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ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE2『大厄災』
34/67

ep30:終わり? ここからが始まり。


「……な、なんで、ですか……ッ」


 声が、震えている。

 怯えではなく──憎悪によって。


「『なんで』ねぇ。キミは、なんでだと思う? ボク気になっちゃうなァ?」


 短刀の根元を折って、捨て置く。

 体内に異物が残るのは、どんな気分なのかなぁ。


 あァ! 気分が高揚してしまうよ!


「分からない、ですよ……ッ。分かるわけないじゃないですか! お前のような、悪人の考えなんかッ!」


 赤く、燃え上がるような、心からの叫び。

 背中に妹を隠して、ボクを見据えている。


 妹の方は、震え手で兄の服を掴み、ボクに向けて、恨みがましい目を向けている。


 その目尻からは、涙を流していた。



 ……そうだよ、キミはそれがいい。


 キミは、あくまでも守られる側なんだよなァ!


 懐に手を入れる。

 短な、空白の時間。


 そうして、取り出した。


「じゃじゃーん! これなーんだっ!」


「……っ、それ、は」

「……ひっ」



──手元には、黒く、光を反射する物が。



「なんでっ、お前のような人間が銃なんて持ってんだよぉ!」


「フハハ! いい反応をするじゃあないかァ!」


 あァ、覚悟にまみれた目が、憎しみに満ちていた彼の声色が、濁っていくのがわかってしまうよォ!


 眼を、片手で覆う。

 この眼は、いいなァ……。


 それでいて──つまらない。


 メキ、と頭の近くから、硬いモノを握り潰そうとして硬質なモノに阻まれるような、音が聞こえる。


 流石に、壊れはしない、か。


 赤色の涙が、垂れ落ちてしまった。


 ギョロリと兄妹の方へ向き直れば……ふふはァっ!

 憎悪と恐れだけが、ボクへと向けられる。


「あれー? あれあれあれー!?」


 トン、トンと、軽快な音を立てて、隙だらけの姿を晒しながら、堂々と歩き進む。



 首を傾げ、彼を覗き込むようにして。



「──なんかキミ、諦めてない?」


 無表情で、酷く冷たい声が、口の中から漏れ出てしまう。


「ねぇ、ねぇねぇねぇねェッ!!」


 大量の銃声が鳴り響く。

 そのどれもが、空を切って、落下音を奏でるだけ。


 声が、荒らげてしまう。

 冷たい、それでいて荒々しい感情が、溢れ出して止まらない……。


「妹を、守らないとさァ? キミは、守らないとダメじゃないかァ」

「キミが、君自身が言ったんじゃないか! 守らないとってさァ」


「……ぁぇ? な、えぇ?」

「……」


 荒ぶっていく声。

 それなのに、顔の肉は凍ったように動かない。


 極寒の炎が、燃え上がって、抑えることなんて、する気すらも燃やし──凍り尽くす。


 目の前の男は青ざめて動かない。

 ソレに引っ付いてる女は男の服を離しそうになっていた。


「……あっそ。そうだよね。このままだと、キミはそうだ。そこまでで終わる」


 左下に目を逸らして。


「キミもだよ。なにソレの服なんか掴んじゃってんの? やっぱキミもだ。キミも、そこで終わる」


 兄妹に背を向けて、響く足音をそのままに。


 振り返り、ドサッと魔物の死骸に、雑に座り込む。


──バンッ! バンッ!


