ジオって本当に強かったんだな
お久しぶりです。
あけましておめでとうございます。
気付いたら年越してました。
『ご主人様から指示された最初の獲物だ。簡単に死なないでおくれよ?』
「あぁ?!」
僕は、アンデッド達の攻撃も、龍達の衝突で起こる衝撃波も、全てを物ともせずに念話で話ながらその獲物へ向かって飛びかかった。
ーーあら、空ぶっちゃったか。
獲物は自らの影へと飛び込み、移動していたようだ。便利だなー。
「んだてめぇ。カズマの新しいペットか?」
『ペット……と言えばペットかな!!』
周りに氷柱を形成して、獲物に向かって撃ち出すと、それを獲物が出現させた触手の様にうねる黒手が防ぐ。
『どこまで防げるかな』
氷柱を射出しながら、足元から徐々に氷を這わし、ゆっくりと歩く。
「舐めるなよ犬コロが。俺はなぁ、猫派なんだよ!!湾曲せし黒炎!!」
獲物がちゃちい炎を発生させるも、僕が発生させた吹雪で炎をかき消した。
「闇よ貫けぇ!シャドウエッジ!!」
『グレードを上げようか。アイススピア』
今までがただの氷柱を射出するものなら、今回のは三メートル程の大きな槍を先程以上の速度且つ威力で撃ち出すもの。それを正確にシャドウエッジに当てて相殺する。
「なら、滅殺せよ、ダークエナジー!」
『アイススピア』
これも、相殺。
「あぁっムカつくなぁおい!」
『これだけ?ほんとに?』
「今のとっておきだしてやらぁ!」
『させると思う?』
僕を前に詠唱しだす獲物に特大のアイススピアを数発撃ち出す。
それを横から這い出てきたゾンビに受け止められ、黒いオーラにマナを吸い尽くされてしまった。
「深淵の淵から、負の感情を解き放てぇ!!マーリス!」
『ま、僕に勝てるとは思えないけどね』
獲物の目の前の空間が歪み、黒い煙と共に、口元以外の全てを包帯でぐるぐる巻きにされ、所々から黒い髪がはみ出ている少女が出現した。
「あ、ぁぁ、アァぁ」
『っ!?』
彼女が声を発し始めると同時に、全身に悪寒が生じ、僕の身体の力が抜けていく。
『それは、危ない物だね』
手遅れになる前に、氷柱を複数浮かべて射出する。
「黙ってさせると思うのかよ」
『邪魔だなぁ』
獲物から発生した、黒い靄に、それを全て包み込むようにして防がれてしまう。
「やっべぇ……」
『あれ、ご主人?』
振り返るとご主人が倒れ、ドラゴンゾンビがトドメをさそうと、手を振り上げていた。
『何やってるんだよっ』
「ァァァ……アァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
『うわっ』
包帯の少女が、この世の物とは思えない、叫び声を上げる。
すると、
「お、おい、マジかよ……」
『なに、これ、おかしすぎる』
僕だけではない、他の仲間まで片膝を着くまでに力を吸われている。
「ククク……さぁ歌えよ、マーリス。生きとし生けるもの全てに……死を、振りまくがいい」
「くっそ……幽静斬鬼龍も消えちまった……」
『う……あまり、調子に、乗らないでほしいな……』
「つか、ぎる達まで疲弊してんじゃねぇかよ……」
「それどころか、フィルまで、疲弊……はぁ、はぁ、して、ないか……?」
「そりゃあ、そうだ……生き物全てから、生命力を吸い上げる……能力をもつ、女だからな……これがなきゃ、良い、女……なんだが、なぁ」
「うっわマジキメェ」
「隊長本気で引いてますね」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「主、大丈夫か?死にそうじゃね?」
「カズマの体力は一際少ねえみてえだな。これは、勝負あったな……?何やってるそこの狼」
獲物が皆と話してくれてる間に静かに詠唱を済ませて発動する。
『フェンリルストーム』
「ぬぁっ!?」
僕を中心に、吹雪が巻き起こり、部屋全体を氷雪の嵐で飲み込む。
まぁぶっちゃけ魔法名も言わなくて良いんだけどね。
「さ、さぶ。オーラで軽減できるってこたぁ、全部マナで作ってんのか……末恐ろしいな」
『それだけじゃないよ。これは、僕達が僕達である為に、場を整える為の魔法。だから、ちゃんと戦うって事だね』
「あぁ?今までは何だったんだよ」
