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白聖

「遅い……ですね」

「ええ。全く帰ってきませんね」


今階層ボスを倒し、門の先へと行ったカナデさんとポチさん探索班の方々とギルに呼び出されたらしいカズマさん達を待っているのだが……。


「落ち着くっすよネコル。まだ一時間も経って無いっすよ?」

「ジャック……でも、すぐ帰ってくるはずなのに……メール機能もいつの間にか使えなくなってるし」

「……力也、もしかしたら」

「そうっすね。多分また上の階層に行った可能性があるっすね。それで前回みたいにまたアップデートとか。でも放送がないっすね」

「兄様!!」

「アルディア!?どうして此方に!?」

「門が開いた気配がしたから!!」


ボス部屋の入り口にセミロングくらいの髪でパーマがかかっている白髪。肌も白く綺麗で、純白のキトンを着ており、背に翼を生やした金色の目色をした少女。背には先端に青いクリスタルと、羽の装飾が付いた杖を背負っている。可愛らしいな。ぱっと見ではギルやシュカとよく似ている……というか多分同族なのだろう。


「門ってあの?」

「紫は知らないけど翼のエンブレムが付いている方!」

「ライト殿」

「ベクターか」

「アルディとダンジョンの入り口で合流して来ました。こちらの翼の門は我らの元々の主がいらっしゃる門です」


ベクターと呼ばれた青年はアルディアとは全く逆の特徴。顔を除き、全体を覆うように何故か真っ黒な鎖帷子を付け、更にその上に手や足、胸部分にこれまた真っ黒なプレートアーマーを装備した黒い短髪、紫の目。腰に黒いロングソードと右手にバックラー。バリバリの前衛職っぽい見た目だ。というか何故この人を攻略に使わないんだ!


「それで?来てからどうするというのだ?」

「恐らく我らがいなければ通る事のできない道、入れない場所がある為です」

「そうか。何故このようなものがある事を話さなかった。いや、そもそも俺達が鍵の事を報告した際に何故何も言わなかった?」


ライトが代表してベクターに問う。


「知らされていなかった、が正しいですね。その転移門は我々下等なワイバーンでは本来知ることすら許されない禁忌。龍の国の王と、その重鎮のみが使用を許される宝具の一つですから」

「そうなのか?アルディア」

「そうだよ兄様」

「そうですか……ではアルディアと」

「ベクターは即刻その門からポチ達を助けに行け」

「はい。ただ、我々だけではやや危ないかもしれないので、数人連れて行かせては貰えませんか」

「……どうする。シリウス。こちらの陣営はギルマスの許可なく出すことは出来んぞ。メール機能も失われたようだし、連絡もできん」

「……ではギルド、不思議の国のアリスの皆様は如何ですか?勿論私のギルドからも人は出せますけど」


問われたシロは手をアゴに当てて考え込む。


「僕は……嫌だよ」

「俺は良いぜ」


シロが全員を見ていくとネコルが拒否するように離れ、エースは笑って受ける。


「……ナタリアとリンはどうしたいっすか?」

「私は力也の行くところ何処までもご一緒します」

「同じく」

「そうっすか……俺は正直遠慮したいっすね。二人を危ない目に遭わせたくはないっす」


ジャックはナタリアとリンを傷付けたくないという理由で辞退。


「クインスは?」

「シロが行くなら良いわよ」

「僕は……」

「シロは行かなくていいよ。代わりに僕とメイが行く。ギルドマスターなんだからどっしりと待ってなよ」

「ジュン君……ごめん、頼むよ」

「メイも、良いかな?」

「私は否が応でもあんたと一緒にいないといけないし、反対したって行きたいんでしょ?なら行くわよ」

「ごめんねメイ」


別にっと顔を背けて、僕の肩に座るメイを指先で撫で、シリウス達の所までエースと歩く。


「んじゃ俺達二人が付くぜ」

「あ、俺も行きます」

「アキトさんも?」

「はい。ライトさんが行ってこいって」

「良いんですか?」

「お前達を行かせてこっちが誰も行かないのはフェアでないからな。それにアキトならこちらの中でも強いから、どこでも比較的問題なく戦えるだろう」

「ありがたいです。では、不思議の国のアリスのエースさん、ジュン君。反乱の軍団(リベリオン・アーミー)のアキトさん。ワイバーンのアルディアとベクター。先駆者の集いからはガンケツさんに行って頂きます」


