ep20:情熱的な目覚まし。
真っ暗なコンビニ。
その中で、指先に火を灯しながら、のんびりと。
ボクと同じ事を考える人は多いらしく、カップ麺とか、おにぎりとか、弁当とか。
缶詰の棚なんかは、もうすっからかんだ。
──そんな中、一つだけ残っているものがある。
おにぎりの棚にはそれだけが残り、弁当の棚にも同じ物だけが捨て置かれ、他は全て盗られていた。
こんな時にも好き嫌いとか、彼等には盗みを働いている自覚がないのだろうか。
そうして、一種類だけ残ったおにぎりの包装を手に取る。
──梅干し。
おにぎりのラベルには、そう書いてあった。
ボクはそっと、そのおにぎりを棚に戻す。
弁当の棚には、弁当から取り出されたのであろう梅干しだけが、ポツンと捨て置かれていた。
……人類は、滅びるべくして滅びるのかもしれない。
愚かだな、人類。フハハ。
◇◆◇
──パチ、パチ
木の枝が火の粉に弾かれる、そんな音。
キャンプとかでよく聞くような、心地よい音だ。
……もっとも、ボクの心は今、最底辺まで落ちているけど。
割り箸で串刺しにした、焦げ目だらけの肉に齧り付く。
モシャモシャと、硬く筋張った食感は、もう、最悪だ。
「うん、とっても不味い! ねぇ、不味いよ、君の仲間!」
脚が切り取られ、動くことすらままならないゴブリンへ向けて。
不味いし、多少の毒もあるが、まぁ害になる程度のモノでも無いし、ゴブリンの肉を焼肉にして、齧り付く。
クソまずい。それに加え変な匂いまでする。
文句を垂れ流しつつも、焦げ茶色の塊を喰らう。
外で焚き火をしても、全くと言っていいほどに、魔物達は近寄らない。
そもそも、この周辺には、もはや魔物など存在しない。
山のように積み上がった死肉共を椅子にして、不味い肉を食す。
こんなにも不味いと、食材への感謝、なんて言ってられないね。
コンビニの中に調味料が残ってなかったら……そう考えるだけで、身の毛がよだつ。
動けないゴブリンくんにも、食事を与えてあげた。
彼の涙は、とうに枯れていた。
そんなゴブリンを横に、いい加減眠たくなったので、ボクは寝る。
レベルアップなんて、もう忘れていた。
◇◆◇
「───」
意識が、ぼんやりとしている。
息が、出来ない。
力が、抜けていく。
今にも眠りに落ちてしまいそうな瞼を無理やりこじ開けると、そこにはゴブリンくんが。
首元には、ナニカに掴まれているような感触。
首から魔力を出し、ゴブリンの身体を吹き飛ばして、起き上がる。
何も手のひらからしか出せない訳ではないのだよ。
塞き止められていた気道が、血流が、正常に戻っていくのを感じる。
吹き飛ばされ、瓦礫へと打ち付けられたゴブリンくんは、憎悪の目をボクに向けて、爪をコンクリートに突き立てて、もどかしいその気持ちを表すように、指の間から血を流している。
ふふっ。赤い色の、人間と同じような、そんな血だ。
「いやァ、ありがとう! ゴブリンくん。ボクの目を覚まそうとしてくれたのかな? いい朝だね!」
死肉の山のてっぺんから、見下ろすように。
手のひらを額につけて、清々しい顔で。
「今日は、いい天気だねェ!」
重厚な雲。
太陽の遮られた曇天を背景に、ニヤニヤと笑いながらゴブリンくんへと喋りかける。
魔物は、感情を持っていた。
現実になった非現実は、非現実だった時よりも、楽しさを増していた。
また、一日が始まる。
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ep20:情熱的な目覚まし。
ダンジョンから生まれた魔物って、同じパターンでしか行動しない、みたいことありますよね。