『今まではご主人が僕にくれた遊び道具で遊んでただけだからね』
「くっそ犬っころムカつくわ……つか、エナジードレイン解けて……マーリス!?」
「……ァ…………」
マーリスは声もほぼ出せずに凍りつき、その場に倒れてしまう。
「いつの間に……死龍ッ!?」
『さぁ、凍てつく吹雪よ、僕と相対する物を永遠の眠りへと誘いたまえ!エターナルブリザード!!』
「ぐぉおおおおおおおおおおお!?」
「す、すげぇけど、なんか聞いたこと、ある」
ご主人がなんか言ってるけどいいか。
「黒炎!黒手!シャトウエッジ!!ダークオーラ!!くっそがぁ!!」
『無駄だよ』
獲物が必死に魔法を放ち、吹雪を遠ざけているが、全ては無駄だ。僕の吹雪は、物の動きを停滞させ、凍結する。
「なら、ノワールディストラクション!!」
黒の魔法陣が浮かぶ……がそれすらも凍りつき、発動すらしなくなった。
「な、なんでだ、なんでだぁ!!吸収もできねぇ!ゾンビ共も動きゃしねぇ!くっそ……こんなやつ……なんでカズマなんかといるんだよ!!」
「「フィル様!!」」
『さぁね。悪あがきはもう終わりにして、死んでくれないかな?』
「くっ……そがぁ……!!エリエル、イザーラ……」
『ふふふ』
二人のメイドゾンビを抱き寄せると獲物は数秒俯き、両手をあげる。
「仕方ねぇ……キリエェッ!俺の負けだァ!」
『諦めるの?』
「降参だこーさん!だから吹雪を……止める気ねぇな!?」
『ないよ。降参と見せ掛けて、僕達を襲うかもしれない。不意打ちでご主人がサクッと殺されてしまうかもしれない。そんな可能性があるからにして、僕はこの吹雪を解くことはないよ』
「死ぬ!そろそろ死ぬぞ俺はァ!いや、マジで!」
「ジオ」
『いいの?』
「いいよ。なんだかんだで一度助けてもらってるわけだしな」
『わかった』
ふっと吹雪がやみ、ゾンビの氷像と生き残った僕達と、二人のメイドゾンビに抱きつかれている獲物が白い息をはきながら、その場に座り込むのを確認して、人化する。
「よっと」
「さっむ……」
「いやーお疲れ様ー」
「お疲れ。主、セイル大丈夫かー?シュカと俺は大丈夫だー」
「ええ。問題なく。疲れましたね」
「敵を前にして和むのはえーよ!!なんだてめぇらほんとに!!」
『そうですよー情けない男がコールしてきたと思ったら、もうのんびりしてるし。あなたも、ここのラスボス扱いだったのに、なんであっさり負けちゃうんですか全く』
「……テレビ?」
「ご主人。これ何?」
「なんだこれどーなってんだ?」
なんか薄い板のようなものを首のない騎士が運んで持ってきていた。
「この世界でテレビが見れるとは……」
「記録水晶みたいな物なのか?」
『ふふん。記録水晶よりもっと高価で、高級で、世界に二つとな「まぁいいから早よ出てこい。あるいは俺たちを出せ」』
「あっ」
「ぶはぁ!?テレビが!!」
ギルがそのテレビとやらを殴りつけ、画面を破壊していた。
ふと後ろを見ると地面に転移陣が浮かび上がり、輝くと共に召喚士の少女と、半透明な幼女が現れた。
「……なんでいきなり壊すんですかねぇ」
「フン」
「言っておきますけど、貴方方が帰るには、私が転送しないといけないんですからね?私の機嫌を損ねたらどうなるか……わかりますよね?」
「餓鬼。一言言っておく」
「……」
「ウチの国は正直、戦闘馬鹿ばっかだがな、白の龍の国は所謂頭脳派ってやつが多いんだわ」
「まぁそれくらいは知ってますよ。この数年で大分把握しましたから」
「いいや、把握してるなら、あのハクレンの前で魔法陣や、術式を見せることはしないだろう」
「私の術式は、そう簡単に解析できるものではありませんから」
なんかギルと召喚士の少女が難しい話してる。ちょっと眠いなぁ。
「ご主人。おんぶ」
「えっこの大事そうな場面で?」
「カズマー!」
「ユティ!?なんか半透明なってね!?大丈夫か!?」
「大丈夫じゃないから本出して!」
「おう」
半透明な幼女がご主人の取り出した本に手を乗せ、存在が吸い込まれるように消えるのを見ながら、僕は眠りについた。
「えっちょっほんとに寝るのか!?」
「おやすみぃ〜」
多分もう大丈夫だよね。寝よ寝よ〜。




