悪夢(誰にとってかは別にして)
「…………」
「…………ブフォッ」
『汚ッ?!主ぃ!!いきなり吹くんじゃねぇよ!!』
「いや、一瞬持っただけでも褒めてくれよ」
『まぁ、俺も今のは無いと思ったけどよ』
「…………よく来たな!勇者よ!」
俺たちが聞いていなかったと勘違いしたのか、もう一度また別の変なポージングで言う燕尾服の男。ラヴァー達はどうしてかわからないが、追ってきてはいない。
「聞こえてなかったわけじゃねぇよ!!」
「そ、そうか」
燕尾服の男は一瞬ホッとしたような声色で頷き、ポージングを解く。
「…………」
とりあえず鑑定。
謎の仮面男(爆笑)
謎の仮面男!仮面男の素性は一切不明!何故なら謎だから!ただ一つ知れている仮面男の必殺技は仮面男キック!蹴られた相手は痛みに涙目になるであろう!
キリエ命名
「……」
「き、貴様ァッ!今この我を鑑定しただろう!?なんと出たぁ!?」
「はっ?えっと、謎の仮面男(爆笑)って」
「そ、そうかぁ……」
またも仮面男はホッとしたようにため息をつく。
「メイドの方は……」
メイドA
メイド。
キリエ命名
メイドB
メイド。
キリエ命名
「雑だなぁ!?」
「カズマ様、私達の鑑定結果は……」
「ん?メイドAとメイドBだって。ってかなんで俺の名前を知ってんだ?」
「あっ」
「よくよく考えてみると聞いたことあるような声だよな?ギル」
『聞いた事あるっつーか。嗅いだ事ある臭いがするぜ。くっせぇくっせぇ臭いがあのメイド二人からな』
「臭い……?」
『あぁ。まるで』
死体みたいに、とギルが続けたところで俺は閃いた。
「お前、フィルか?」
「ウグッ」
仮面男はぎこちなく、首を振ると再び変なポージングをして叫ぶ。
「我は常世の狭間にて生きる正義の使者。フィルなどという男は知らん。我の名は誰も知らない。この我ですらな!」
「いや意味わからんし。つーことはメイドの方はエリエルとイザーラか?いやでもギル。あいつら結構いい匂いした記憶があるんだけど」
『魔法かなんかで誤魔化してんだよ。人間程度なら騙せるだろうが、俺たちは騙されねぇよ』
「へー。だ、そうだけど。エリエルにイザーラ。どういう状態なのか教えてくれね?」
「「……」まぁ、黙ってても始まらないわね。ちょっとこっちでも色々あってね、フィル様のご友人に捕まっちゃってここのボスになったのよ私達」
「ご友人ってーとキリエか」
「いいえ、クロム様よ」
「そ。で、フィルはなんでそんなんやってんだよ」
「クロム様からの御達しというか、罰というか」
「ええい!我はそんな事は知らん!行くぞ勇者よ!我の力で消し炭となれ!!彎曲せし黒炎ッ!」
「うぉっ!?」
黒色の炎がフィルの手から複数弓なりに放たれるも、ギルがその炎に対してブレスを放ち、その炎を吹き飛ばす。
『この俺様に向かって炎とはなぁ!?』
「ぐぬぅ。能力が上がっておるな……!」
『てめぇやっぱネクロマンサーの野郎じゃねぇかっ』
「ええい、黙れい!行くぞ、我がメイド達!エンドレスパーティッ!」
仮面男、フィルが、あのアンデットを無限に復活させる魔法を唱え、直後、地面からボコッボコッと穴が開き、メイド姿のアンデットが大量に現れる。
「ギル、ぶっちゃけ焼き払う事は可能?」
『余裕余裕。やるぜ、主。撃ち漏らしを頼むぞ』
「任せろッ!」
「前と違い、俺のレベルも半分程制限なくなってるからなぁ!簡単にはやらせんぞ!」
「もう隠す気ねぇな」
「我の命にて這い出よ!アンデットアーミー!」
更に、鎧を着、大盾と槍を持ったゾンビが数十体現れた辺りで、ギルがブレスを放ち、それと同時に俺も走り出す。
ドオンッとブレスと鎧ゾンビが衝突し、爆発が巻き起こる。そして、その煙が晴れる前にその中に入り込む。
「生き残っているのはっと」
