ep24:鮮やかな憧れ
耳元で、常に鳴き声が鳴り響く。
呻き声が、鳴き声が、叫び声が、雄叫びが。
傷が増えていく。
嬲られ、引っ掻かれ、噛まれる。
湿っぽい息には濁りが見え、身体の動きが悪くなっていくのを感じる。
終わらない戦いが、着々とボクの身体と心を──
──いや、結局はそれだけだ。
それだけに過ぎないのだ。
あの日見た赤色とは、程遠い。
単体での突出した力もなければ、自己を犠牲にしてまで飛びかかってくる勇気もなく、腰の引けた奴らばかりだ。
あの赤鉄とは、程遠い。
強さも恐怖も……そして──楽しさも。
心が冷めていくのがわかる。
口元の筋肉が凝り固まっていく。
危機的状況のはずなのに、頭は冷えきっていて、考える暇すらある。
……本当に、つまらない。
特に言葉を発したつもりはない。
けれど、魔物たちはボクに向けて、ナニカ恐ろしいモノでも見るような目を向けている。
…………。
……ふむ、こっちの方が面白いか。
──面白くなるモノがいないのなら、面白くしてしまえばいい。
そうして、魔力の糸でそこら辺に散らばった魔物死体から、石を抜き取って、ついでに肉も抉り取り、砕いて、呑み込む。
「ゴポォッ……っ」
強烈な匂い、苦味、毒、魔力。
身体の中で入り交じり、体内から、血が漏れ出す。
が。
まぁ、そんなのはどうでもいいことだ。
俯いた姿勢を正し、武器をしまい、手のひらを指の先まで力を込めて、広げる。
「……はぁ、残念だよ」
指先から、か細い魔力の糸が垂れていく。
「キミたちは、つまらなかった」
ゴブリンたちは動かない。
いや、動けないのかもしれない。
「悲しいものだね」
──そうして、凝り固まった口元を無理やり歪め、ニンマリと。
魔力の糸が、指先から流れ出し、絡まり合い、渦巻いて、ぐるぐると。
頭上を魔力が蠢いて。
「さぁて、今度はボクが、蹂躙してみせようか」
雑魚ども相手に、カッコつけて、そう言い放つ。
そんなボクは、たぶん愚かなのだろう。
◇◆◇
魔力の糸は、いわばただの小手先に過ぎないものだ。
魔力を細く出して、糸のようにしならせて、細く保ち、魔力が少なくても扱える形状。
魔力であるが故、本来の糸では出来ないような動きや、切断力や温度、硬度、弾性とか……まぁ、とにかく色々できるのだ。
正直、漫画とかアニメとかでよくあるファイヤーボールとか、ああ言うのは必要な魔力の量? みたいのが多くて、ボクの魔力だと2発くらい打ったら無くなって、底を尽きてしまう。
ほんと、世知辛い世の中だよ。
皮膚から、肉、神経、骨、臓物と、切り取られていく目の前の魔物たちを視界に、そんな事を考える。
魔力が少ないとはいえ、一点に集めれば、案外それ相応の威力にはなるモノらしい。
──頭上から、オークが身投げをするように、飛び込んでくる。
重々しい、地鳴りのような踏み込み。
横にいたコボルトの頭蓋を咄嗟に掴み、盾にする。
そのままオークの首元に牙を押し当る。
砕けるような音だ。
血飛沫が、ボクを濡らす。
目を横に逸らせば、群がってきているのはゴブリン共。
──次の瞬間、姿勢を屈め、腕を横振り。
魔力の糸が、足を切る。
ゴブリン共は怯み、足を止めた。
その間に正面のゴブリン共の間に飛び込み、糸を円を描く様に遠くまで投げ飛ばし、絞めあげ、密集させる。
糸が円を描き、逃げ場を塞ぐ。
乱戦に持ち込んでいき、ボクがオークの死体に寝っ転がっているだけで、魔物たちは、勝手に怪我をしていた。
……リズムゲームみたいだ。
タイミング良くボクが踊れば、魔物たちは勝手に致命傷を負っていく。
あとは軽く殴るか糸で切るかすれば、もう終わり。
蹂躙、とは言ったものの、いかんせん見栄えするような技、ボク持ってないんだよねぇ。
悲しくなり、隣にいたゴブリンを肩パンした。
魔力で強化してたせいか、ゴブリンの肩が消し飛んでしまった。
ボクは笑顔になった。
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ep24:鮮やかな憧れ




