転移の先で
「えっと、す、すんませ」
「破魔」
「うぁっ!?ん?なんともねぇ?ってちょちょちょっ」
状況が意味わからなすぎてとりあえず説明頂こうかと声を掛けようとしたら不意に破魔をぶつけられるというイジメである。だが、感覚的には特に異常もなく、賢者は俺の手首を掴んで部屋の奥に向かって歩き始めた。
が、部屋中が本だらけで足の踏み場もない。いや、最早本の上に立っている状態なんだが、なんだろうかここ。賢者のプライベートルーム的なところか?
「あの、何処に向かってるんですかねぇ!?」
「黙っていろ。すぐに着く」
「つか、掴むなって、俺自分で歩くから!?」
ぱっと実にあっさりと手を離され、その場でコケる。
「いきなし離すなよ」
「ふん」
インディスティンもミスリルソードもあるし、不意を突くなら今かなーとも思うが、この足場で俺がコイツを倒せるかが不安だ。シュカと俺とクインスで漸く戦えていたというのに、俺一人か……。いや、呼べばいいのか!
「サモン、シュ「無駄だ。貴様を破魔で包んだ。マナを使った物は何一つとして使えないと思え」ええー」
「ここだ。……リーヌ。開けてくれ。候補者が見つかった」
「み、見つかったの!?」
ちょっと進んだ所で賢者が本棚を前に声を掛ける。んで、候補者という言葉に首を傾げていると本棚がズズズと、本を落としながらズレていく。
「ミュラ、おかえりなさい!」
「ただいま、リーヌ。いきなりですまないが、マナを分けてくれないか、予想以上に被弾してしまった」
「わかった。手を」
「あぁ」
「私は貴方の」
「私は君の」
「「マナトランスファー」」
「おーおー。仲の良いことで」
俺を前に、白い髪に青い目、賢者と同じような白ローブのぱっと見中学生くらいの少女が、賢者と手を繋いで、魔法を発動させた。
数秒すると、二人は手を離し、息を吐いた。
「で、この子が?」
「あぁ」
「俺君にこの子って呼ばれる程の歳じゃないと思うんだけど」
「ふぅん。どれどれ」
少女は俺の周りをぐるぐる回りながら、じろじろと見ていく。
「あ、あんまりじろじろ見んじゃねえよ?は、恥ずかしいだろ」
「……」
「ど、どうしたんだよ」
周りを歩くのをやめ、ジッと見つめる少女に対して思わず身動ぎしながら問うと、興味を無くしたように首を振り、少女は部屋の奥へと戻っていく。
「リーヌ」
それを賢者……ミュラが呼び止め、頭を撫でながら、胸に抱いた。
「また、ハズレよ……」
「すまない、君の希望を見付けられなくて」
「……」
何故かハズレと言われ、更に二人でいちゃいちゃされると悲しくなってくるんだけど。
「……だが、……を無傷で……生き残ったという……。まだ、なんとかできるかもしれない」
「……そう、なの……なら……」
「あのー小声になって話されると気になるっていうかー」
「……」
「試してみよう」
「ん?何を……ッ!?」
ミュラはおもむろに少女リーヌの胸に手を当て、小さく呟く。
すると、リーヌの身体が淡い青色の光に包まれ、その身を青い水晶のような物が付いた杖へと変えた。
「ってなんだそりゃあ!?」
「貴様に話す必要は感じられないな。リーヌ」
『ソウルドレイン!!』
「うわぁ!?」
杖から青い光が真っ直ぐ俺に向かって放たれ、直前でパキンッと音を立てて、砕け散ってしまった。
『防がれた!?』
「何故だ!?やはり魂魔法までは封じられないのか!?」
「魂魔法?」
『我々の使う、スピリットゴーストなどの事だよカズマ君』
声が、響く。その声は最近よく聞く阿呆の声。
『誰!?』
それは、
『君らの求める魂魔法最期の使い手、レドウ・ブラッドさ!!この身は朽ち果て、既に魂だけしか残ってはいないがね』
「したら、また防いでくれたのか」
『君が死んでしまうと、やはりユティが悲しむのでね。私が出来る範囲で幻惑魔法や精神魔法は弾くさ』
「おおーレドウイケメンだわー」
『そんな理由で……』
てか、俺今即死レベルの魔法を当てられそうだったってことか?
