニアの独白。


 『ダンジョン』と呼ばれるモノが世界に現れてから、数日後。


 空が重々しい雲に覆われ、太陽の見えない、暗雲の立ち込める、そんな日の事だった。


 私が、愚道戯楽(頭のおかしい愚か者)という人間に出会ったのは。


 この人間には、おかしな部分が多々見られた。


 痛みに対する異常なまでの耐性。

 凡そ人間とは思えないほどの自然治癒力。


──人間という生物の本能をも凌駕する独自の価値観。



 後に判明したが、そのうちの2つは、愚道戯楽がダンジョンに入ったことが要因だったようだ。


 多くの傷をつけられ、死の淵にまで追い込まれたら、痛みに対する耐性、精神構造に何らかの変化が起きようと、おかしくはないだろう。


 ダンジョンという未知の空間に、未知の力が存在して、それが人の体に入り込むことによる肉体の変質も、今のこんな世界では、なんらおかしくはないだろう。



──つまりだ。


 この、愚道戯楽という人間は、頭がおかしいのだ。


 ある種の突然変異のようなものだと、認識することにした。



◇◇◇



 バカではあるが、理解力がない訳では無いようだ。


 ポイズンスライムの眼による効果の詳細は、ある程度理解することができた。


 ポイズンスライムを捕獲した連中によれば、ポイズンスライムとは、毒を餌にして生きながらえている魔物らしく、毒が可視化出来るのは、その性質によるものなのだろう。


 ただ、ポイズンスライムから人間への移植をしたことにより、本来適正のない生物だったためか、毒として認識出来る範囲、というのが広くなったようだ。


 常に濁りだらけの視界になるというのは、人間という生物にとって、メリットよりもデメリットの方が大きくなるのだろう。


 とはいえ、相手は愚かなクソガキだ。

 特に気負いする必要もあるまい。



◇◇◇



 〈魔力〉或いは、それに準ずるナニカ。


 愚道戯楽は、ダンジョン侵入時に、その違和感を感じとったらしい。


 現時点ではある程度意のままに操ることができ、不思議な熱のようなモノ、だと愚道戯楽は言う。


 体験談を聞いていくうちに、いくつかの仮説が出てきた。



──他にも、魔力に対する情報を集めていくうちに、ある憶測に辿り着く。


 おそらくではあるが、〈魔力〉というモノは、使用者の意思により変化する、物理法則の理から外れた、理外の力なのだ。


 夢のような話であることは分かっている。


 しかし、これが事実なのであれば、この世の不可解な事実のほとんどが、解明出来るのだ。


 突如としてこの世に現れた、『ダンジョン』というモノも、例外ではない。


 腕に流し込まれた魔力は、確かに、私自身が未知の一端に触れたのだと、実感させた。



◇◇◇



 確認された凡そ全てのダンジョンから、魔物の進出が始まった。


 とはいえ、これは予測の範疇に過ぎない。

 特に驚くことはなかった。


 建物の構造的に、時期にこの場所が埋まることは、理解できている。


 最低限の物だけしまい、逃げ出す──が、そんな時、崩落が起きた。


 激痛が、左足から響く。

 まだ完全には潰れきっていない証拠だろう。


 しかしこの状況は、非常に危険だ。

 動くことすらもままならない。


 ここにきて、クソガキの悪癖が働いた。


 この愚か者は、楽しいか楽しくないか以外に、判断基準を持ち合わせていない。


 だから、楽しくせざるを得なくなってしまった訳だ。


 ……そんな状況に、私自身、心が蠢いていたことは、否定できない。



◇◇◇



 テオール・インサニア。

 この名を明かすのは、いつ以来だっただろうか。


 だが、悔いがある訳では無い。

 あの時、あの瞬間では、私の正体を明かすのが、一番だったのだろうから。


 あのクソガキは、間違いなくバカだ。バカのはずなのだ。


 けれど、微動だにせず私を見つめるあの目には、何かの確信があった。


 私が身分を隠していることに対してだったのか、私ですら、理解しきることは出来ない。


 出来なかったのだ。


 そしてそんな存在がいる事に、その事実に高揚している自分がいる事には、気づいている。


 あの笑い声が、心の底から楽しんでいる声が、頭の中に、こびりついて離れない。


 理解不能だ。


 だが。


 愚道戯楽。

 奴は間違いなく、狂っている。


 ……だからこそ、価値がある。



────────────────────

閑話:テオール・インサニアの独白。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