シリウスの後ろから、何度もデコイを発動させていた大きなおっさんがのそりと前に出る。


「指揮に自信がある方が居なければ、ガンケツさんにパーティリーダーを任せてもらおうと思っていたのですが、皆さん大丈夫ですか?」


皆がそれぞれ頷き、パーティの申請をガンケツにしていく。


「よし。では、行くぞ若造共!」

「「「おおー!」」」


皆手を上げ、一人一人、門に入っていく。最後にワイバーンの二人が入った瞬間、扉が閉じ、煙となって消えてしまった。


「あれ?扉消えたぞ?」

「ええ!?これってどう帰るんですかね?!」

「落ち着け若造共。今まで何とも無かったのだ。恐らく、アルディア。ベクターがここに入った事で、門の役目が終わったのだろう。それについて何か言うことはあるか?」

「何も知りません。ごめんなさいおじ様」

「おぉぉ……怒ってはおらんのだよアルディア。ただ知っていればと、思っただけでな?」

「ホント?」


厳ついおっさんのクセして、アルディアの相手する時だけ、滅茶苦茶ニヤニヤというかニコッニコしてるんだけどこのおっさん気持ち悪ッ!


「キモ」

「コラ、メイ。本当の事でも言っていいことと悪い事があるよ」

「いや、ジュンの方が酷いと思うぞ」

「いや〜眺めが綺麗ですねぇ」

「あ、出口ちっか!!」

「僕も見たいです」


ガンケツ達を放置して、アキトが立つ、洞窟の出口まで行くと、


巨大な宮殿が空に浮いており、そこら彼処に透明の床やら階段やらが見え、その遥か下、地上に街が見える。


「って、えええええええええ!??」

「エース驚き過ぎでしょ。でも確かにこれは」

「凄いですね」


そして、頭上からバサァッと羽ばたきながら大きく、白銀で、眼の蒼いドラゴンが降り立った。

僕達はすぐに武器を構えるも、そのドラゴンの人睨みで身体が全く動かず、立っているのもやっとになる程の威圧を当てられる。それでもアキトだけが武器を構え続け、ドラゴンの挙動を警戒していた。