意外にも大盾ゾンビのお陰で生き残った者が多いのか、ユラユラと蠢く影が見える。それに向かって、透明になったインディスティンを振るう。すぐにどさりと倒れたのを確認して次のゾンビへとすぐ様移っていく。
煙が晴れた頃には、八割のゾンビがふせっていた。
というのは俺の希望で、斬り倒した筈のゾンビも、ブレスで焼かれた筈のゾンビも、その全てが何事もなかったように立ち上がり、俺の周りを囲っていた。
「この魔法もまた、強くなってるんだよ」
「回復早くね!?」
仮面の下で明らかにドヤ顔をしているだろうフィルがムカつくが俺が馬鹿だった事に違いはない。が、
「主に集中し過ぎですよ」
「んなっ」
フィルの真後ろで大剣を振り下ろそうとするセイルがおり、それを受け止めようとするエリエルとイザーラ。しかし、セイルも城に戻ってから本来の力は解放されており、その膂力は、アンデットとはいえ、元々人だった者に抑えきれる筈もなく、易々と彼女らを斬り飛ばしてしまう。
「ダークオーラッ!」
「はあっ!!」
その直後にフィルが黒色のオーラを纏い、セイルの斬撃を寸前で押し留める。
「強く、なりましたかね?」
「そう言ってんだよッ!彎曲せし黒炎!!」
セイルは魔法名を聞いた時にはフィルから離れ、俺も結界で周りのゾンビを弾きながら後退する。
「擬似メテオレイン!」
俺たちが下がりきってから、人型になったギルが炎の矢を大量に奴等に向かって放つ。が、ゾンビはともかく、鎧を着たスケルトン達は大盾を掲げて防ぎ、フィルもダークオーラの効果でマナを吸い取り、無効化していた。
「厄介だなぁおい!」
「主が思いの外戦えてるから、勝てない相手じゃねぇけどな」
「何その力の比べ方やめろよ!悲しくなるだろう何故か!」
「主でもやれそうだからいけるべって言われるのとどっちがいいよ?」
「どっちも嫌だけど前者でお願いします!」
会話中にもフィルから黒炎を放たれ、更に増殖しているゾンビを仕向けられる。
「人が話してる途中に何してくれてんじゃあ!?あぁっ!?」
「どっちが悪役か……わかるにはわかるけど違和感あるわぁ」
「二人共そろそろマトモに頑張らないと、死人の数が増え過ぎて、処理が難しくなりますよ」
「「だな!」」
「インディスティン!!幽静斬鬼龍ッ!!」
「「《半竜化》」」
インディスティンが龍になり、周りのゾンビを食い千切って行き、ギルがシュカの周りで漏れたやつを撃ち抜き、俺とセイルでフィルに向かって疾駆する。
「インディスティンがねぇ間は訓練の時に貸してもらったミスリルソードだ!」
「それでも十分素晴らしい斬れ味はあると思いますし、大っ丈夫でしょう!」
セイルが横薙ぎに盾スケルトンを斬り飛ばし、側面からくるゾンビ一団を結界を膨らませるようにしてぶつけて隊列を乱させ、その隙に跳脚で更に加速する。
「主は後に」
「おっけ」
セイルが大剣にマナを纏わせ、その幅を大きく広げて、フィルのダークオーラに斬り込み、左右から襲いかかるエリエルとイザーラを軽くいなして、二人ごとダークオーラを薙ぎ飛ばし、オーラが大きく削られたところに俺が勢いをつけて突きを繰り出す。しかし、それもフィルの影から触手のように黒色の手に防がれてしまう。
「黄泉から出ずる黒手……」
「チィッ」
「伏せろぉ!!」
「んぐぇっ!?」
ギルの怒鳴り声が聞こえた瞬間にセイルに押し潰され、直後熱線が頭上を通り抜けて、フィルのダークオーラすら貫き、黒手を破らんと衝突するも、黒手は消えるどころか、数を増やして、俺たちに掴みかかる。
「その程度かよてめぇら。数多漂う死した魂よ!その絶望を糧に我の力、「主、セイルそれ止めろぉ!!」「無理ィッ!」闇の精との契約において彼者を虚無の闇へ葬ることを命ずる!ノワールディストラクション!!」
そして、フィルの魔法が発動した瞬間、足元に巨大な黒い穴が出現し、さっきの黒手を更に禍々しくしたような物が、抵抗を物ともせずに黒い穴へと俺たちを押し込み始める。
