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ダンジョン が あらわれた  作者: 黒白のアレ。
PHASE2『大厄災』
21/68

ep19:ポストアポカリプスは古い。


 何度か弄ってみて分かった。

〈魔力〉ってのは、どうやらエネルギーみたいなモノらしい。


 別に、詳しく調べる気はない。

 どうせそのうち、あの老害が勝手に研究するだろうし。

 その時、結果だけ聞けばいい。


 体感としては──

 重さのない、自由に操れる液体。

 そんな感じだ。


 最初に熱く感じたのは、

 ボクがそう思い込んでいたからかな。


 ……この眼みたいに。


 そう考え、濁りを映す瞳を指先でなぞる。


 瓦礫の街には、色とりどりの濁りが漂っていた。



◇◆◇



 大股で、ふらふらと瓦礫の通りを歩く。


 人も、魔物も、既に過ぎ去って、この周辺には、誰もいない。

 建物だけがあって、人の気配は一つもない。

 辺りは、シーンと静まり返っている。


 見上げれば、夕暮れの空。

 紫色の雲がゆっくり流れている。


 こういうの、なんて言うのかな。

 ポストアポカリプス、とでも言うのだろうか。


 ……ゾンビなんて居ないけど。


 集団からはぐれたらしい魔物の影が、視界の端を横切る。


 緑……いや、抹茶色かな。

 身長は、1mちょっとの、子供のような大きさ。

 手には……釘バットだ。


 殺意高いねぇ、フハハッ。


 ヨダレを垂らしながら近寄って来るのは、3匹。


 まぁ、RPGとかではお馴染みの、ゴブリンくんだ。


──ぐぅ。


 腹部から、空腹を知らせる音が鳴る。


 ……そういえば、今日はまだ、何も食べてなかったね。

 視界の真ん中に、3匹のゴブリンを捉える。


 今も尚、ヨダレをべちゃべちゃと垂らしながら、先の鋭い舌を出して、頭の悪そうな走り方で向かってきている。


 ふふっ、無様だなぁ。まるでこの前の僕みたいだ。



 ……回転寿司を思い出した。

 レーンに乗って、皿が流れてくるアレ。


 〈魔力〉を体内に巡らせる。

 筋肉は粘り強く。

 手のひらは、硬質に。



──この瞬間、ボクはモンスターハンターになった。


 振り抜いた手が、赤く染まる。


 魔物は泣いていた。

 ゴブリンでも、涙は出るらしい。



◇◆◇



 幸いな事に、〈肉〉はゲット出来た。


 ……もう既に物言わぬ肉になったのだから、〈肉〉で間違いないだろう。


 気づいた時には、辺りはもう真っ暗。

 空を見上げれば、黒色の雲の隙間から、白い球体が姿を覗かせている。


 30日ぶりくらいの月だね。

 手を振って、こんにちは!とでも言っておこうか。


 ……こんな世界になったのに、返事は返ってこない。


 まっ、どうでもいいや。


 魔力とか魔法と聞くと、思いつくものがある。


 〈ファイヤーボール〉だ。

 ボクは水魔法で安全に行くより、初っ端から飛ばすタイプなのだ。



 …………。


 ゴブリンは燃えカスになった。

 手の皮が焼けこげた。


 その場には、変な石ころだけが残る。


「……なんてクソみたいな世界なんだ、フハハッ」


 腹の虫が大声で鳴いている。

 いつか必ず、火力の調整を覚えようと、そう心に決めた。


 そう、"いつか"ね。



◇◆◇



 こういう、世界が崩壊していくような感じの、ポストアポカリプスの世界では、定番な事があると思う。


 近寄ってくる魔物の首を捩じ切りながら、ぼんやりと、そんな思考をする。

 魔物が落とす石ころは拾わない事にした。


 あれは魔物の血の匂いがして臭い。

 そして嵩張る。とても邪魔だ。

 なので、その場でぶっ壊すか捨てるかにしている。


 目的地である、明かりのない建物に向かって、歩を進める。

 ポストアポカリプスの定番と言えば、やっぱり無人のコンビニでの食料調達だろう。


 店の自動ドアを潜る。

 そうすると、聞き慣れた電子音が響いて──




『いらっしゃいませ』


 会計用の電子パネルから、そんな音がした。


 顔に手を置き、膝から崩れ落ちる。


「この世界はクソだ」


 ポストアポカリプスの全盛は、2000年代初頭。

 そこから更に技術の発展を迎えたのが、この世界だ。



 ……今時、有人のコンビニの方が、貴重だったのだ。


 焼け焦げた方の手に〈魔力〉纏い、帯電させる。


 クソみたいな法治国家の産物め、くたばれ。

 

──次の瞬間、会計パネルの電子音が掻き消える。


 ボクはただ、焦げ焦げの右手を床に翳しただけだ。

 だから、ボクは悪くない。


 フハハ♪



────────────────────

ep19:ポストアポカリプスは古い。


明日やろうは馬鹿野郎、というやつです。


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