『客人よ。武器を降ろすのだ。我はハク。この天龍王国の主だ。貴殿達の仲間もこの先、我の宮殿で待っている』

「お、おぉ?!いや、ガンケツさん!!」

「聞いておったよ。俺達には拒否権はないわけだし、行くしかなかろう」

「ハク様ー!」

「お久しぶりです、我が王」

『久しいな。アルディア。ベクター。ぬし達も宮殿へ行こうか。制限も外してやろう』


制限?と首を傾げるガンケツ達をアルディアとベクターはワイバーンに変身し、その身に彼らを乗せていく。


『異界の勇者よ。其方は我の背に乗るといい』

「え、なんで勇者って。というか乗っていいんですか?王様なんでしょう?」

『我が許す。乗れ』


僕は言われるがまま首の付け根辺りに座り、メイは僕の胸元から顔だけを出して隠れる。


『行くぞ』


バサァッと急上昇し、そのまま真っ白な宮殿の上まで飛び、宮殿の中庭に降り立つ。


『さて。そこの二人。客人を案内せよ』

「ハッ」「畏まりました」


龍人っぽい二人が僕達の前へ来て、宮殿の中へ歩くように言ってくるので、逆らわずに歩き出す。


『我も姿を変えようか』


中に入る間にハクが姿を変え、白い髪、白いローブ。そして長く結ばれている白い髭。眉も滅茶苦茶長く、目が隠されてしまっている。そんなおじいさんが現れていた。


「早く行け」

「あ、すいません」


見ていたら後ろに付いていた龍人に急かされてしまったので、歩き出す。


「中もすっげーな」


プレート装備像やらよくわからない装備の像が廊下の横に沢山あり、色々見ていて面白い。


「鑑定しても弾かれんだけど」

「スキル防護壁が張ってありますからね。下位スキルなら鑑定その他スキルは無効化できます。なので無駄です」

「ええー」

「ここは本来貴方方のような下等な生物が来れるような場所ではないのです。あまり調子に乗らないように」


なんか凄い拒絶というか見下されてる感じがするんだけど。あのハクって龍はそんな事なかったけど。


「えと、何ですか?」

「いえ。何でもありません。早く進みなさい」

「あ、はい」


明らかに物凄い形相で睨まれてるんですけど。アレかな?乗ったからかな。


「ここだ。入れ」


両開きのドアを龍人二人が開くと、探索組のポチとその他大勢がそれぞれ部屋の中で寛いでいた。


「あぁ!ガンケツさんだ!」

「本当だ!ガンケツさん!」

「他の変な奴らもいるな」

「天使ぃいいいいい!!!!」

「ベクター殿とアキト殿まで!」


部屋に入ると数十人のプレイヤーが次々に近寄ってくる。


「待て待て待て若造共。入り口で集まるな。今後の話もしたいから真ん中に集合だ」


ガンケツがそう言うと中央にある長机に集まりだす。


「一斉に動く辺り、人望あるんですね」

「来たかーッ!」

「ボフッ。ポチ。お前は少し落ち着け。乗るな馬鹿者」

「アルディアもおひさッ」

「えっと、まだそんな経ってない……ですよね?」

「あぁ。無視してもいいぞアルディア」

「ガンケツ冷たい!北極の氷並みに冷たい!!」

「さて。馬鹿は放っておいて。皆、何があったか聞かせてくれ。ある程度はわかるが、一応だ」


そしてポチから始め、その他探索班の代表二人が門からこれまでの話する。結論から言えばこっちと殆ど同じ様に連れてこられていた。僕の扱いだけはやはり違っていたようだが。


「まぁお前さんらに大した事が無くて良かったよ」

「ガンケツツンデレー!縮めてガンツンデレー!さっきは冷たかったのにー!」

「あーうるっさいわ犬っころ!!」


ガンケツ達がじゃれ合っている間に再び部屋の扉が開かれおじいさんと龍人二人が入ってきた。


「あー。アルディア。ベクター。こちらへ来なさい。それとそこの」


指を指され、後ろを振り返るとアキトがいた。


「後ろではない。わかっているだろう。異界の勇者よ」

「……はい」


勇者とかばれたくなかった勇者とかばれたくなかった勇者とかばれたくなかったーっ!!