「おっそろしいな!?」
「何の色も持たない男のくせに……」
「い、色?た、多分俺は赤だぜ!?燃えるような愛の情熱を持つ赤!!」
『いいえ、そんな筈ない。貴方は考えているだけで想ってはいない。私にはそれがわかるの』
「更に言えばセイグリッドフレイムを無傷で生き残ったことが、色を持たない魂を持つ事を決定付ける」
「な、何を言ってんだよ。しかも別に色が無いくらい問題ないだろうが」
「いや、仮に貴様一人だけの話なら有ろうと無かろうと問題はない。だが私達にとって必要不可欠な魂の像なのだ」
「だから、手に入れる為に殺す、のか?」
「あぁ。我々賢者の一族、いや、人族の悲願の為にもな」
『だがそのような事は私が許さない』
「レドウ……」
そもそもこいつら、俺に心が無いって言っているようなもんじゃねぇかよ。そんなこと、あるわけねぇ、じゃねぇか。
ん!?
「さて、カズマ君。作戦会議だ」
「っとと、そろそろこの感覚にも慣れてきたぜ。時間を止めたのか」
「あぁ。本当はもっと早く発動させたかったのだがな、あの破魔というスキルの影響が完全になくなるまで時間がかかってしまったのだよ。すまないね」
「影響が完全になくなるまでってこたぁ、解けてるのか?」
「そのようだね。あの破魔というスキルにも制約はあるようだし、その話も含めて早急に話そうか。彼女がこの空間を侵食する前に」
「リーヌってやつがなんかやってんのか」
「厄介な物だよアレは。インテリジェンスアイテムだろうが、果たしてその枠に当てはめておいていいものか。だがそれは、今ここに姿を見せていないユティが妨害している」
「ユティか。頼もしいな」
敵の時は恐怖しかなかったがな!
「時間も無い。要点を話して、やることを説明しよう」
「頼む」
レドウは一度咳払いすると、わざわざスピリットゴーストを発動させて、ミュラを模したものと、俺を模したものをその場に発生させ、部屋の様相も隠し部屋と同じものに変えて話し出す。
「まず、カズマ君に掛けられた破魔が外された理由を話そうか」
「あぁ」
「あの破魔というのは、マナを分解させるスキルで、範囲や対象を指定できるようだ。代わりに対象を決めた場合、マナを使った技の全ては破魔で散ってしまう。代わりに対象はマナを使用する何もかもが使えなくなる。また王都の前の戦いで使っていたのは範囲を指定する方で、恐らく、自分の周りだけを破魔で囲っていたのだろうな。自分の身を対象にしたのならば、手元に展開していた魔法陣も消えてしまっていただろうからな」
「よ、よく見えてるんだな。というか、お前とこんな真面目な会話ができるとは思わなかったわ」
「……続けるよ?」
「す、すまん」
「そして、破魔は使用にタイムラグや、クールタイムはないな。だが消せる範囲に限界はある。まずそれを表してみよう」
レドウが手を振るとミュラが破魔を使う構えをする。
「発動した時の破魔の動きだ。まず、対象に破魔をかける時」
ミュラが俺に向かって破魔を打ち出し、魔弾のように俺に到達すると、パァッと弾けて、吸い付くように俺を包み込む。
「次に範囲。クインス君のオリジナル魔法や、ミュラ自身が浮かばせていた魔法を消した破魔」
スピリットゴーストで、クインスやシュカを作り出し、再度空間を作り変えてその状況を示すレドウ。
レドウが指示すると、先程の戦闘のように魔法が展開され、ミュラが破魔を使う。
「……おおう」
破魔はミュラに触れない程度に、バリアのように拡がり、それに触れた魔法が悉く消え去っていく。
その際、やはりミュラの手元の魔法陣は消え去っていない。
「そして、ミュラの使う破魔の弱点を説明するとしようか」
「そんなんあんの?」
「カズマ君。彼が破魔を使う時、いつもどうしていたかい?」
「……っと、破魔を使う相手に向かって、魔弾放つみたいに手を向ける……でいいよな?間違いでないよな?」
「そうだ。だがあれは恐らく必要のないモーションだ。いざとなれば全くの無挙動で使えるのだろう」
「じゃあなんで、いちいち構えるんだ?」
「そうしないと破魔が使えないと思わせる為だ。そして、破魔を使う条件は、」
「条件は?」