「主!お手を!」
「あ、あぁっ!!」
「突破します!」
「うぉっ?!」
セイルは大剣を振り回し、黒手を斬り飛ばしながら翼をはためかせ、跳躍すると、空でもう一度回転して俺をギルの方へ投げ飛ばし、フィルに向かって唐竹に斬りつける。
「その程度じゃ、お前らのマナを貰うだけで、俺には傷一つつきゃあしねぇよ。闇よ貫け、シャドウエッジ!!」
フィルは黒手でセイルの大剣を抑えつつ、真っ黒な剣を複数形成して、セイルに放つが、セイルはすぐに剣から手を放して自身の《半竜化》により強化された手に闘気を纏わせてそれを弾き、更に黒手を吹き飛ばしながら徐々にフィルへと近づいて行く。
「大剣使わねぇ方がつえーんじゃねぇか?」
「時によりけり、です!!」
ついに全ての黒手を退けて、大剣を手に戻し、周りのアンデッドを薙ぎ払う。
「来いよ死龍。そこの半透明な龍を倒せ」
「グ……グ……グルゥウウウウウアアアアアア!!」
「くっ!!」
フィルがインディスティンを指差すと同時、ほぼノータイムで黒い魔法陣が浮かび、そこからいつぞやのドラゴンゾンビがセイルを突き飛ばしながら出現した。
「インディスティン!やれるか!」
「……」
誰に言っている!と言っているように、宝玉が赤く明滅し、インディスティンはドラゴンゾンビに向かって、周りのアンデッドを巻き込みながらも突進を仕掛ける。それに、合わせるようにドラゴンゾンビも駆けだし、大きな音を立てながら二体の龍は衝突した。
「主ぃ!!」
「なんだよギル!」
「このままじゃジリ貧だぁ!癪に触るが、あの犬っころを呼べ!!」
「犬っころぉ!?」
「ジオだよ!!」
「どやって!?」
「正統な契約を施してんだ!来いとでも願えば、来るだろうよ!!」
「そうなの!?てか先に言えよ!!」
「悪りぃな!勝てると思ってたのと、プライド的なものに邪魔されてなぁ!」
「あぁ!まぁ!後で!その話は、しよう!」
ーー来てくれ!ジオ!
『あぁ、漸く、喚んでくれたか、ご主人様』
ビュオウッと吹雪が目の前で吹き荒れ、その中から白色ワンピを着、青みのかかったセミロング程度の銀髪を揺らして、不敵な笑みを浮かべながらジオが立っていた。
「やぁ。ご主人様。大変そうだね。助けてあげようか?」
「いや、助けてほしいから呼んだんだが」
「いやぁご主人様、今の今まで忘れてて、ピンチになって漸く思い出し、今更呼んで、いきなり助けてくれだなんて、ムシが良すぎるんじゃないかなぁ?」
と言いつつ、襲いかかってくるアンデッドを刹那の間に凍らし、砕いているジオ。その上不敵な笑みは崩さずに、俺の目を真っ直ぐ見てくるわけで。
「す、すまんかった。俺たちも色々あってな、困ってたんだよ」
「うーん。でもそっちのワイバーンは喚べたんだよね?悔しいなー」
「あ、あと、俺、ギル達みたいに召喚できるのを知らなかったってのもあるし」
「うんうん。それは言ってないしね」
「だ、だから許し」
「でもちょっと考えればわかることじゃない?ご主人様。仮にもえーっと神獣なんだから僕。神獣の主人らしくしないと!」
「す、すいません。俺の考えが至らず、なんと謝ればいいのか」
「まぁいいや。それは後でね。ではご主人様。僕の敵は、あのおじさんでいいのかな?」
指差す先は、にやけ顏を全開にして、黒手でセイルを追い詰めるフィル。
なら、俺はただ一言言うだけだ。
「あぁ、彼奴を、倒してくれ」
「まっかせてよ」
ジオは不敵な笑みから、その少女らしい笑みへと変え、その身を狼へと変化させ、疾駆した。
〜精神の間〜
カズマ「作者の時間がないらしいのでパス!」
ジュン「そんな身勝手なぁ!?」
メイ「こうなれば私達が私達の物語を語りましょう。さぁ三人のワイバーン達よ。奴を消しなさい」
ギル・セイル・シュカ「あいあいさー」
カ「えっなんでお前らそんなノリノリなの!?ちょっ待ってあげて!?」
作者「」