キッと睨むもおじいさん、ハクは知らん顔。


「早くこちらへ来い、愚民め。ハク様にお声を掛けられるだけでも光栄な事だというのに。手間を掛けさせるな」

「良い。気にするなスナハ」

「……畏まりました」

「さて、異界の勇者よ。一緒に来ると良い」

「はい」


ハクに手招きされ、その背に着いて行く僕を心配そうに見てくれるエースとアキトに手を振り、笑う。


「異界の勇者……と呼び続けるのは面倒だな。ぬし。名は何と言う」

「ぼ、僕はジュンです」

「聞かれてないけど私はメイよ!」

「そうかそうか。ジュンに、メイだな。覚えたぞ。ぬし達に渡したい装備があるのだよ」

「僕達に?」


ハクは頷き、人差し指を立てて、指先から光を生み出す。


「この先突き当たりの扉を開き、取りに行くがいい」


そう言うとハクは光を扉の方まで放出し、指し示す。


「わかりました」


色々疑問はあるけど、スナハって呼ばれた龍人の女の人が怖いのでその扉まで駆け出す。


「ジュン。大丈夫かなこれ?あのじーさん凄い胡散臭いんだけど」

「胡散臭くはないと思うけど、何かありそうだよね。気を付けていこう」

「うん」


扉の前まで辿り着き、後ろを振り返るも、既にハク達の姿は無く、ハクの放った光の欠片が宙に存在しているだけだった。


「開けるよメイ」

「鬼が出るか、龍が出るか、ね」

「ちょっとこっちと違うんだね」


メイに笑いかけながら扉を開けると光だった。




「あれ?僕扉開けたよね?」

「……ジュン。私達やっぱり騙されたかもしれないわ」

「え、うん。よくわからないけどここどこ?どこかの洞窟だと思うけど」

「そりゃ見りゃわかるわよ!!」


周囲を見渡すも、岩壁が続き、空も同じく岩というか石というか。ダンジョンそのものだ。


「あそこには大量のマナが満ちてた。転移させるように最初からしてあったのよ」

「なんであんな光ってたのかな?」

「そりゃあのじーさんのマナで作り出した転移ゲートみたいなもんだからじゃないのっ!?」

「そっか……とりあえず、歩こうか」

「そうね。動かないと始まらないし」


と。歩き出そうとした時、声が聞こえた。気がした。

メイに確認するも聞こえていないようで、聞き間違いかと思った。けど、


ーー此方だ。


男とも女ともとれる中性的な声。それが僕を呼んでいる。


「聞こえた!!メイ行くよ!」

「えっええ?ちょっと転ばないようにね!?」


ーーそうだ、此方だ。勇者よ。


「メイは聞こえない?」

「何のことよー!?」


やっぱり聞こえてないみたいだ。でも少しずつ近づいている気がする。


ーー此処だ。右側の壁を壊すのだ。


「?……シャインソードッ!」


言われた通りに、剣に光を灯し、壁を何度か斬りつけて破壊すると、広い空間の中に一つの真っ白な両刃の剣が幾重にも重ねられた結界の中に存在していた。


「……綺麗ね」

「だね」


結界の光が結界あたり反射し、部屋全体へ七色の輝きを放っている。その中に刀身から柄まで何の装飾もない、ただ真っ白な剣。


ーー勇者よ。


「僕を呼んでくれたのは君か」


ーー左様。私だ。


「もしかして、もしかしなくても剣と話してんのあんた」

「うん。君は何故そんな所にいるんだい?」


ーー私は、前回の勇者に二度と使われる事のないよう此処に封印されたからだ。


「封印、か。それは何故?」


ーー覚えていない。ただ私が必要になる時はいつも戦乱の世や、世界が大きく動く時だった。恐らく前回の勇者はそれを嫌がったのだろうな。


「ふーん。僕を呼んだのはなんで?」


ーー此処に存在出来た。だからだ。


「いや意味分からないんだけど」


ーーつまり、私を使うべき者だからだ。私を使える者が来た。ならばやはり呼ぶしかないだろう。必要な時なのだから。


「ま、まぁよくわかんないけどいいや。でもさ、この結界はどうするの?僕自慢じゃないけどこんな凄そうな結界壊せる自信ないよ?」


ーーいや、勇者よ。其方は触れるだけでいい。それだけでこの結界は溶けるように消えていく筈だ。


「そ、そう?」


ぴとっと一つの結界に触れると、確かにそこから一つ結界が薄れて消えて行った。


「おぉ〜」


ーーさぁ、早く私を抜くのだ。そして私の名前を唱えよ。


「うん」


結界を次々に消して行き、最後の結界を消した瞬間、光が剣を中心に天を突き抜けていく。


ーーさぁ勇者よ。私を掴み唱えよ。私の名は


白聖びゃくせい


僕達を中心に光が広がり、その場を光が支配した。


「気持ち悪いくらいに馴染むんだけどなんだろうね」


ーー前回と全く同じ、魂の作り、輝きだからではないだろうか。


「ちなみに前回っていつ?」


ーー記憶が正しければ数千年前だろうな。


「数千年前!?」


数千年前からずっとここに居たのか。なんていうか、さみしいな。


ーーそんな風に思われたのは久々だ勇者よ。


「心読めるのかよ!というか僕は勇者である前に、ジュンっていう人間だ!だから僕を呼ぶならジュンと呼べ白聖びゃくせい


ーーわかった。ジュンよ。これからよろしく頼む。


「あぁ。よろしく」

「ねぇあんた。さっきから私を無視し続けるけど、ハタから見ると、一人で剣に話し続ける変人だからね?わかってる?」

「わ、分かってるよ失礼だなぁ」


ーージュン。そろそろこの空間から出よう。私も久方振りに外の世界を見たい。