「必ず対象を視界に入れる事だ」
……。
「簡単過ぎじゃね」
「そうだな。だが、弱点にもなりうる」
「つーと?」
「破魔というスキルは、直接的な魔法、つまりファイアーボールなどの魔法を消し飛ばす事はできるが、それによって巻き起こる衝撃などは殺せない。それを利用するんだ」
「成る程な。でもさ、俺今魔法使えなくね?」
「いいや?使えるよ。今、破魔の効果がなくなったからこそ、我々がここで話せているのだからね」
「おおっそうか!」
と、俺が喜ぶと、レドウが残念そうに首を横に振る。
「だが、正直カズマ君の魔法では心許ない」
「ズバッと言うな!わかるけど」
ここで名案とばかりに、俺を指差しウインクしながら語る。うんおっさんがそれやるとキモいだけだぞ。
「だから、召喚するんだ。アリス君を」
「時間足りるか?」
「召喚陣を破魔で破壊された場合は、どこでもない異空間を彷徨う可能性が高いね。だけど、君がここで死んだら彼女はどうなると思う?」
「……どうなるんだ」
「存在意義を無くしてあの子は、消えてしまうかもしれないね。いや、勿論、主人を見限った妖精達のように、他の主人を見つけられるかもしれない」
「……」
「と、まぁ考えても無駄な事だがね」
「無駄な事っていうことないだろう」
「さて、ここまで話してきたが、君は今新しいスキルを手に入れているだろう?ここまで使ってはいないが」
「なんで知ってんだよ」
「スキルは、魂に刻まれる。私は魂を見る事のできるスキルがある。だからね。特にカズマ君のは見易いし」
「プライバシーガッツリ侵害されてない!?」
「で、だ。君のスキル、一心同体。本来は自分と他人の身を合体させ、一時的に進化するものなのだが、それを私に使ってはみないか?君はどうやらアリス君としたいという意思が見え隠れするが」
「やめてぇー!!思春期なんだぁ!そのくらい考えたっていいだろう!?」
好きな子と合体だぞ!!合体!!絵面は大分違うけど合体するんだぞ!
というかレドウと合体て……。
「そう言いながらあからさまに嫌な顔をするね君」
「そりゃそうだろ。いい歳した中年のおっさんと合体とか。俺マーライオンになっちまうよ」
「まーらいおん……?が、なんだかわからないが、私とは魂が交わるだけだから良いだろう」
「なんかもっとやだ!!」
『ごめん、二人共』
「ユティ!?」
『もう無理ー』
ユティの弱々しい声が響くと同時に、世界が崩壊し、現実に引き戻された。
『中々に手こずらせられたわ』
「今、何か発動した気配があったが……」
『時空魔法の一種ね。魂の書を彼が持っていたみたい』
「なるほど、その中の者が、魂魔法の使い手だったか」
『ええ。珍しい事に、中に二人いたみたい』
「ふむ」
「おいおい俺たちを蚊帳の外に話してんじゃねぇよ。人のプライバシー空間崩しやがって。覚悟しやがれ」
「君がな。リーヌと共にいる私に勝てる者などそういない」
『さて、それはどうかな』
「正直かなり嫌っつか初めてはアリスとが良かったが、初めてはお前にくれてやる!」
『その言い方だと外聞が酷いからやめてくれ』
「えっと、詠唱はと」
『先に調べてから言いたまえ』
「特に無し!ならば、やるぞレドウ!」
『あぁ。いつでもやりたまえ』
「一心同体ッ!!」
『他の言い方は思いつかなかったのか』
レドウの小言が多いが、無事発動し、俺の身体を半透明な光と、白い光がぐるぐると俺を包み込む。
ミュラ達はこのスキルを知っているのか、合体を防ごうと魔法を発動したり、破魔を使うが、全てが無効化され、俺の視界も完全に塞がれた。
「ぐっ。痛え……なんだ、これ」
『これは、私の魂が君と交わり、身体が作り変えられる際に発生する、痛み。代償だと思いたまえ。勿論私も痛い。この際だ、慣れておくといい。彼女の前で格好もつくだろう」
「おう、ってか。あぁ。身体はもう変化し終えたな。大した変わりがなかったのだろう」
「やべぇわ、俺が喋ってんのに、私も話せるというのは中々面白うざいな。これから完全に交わり、私と君の思考まで、同じになる」
光が解けて、驚きを隠せないミュラ達を見据える。
「あぁ、素晴らしい。俺はまた、生を感じられるのだな」