 足と、足に、一つずつ。

 そのまま目を合わせて、少しでも動けばどうなるのか、魔物の死骸へと手を向け、弾を撃ちまくる。


「キミ達はさァ……! 守り、そして守られ、目に見えるほどの絆に繋がれて、明確な意志があって……。楽しいだろうね、きっと面白くなるんだろうねェ!」


 血でべちゃべちゃの死体を手のひらの上に弄んで、目だけは兄妹を捉えたままに。


 彼らの目には、理解不能の異物に、ただ恐怖する感情が浮かんでいる。


 穴が空いた足は酷く痛むのだろう。

 顰めた顔のまま、それでもボクへと目を向けていた。

 彼らの目に、ボクはどう映るのか……。


「でもさぁ──()()()()、なんだよ」

「あァ、いいよ。理解なんてしなくていいさ。これは、ボクだけでいい」

「キミ達は、きっとそこまでにしかならない」

「キミ達の物語は、面白くて、たくさんの出来事があって、楽しいモノとなるんだろうね。たぶん」


 穴のあるソコからは、血がとめどなく流れ出している。兄妹の顔は、悍ましさで満ちていた。


「──けどさァ、最高には欠けるよ。欠けてしまうんだよォ!」


 天を仰いで、手のひらで顔を覆って、そう呟く。


「お前は……ッ、何を言ってるんだ……?」

「……なんで、痛い、いやだぁ……」


「そう! それさ!」


 死骸から飛び出して、目の前まで。

 兄妹の肩を両手で握り締め、耳元で語りかけるように。


「キミ達のポテンシャルは、未完成なのさ♪」


「……はぁッ?」

「……は、ぇ?」


 腕を回す。

 そのまま、兄妹のうなじを手のひらでゆっくり包み込んで、頭を動かす。


 至近距離で、息が当たるほどに近くに。

 彼らの目に映るボクの顔が、ハッキリと見えた。


「だからさぁ──」


 口元を歪めて……あァ、顔が勝手に、笑顔になってしまう。


「──少しだけ、手伝ってあげるよ。喜んでくれたって構わないよ。フハハ!」


 兄妹は、もう涙を流さない。


 いや、流せない。



◆◆◆



「ねぇ、キミはさ、目の前でボクに妹を殺されたら、ナニを思う?」


 ゆっくりと、語りかけるように、彼の脳裏に刷り込むように。

 ニヤケ声のまま、耳元で。


 あァ……彼の顔が、目が、心が、ボクの言葉一つで、面白いくらいにころころと変わっているのが分かる。


 想像に気を取られ、彼は微動だにしない。


「キミもだよォ!」


 妹へ顔を向けて、口端を曲げて。


「キミの大好きなお兄ちゃんがさァ、ボクに目の前で嬲り殺さ「──やめて!!」



 ……やっぱァ、キミだなァ。妹が、一番素晴らしい!


「うん! いいよォ、キミはそれがいい!」

「だからね──」


 2人の視線が、ボクへと。

 そこには、明るい感情など一つもない。


 そうして言葉を紡ぐ。


「──いや、キミはいいや。お役御免、というやつだね」

「ァ"ガッ………………」


 手のひらには、彼のお腹。

 濁りだらけの魔力を、解放する。


 ドサッと、音を立てて少年は地に伏せた。


「……ぇ?」


 年端もいかない少女から漏れた、最初の言葉は、困惑ただ一つそれのみ。

 倒れ伏した兄の背を見て、固まっている。


 少女の手に、掴めるものなどもういない。


「あハァッ! ねぇ! もうキミを守ってくれるお兄ちゃんってヤツはさァ!──いないんだよ」


 耳元で、その事実を、彼女自身に、貼り付けるように。

 ニヤケて、笑って、笑顔で。


 彼女の目には、徐々に、確実に、今までになかったモノが、灯火として。


 激情を通り越した無表情。

 彼女はさァ、どうかるのかなぁ。


「ほぉら、見てごらん。キミのだーいすきなお兄ちゃんっ、まだ微かに息をしているよ? 」


 壊れる程の激情を、兄というスパイスで、苛烈なモノとする。


「早く、助けないと! キミの手で、キミ自身が!」


 聞こえてくる呼吸の音が、速度を上げる。


 表情は、憎悪だけに塗り広げられた、恐ろしいものに!


「キミを守ってくれる彼は、頼りになる大好きなお兄ちゃんはさァ……。──ボクが、壊しちゃった☆」


──少女の喉が、激しく震えている。

 声にならない、音。


 ただ、歯を食いしばる音だけが漏れた。


 うん……! 声にもならない程に、憎悪に満ちた、憎悪が満ち足りてしまった、美しい鳴き声だ。



 …………。


 うん、これがいい。ここでいいね。


「……せいぜい、面白くなっておくれよ?」


 そう呟いて、流し込む。


「これは、ボクからキミに送る、プレゼント(呪い)さ。フハハッ♪」


「キミのお兄ちゃんは……」


 倒れ伏す少年を一瞥して。


「まぁ、どう転ぶかは、キミ次第だね」


 ボクへ向けて、自分の命すらも顧みないほどに憎悪を見せた少女は、呆気なく、倒れ伏せた。


 固く繋がれた兄妹の絆から、守ってくれる存在を奪われ、憎悪に塗れた、守られる側だった存在。


 これだ……これがいい。これが、最高に成る。


 足元には、倒れ伏した二人の子供。


 そこでボクは、ただ笑う。

 愉快に、楽しそうに。


 フハハ♪


 さァて?


 どんな怪物に、なってくれるのかなァ?



────────────────────

イベント名:『作られた物語』


ここまでで一区切りとなります。

次回からは、少々閑話を挟んだ後……となります。


感想コメント、評価、等など。

どうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m


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