「わかった。どうすれば出れるだろう?わかる?」


ーー私の名を唱えよ。力を貸そう。空間を切り開く力を。


「わかった。白聖びゃくせい僕に力を!!」


白聖びゃくせいが光を帯び、僕が振り抜くと、空間が裂け、先程の宮殿の中庭が見えたが、一瞬で閉じてしまう。


ーーまだジュンの技術が足りないようだな。


「え、じゃあどうするの?」


ーーそこはジュンが考えるところだよ。


「ええー。じゃあ、連続で切り開く!!」


白聖びゃくせいに再び光が灯るのを確認し、数回振り、空間を斬り、できた空間の穴に飛び込むと、先ほどの中庭に出れた。


「出れた」

「出れたね。ってかあのじーさんどこよ!」

「じーさんとか言うの止めてよ。あのスナハって人に見つかったら」

「私に見つかったらなんだと言うのだ愚民よ」

「げっ」

「何でもないわよ!!」

「いいや、私は聞こえたぞ。愛しのハク様を事もあろうに、じーさんと呼んだ事を」

「えっとあのぉ、なんかごめんなさいスナハさん」

「人族如きが私を名前で呼ぶな!!龍人様と呼べ!」

「そ、それだと他の人と被らないです?」

「それでもいいのだ!」


無茶苦茶な。


「んな無茶苦茶な事従うかこの馬鹿龍人ッ!」

「貴様!ただの羽虫風情が私を愚弄するかッ!!」

「好きで羽虫になったわけじゃないわよ!!この蜥蜴崩れ!!」

「キィサァマァッ!!!!」

「なんか仲良さげだね」

「「良くないッ!!」」


二人がぎゃーぎゃー罵り合っていると、中庭の入り口の方にハクが経っており、静かに手招きされてたので、僕は近づく。出来るだけこの二人を刺激しないように。


「かっかっか。最近は客人もいなかったからな。スナハも楽しいのだろう。あの者、口は悪いが、根は良いのだ。許せ」

「気にしてません。それよりもウチのメイの方が失礼なことを」

「では、それで打ち消すと」

「はい」

「良し良し。ジュンは無事に剣を手に入れられたようだな?」

「ええ。というか怪我する要素がなかったんですけど」

「あの結界と言えばわかるだろう?あれは魂が適合しない者を無に帰す結界なのだよ」

「え」

「つまり、少しでもジュンの妖精、メイが触れていたら、その場で恐ろしい苦痛を味わいながら消えておっだろうな」

「それ先に言ってくれませんかねぇ!?」


そしたら僕も下手したら消えてたって事だろう?!メイも!


「いやいや、結果的に大丈夫だったろう。だから平気だよ。あの子も、何があるかもわからない結界に触るなんて愚行はしなかったろう?」


愚行……ッ!僕速攻で触った気がするんだけど。


ーー私が言ってから触れたのだから問題ないだろう?


いや、無いけど、白聖びゃくせいが僕を騙してる可能性もあったろ!?


ーー確かにな。だが、嘘ではなかっただろう。


まぁね。


「黙っておるが、怒ってるのか?」

「いや、まぁ思うところがないわけではないですけど、無事に帰ってこれたわけですし、良いです」

「そうかそうか。さてジュンよ。ぬしには我の、白龍の加護を与えようかの」

「ハクさんの?」

「おうとも。我の加護は二つのスキルが追加される。ジュンはその内一つのスキルを選ぶのだ」

「見返り……みたいのは?」


それだけのことをしてもらうなら、その分何かを要求される筈だ。普通の人なら警戒してそう簡単には貰わないよ。


「ジュンが出せる物の中に我の欲しい物があると思うかい?」

「いや、ないです」

「だろう。我が今、ジュンに加護を与えるのは……そうだな。先行投資という奴だ」

「先行投資?」

「あぁ。この先、勇者たる君は数々の苦難に巻き込まれるであろう。命の危機だけでなく、世界の危機などもあるだろう。それを止めてもらう為の先行投資だ」

「そんなことしなくても、ハクさんが止められそうな気がするんですけど」

「いや、白聖びゃくせいを抜いた。それだけでこの世界に危機が訪れるのは確定したことなのだ。それがいつかはわからないがな」

「そうなんですか」


ーーあぁ。


いやーやだなぁ。そんなに僕色々巻き込まれるのかぁ。カズマさんといるからかなぁ?あの人明らかに色々巻き込まれてそうだもんな。いや、むしろ自分から巻き込まれに行ってるもんな。


「それで……貰える加護というのはどんな物なんですか?」

「どんな物も消し去ってしまう、聖なる一撃を放てるスキルと、邪気を祓うことのできるスキルを使う事ができる加護だな。オススメは前者だがな」

「聖なる一撃ってどれくらいの威力なんですか?」

「ふむ。このくらいかな」


ハクは指先に光を灯し、空に向かってその光を放つ。その直後、光が爆発し、空を光で埋め尽くした。

数秒かけて、空は雲ひとつない青空へと変わっていた。


「込める心力によって威力は変わる。今のが空へ向けた物だからわかりにくいだろうが、地上へ向けたならば、あの街が全壊する程の物になろう」


僕は思わず後ろに下がってしまう。


「そう怖がるでない。我がこの力を与えるのは、代々の勇者。力を正しく使える者のみだ。ジュンよ。おぬしならば問題ない」

「そ、そうですか。あと、一応、あの、邪気を祓う力というのを」

「あぁ。後々魔法でもできるようになると思うが、アンデッドやゴーストを浄化し、成仏させる力だ。他にも呪いを解いたりすることもでき、治癒能力も少しある。それは彼女に与えようと思うのだが」