「誰だ、貴様は」
「俺は、レスカ」
これが、他人と同化するという事か。興味深いな。意思が重なり、思考が三人分加速……三人?そうか。ユティも混ざったのか。
「一心同体というより三位一体ではないか」
「何を一人でぶつぶつと。リーヌ!もうこの様になってしまえば一度倒すしかないぞ」
『わかってるわ。まずは場所を変えさせてもらうわ。我が願うは異次元の扉!ディメンションゲート!!』
リーヌが発動させた魔法で空間が歪み、全く別の空間へと俺たちは移動する。
「っと」
「本を燃やすような心配も必要無くなったからな。一瞬で終わらせてもらおう!」
ミュラはすぐさま両手に様々な色の魔法陣を複数展開して、魔法を連射し始める。
それと同時進行しながらリーヌが巨大な魔法陣をミュラを中心に一瞬で構築する。
『私達の使命のために、その魂、頂くわ!』
「さて、ここまで無言で見守ったわけだが、そろそろ俺も戦うとしようかね」
勿論無言ではあるが、ミュラの魔法は結界で軽く防いでいる。普段とは違って意思の強さも三人分。結界がそう破れることもなく、傍観できるわけだが。
『命を狩りて、かの者の魂を奪い取れ!ソウルイーター!』
リーヌの魔法が完成し、魔法陣から巨大且つ禍々しい紫の光を放つ大鎌を持った、死神が姿を現した。
「あまり俺にも時間がない。魂魔法の真髄を見せてやろう」
俺が魂魔法を発動しようと詠唱を始めると、ミュラが龍を模した魔法を発動し、マナを高めていく。
「その間も無く消えろ!ドラゴンブレス!!」
死神がドラゴンブレスの妨げにならないように、ゆらゆらと動き始める。
「まずは……スピリットアーマー」
ドラゴンブレスが到達する直前に、魂の鎧が、俺を包み込み、ドラゴンブレスを防ぐ。
「ふむ……色は大体銀なのか、所々紅色の装飾が入るくらいか」
『魂で身体を包むなんて馬鹿ね!私のソウルイーターは、魂を奪う力に特化しているというのに』
「それはフラグというものだ。スピリットブレイド」
何かが減ったような、心に穴が空いたような感覚を残して、真っ白な刀が姿を現わす。
「はぁぁ!!」
『っ!?』
俺はそれを結界で包みつつ、死神の鎌を弾き飛ばし、袈裟斬りに斬り伏せる。
「うむ。まずまずの斬れ味だな」
雰囲気任せに刀を振って、振り心地を確認し、死神をあっさりと倒され、唖然としつつも魔法を乱射するミュラに対して疾駆する。
「破魔!」
小さなスピリットゴーストを飛ばして、破魔を相殺し、魔弾を見て避けながら、疾駆する。
『近付かないで!!』
リーヌが暴風を発生させ、俺を吹き飛ばし、冷静さを取り戻したミュラがリーヌを取って、短距離の転移と跳脚を駆使して、何故か俺へと接近して、杖を振る。
『オフェンシブ』
「ほう」
杖にマナが満たされ、淡い赤色の剣のような形を表し、更にミュラ自身も赤く燃えるような色の闘気で包まれる。そしてミュラが杖を振ると、剣先が鞭のように伸びて、俺を襲う。それを的確に刀で防ぎ、鍔迫り合いに持ち込む。
「しかしこれは、俺の持つ知識とはまた違った賢者だな」
「杖持って後ろで魔法撃ってるだけが賢者だ、と!?」
レドウとカズマだけなら負けていた膂力を、ユティが補強し、ミュラを力任せに吹き飛ばし、スピリットゴーストを複数放って、ミュラに追い打ちをかける。
「おいおい……圧倒的ではないか」
更にスピリットゴーストはいつもの人魂のような形ではなく、しっかりと人の姿をもたせている。一人はユティ、もといスカーレットのエニグマ装備バージョン。それとレドウもとい、ブラッドリッチ。そして本当に煽りくらいの影響しかないがカズマ。
「厄介な……」
「スピリットアーツ。スカーレット」
『ディフェンシブ!!』
刀が変質し、ククリナイフに。二つに分裂したところで、俺は、駆けた。
ミュラに到達する直前に、杖のマナが盾に変化し、周囲に青白い小さな盾が浮遊する。そして赤色の闘気が青色の闘気となって、ミュラを再度包んだ。
「いくぞ、小童」
「貴様に、小童など、と!!」
拳打拳打斬撃斬撃拳打斬撃拳打斬撃斬撃拳打拳打斬撃斬撃拳打斬撃拳打斬撃拳打斬撃拳打斬撃拳打斬撃!!
防ぐ盾が無くなるまで!拳に闘気を纏わせ、そのままククリナイフにも浸透させ、斬って斬って殴って斬って
「私から離れろぉ!」
「むっ」
ミュラからマナが噴きだし、俺やゴーストを吹き飛ばす。
「先程が何もない魂だったからこそ、燃えなかったのなら、貴様らの混ざりきった魂なら、よく燃えることだろう……リーヌ!!」
『詠唱は終わらしてるわ!すぐやれる!』
「いくぞ、『セイグリッドフレイムッ!!』」
ミュラの周りにいたゴーストは一瞬で消しとばされ、青白い炎がミュラを中心に大きく広がっていく。
「空間を狭めろ」
『やってる』
異空間全体がジリジリと小さくなり、青白い炎が徐々に広がっていく。
「ふむ。スピリットゴーストでは耐久度に欠け、攻勢に出ようにも、触れたら俺の身が危険か。ならば結界を使って」
突き抜ける。
俺は結界を四角錐型に変形させ頂点を前方に全速力で駆け抜けた。
「何ッ?!」
「ぉぉおおおおおおおお!!」
強化された結界でさえ、ピキピキと音を立てて砕けようとしていることに冷や汗をかくが、それでも俺がミュラに斬りかかる方が、早く、
「せぇやぁ!!」
『重ねて、防ぐ!』
結界を、変化させ、流れるように、盾を破壊し、
「マズい」
『私を盾に!』
「だぁっしゃあらぁ!!」
最後のリーヌごと、ミュラを一閃する。
そして、ミュラは、血を吐きながら静かに倒れた。
遅れて、杖の半ばから真っ二つに折れたリーヌが落下する。
「コフッ……」
『嘘……』
「俺の勝ち、だな。鮮やかに帰らせてもらうぜ」
念の為に魂魔法は解除せずに入り口を探し……振り返る。
「どう帰るんだこれ」
『帰る方法なんて、ないわ』
「えっ」
思考加速を利用して考える。考える。考える。
「えっ」
帰れ、ない。次元の壁なんてどう越すよ。
「あれ、しかも俺、まさか」
『一心同体、解けたようだな』
『あーあーお兄ちゃん。負けちゃった』
「ま、まだ負けてねぇよ!?あいつだって腹斬って、杖だって斬ったし、ジリ貧だぜ!?」
『前をしっかりと見るといい』
「へっ?」
レドウに言われるがまま前を見ると……。
「妙なスキルは解けたようだな。全く、手こずらせてくれる……」
傷を治癒させて、立ち上がるミュラがいた。
「リーヌ、大事ないか?」
『大丈夫。ちょっと焦ったけど』
「あれ、ノーダメ?いや、ダメージはあったけど回復しちゃってほぼオールクリア的な?」
『負け……か。私達もマナが全くない』
「てか、俺も、なんか頭クラクラしてきたんだけど」
『あのスキルは私達全員のマナを使うらしい。三人分であったが故に、ああも長く在れたのだろうがな』
「そのまま少し眠るといい」
「えっ待っ」
そして、俺の意識は、何時の間にか近づいていたミュラの杖撃であっさりと落ちた。
……少々、危なかったな。私がマナ切れを待たなければならない者になるとは。
恐らく中に潜む魂と混ざり合ったのだろうが……。あのスキル……何故あんな者が使えるのかもわからないが。
「リーヌ。無理をさせてすまない」
『いいのよ。彼より、中の魂が強かっただけのことだもの』
「まさかあそこまで強くなるとは思わなかったがな。魂魔法も使いこなしていたようだ。そして何よりあのレベル」
『そうね……』
解析によって叩き出された結果は、181。人類の第一の壁を大きく越え、第二の壁間近までのレベルになっていた。ステータスも、馬鹿にできない。私程ではないが、それでもこの国で勝てる者は数人としかいなかったであろう。
顔そのものは大して変わらなかったが……黒髪は赤髪に変わり、後ろ髪が肩にかかる程度まで伸び、瞳の色は紫に。装備も背丈も大して変わらなかったが、ただただ異質な感覚がした。交わってはならないものが交わってしまったような。
「とにかく、リーヌ。彼が起きないうちに」
『ええ。取っておきましょうか。ソウルドレイン』
リーヌのソウルドレインが、彼に当たると、彼の心臓部分から白い人魂が抜き出され、そのまま、リーヌに吸収された。
『……少しだけ、残ったわ』
「魂が、か?」
『ええ。ほんの少し、他と交わらずに、色のある魂が』
「そうか……リーヌ」
『何?』
「私はその残った魂がどうなるか、見てみたい」
『じゃあどうするの?』
「一時的にその魂も抜いて、スキルを封印しよう」
『わかった』
「あとは任せたよ?」
『任せて』
私はリーヌに作業を任せて、異空間から元の屋敷に移動した。