「メイに?」

「あぁ」

「なら、やっぱりその聖なる一撃が放てる加護が欲しいです」

「うむ。良いぞ。それと、この力は白聖びゃくせいと相性が良い。使いこなせるようになれば、剣とスキルを合わせられるようになるはずだ」

「あの力を、白聖びゃくせいで……」

「怖いか?」

「ちょっと」


街を全壊させる程の力なんて貰ってもな。暴発なんてあったら怖いし。


ーー暴発などさせぬ。ジュンが失敗するなら私が制御してみせよう。


ご、ごめん。ありがとう。


「怖い、ですけど、白聖びゃくせいも協力してくれるので、大丈夫です」

「そうか。それならまぁ良いだろう。ジュンとメイはこのままここにおれ、アルディアとベクターを連れて来る。と、これが加護じゃ。受け取れ」


ハクは指先に光を灯し、僕の額に指を押し付ける。


「えっえ?」

「これで終わりじゃ。スナハ。そろそろ話すのをやめ此方へ来なさい」

「ハエごときが私の力にーーっはい!!今すぐに!」


呼ばれた瞬間、罵り合いをすぐに止め、こちらへ猛スピードでやってくるスナハ。それに対してメイが吠える。


「翼の生えただけの蜥蜴がふざけた事言ってるんじゃないわよっ!て待てコラァッ!!」

「こら。メイ。言葉が悪過ぎるよ」

「む。ジュン。あのじーさんと話してなんかあった?なんか微精霊がいっぱいくっ付いてるんだけど」

「そうなの?」

「うん。光り輝いてる」

「そっかー」


ーー加護を与えられたからだろう。光の微精霊が常にジュンの周りを浮遊しているよ。


「え、因みにどんな感じ」

「あんたの顔がわからないくらい微精霊がくっ付いてるわよ」

「それ大丈夫なの?見える人的に」

「んーなんとなく見えなくすることできるのよ。だから問題ないわ」

「なるほどね。でさー」

「どうしたのよ」

「僕達どれくらい待たされるのかな」


それから中庭のベンチに座りながら話す事十分。ハクがスナハと名前のわからない龍人と、アルディアっぽい女の人とベクターっぽいおじさんを連れて来た。


「ほれ。行くのだ。アルディア。ベクター」

「「はい」」

「なんか、歳とりました?」

「歳……と言えば歳だな。レベルも上がったが」

「これが私達の本来の姿なんですよ」

「と言っても僕はさっきちょっと道中共にしただけなので、そこまで違和感はないんですけどね」

「ジュンよ。我は為すべきことがあるのでな、其奴らを連れ、部屋へと戻るといい。これからの事も二人に伝えておいたから、皆で話し合うと良い」

「わかりました」


僕が頷くのを確認し、スナハと青年龍人を連れて宮殿の中へ戻っていくハクを見送り、僕達も大部屋の方まで向かう事にした。

カズマ「ほんとに微塵にも出てこなかったな俺。主人公なのに」

ギル「そんなこと言ってるから出れねぇんじゃねぇのか主。それに冒頭に名前だけ出てきたじゃねぇか。それで満足してろ」

カズマ「つってお前も冒頭以外出れてねぇだろ」

ギル「俺はいいの」

カズマ「まぁ、確かにお前毎回出る度に色々アホやってるもんな」

ギル「いやいやあんた程じゃねぇよ」

カズマ「んだとー!?」

ギル「最近だと勝てもしねえのに調子に乗って狼野郎に斬りかかって剣が折れるとかな」

カズマ「やめろおおぉぉ!あれは剣がちゃんとしたものだったら大丈夫だったんだ!」

ギル「そりゃどうかね。アーサーに鍛えられて多少太刀筋は良くなったかもしれんが、まだまだだ」

カズマ「チクショー。いつかギャフンと言わせてやるからな」

ギル「言わせてみろよ。んなわけで」


カズマ&ギル「次回もよろしく!」

カズマ「俺の出番はねぇけどな!」

ギル「まだ言うか馬鹿主」

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