吸血鬼vs英雄&神狼
「……ッ」
「ん」
「クフっ」
アーサーが大剣を振り回し、ジオがそれで出た隙を光のような速度で動き、突く。それをキリエは吸血鬼の類稀なる能力を持って、避け、弾き、受けながし、二人の攻撃を捌き続ける。そして、多少の擦り傷などは瞬く間に塞がっていく為、全くの無傷。
「チッ」
「舌打ちは良くないよ〜」
「クフフ。妾が負けぬのは当然の摂理よ」
「やっぱ人変わってやがるか」
「臭いが変わってるもんね〜」
「テメェ……カズマに何をした?」
「さぁの。妾は魂を手繰る力など持ってはおらぬしな。それより今は、此度の戦を楽しもうではないか」
「あぁ?テメェを差し向けた奴がいんだろうよ。さっきのげぇむますたーとやらがよ。それに楽しむ間なんて与えねえぞ」
「今回に限ってはすぐ終わらしてもらうよ。ご主人に害があるようだしさ。力の説明とかは死ぬ間際に説明してくれればいいからさ」
「よいよい。妾を数瞬の内に倒せるのならば、それもまた面白い。成せるのならばそうしてみせるがいい!そしてそれが成せたならば、褒美をやろうではないか」
「死んだら何もできなくねぇか?!」
言いつつアーサーが大剣を振るうも虚空から取り出した銀のレイピアで高速で迎え打ち、弾く。
「アイススパイク〜」
その背後に移動したジオは氷柱を
一瞬で四発作り出し、撃ち放つ。
だがそれも、キリエは軽い跳躍で避け、宙を蹴ってアーサーに接近し無数の突きを放ち、アーサーはクレイモアの腹の部分でそれを防ぐ。
「爆ぜろ、フレアボム!」
「うぬ……」
アーサーを中心に広がる炎をキリエは手刀で吹き飛ばし、レイピアに風を纏わせ、更に刺突の威力を高めたところに雪。
ジオを中心に吹き荒れ始める吹雪。それは瞬く間にその場を凍てつかせ、荒野を雪景色に変えていく。
「神狼聖域。昼も夜も関係ない。この白の世界は僕の物。神狼嵐!!」
ジオは吹雪の中で姿を神狼のものへ変えて、雪の嵐をキリエへ向けて放出する。
「って凍るわ!!」
「妾は涼しくて良いくらいじゃ」
アーサーは結界で身を包み、キリエは吹雪の中をレイピアを突き出しながら走り抜ける。
「オォンッ!」
ジオは吹雪の中から突き出されたレイピアを半身で避け、キリエの腕を噛みちぎらんとかぶりつくも、キリエはすぐに身を引き、それを避ける。
「オン!」
ジオは間を空けずに、爪で切り裂こうと追随。
「ヘルブレイズ!」
そしてキリエの背後には黒い炎を放出し続けるクレイモアを大きく振り上げるアーサー。
「挟撃か?だがーー」
甘い、と一言。レイピアを宙に投げ、両手の平からマナを放出して両者を吹き飛ばす。
「なんつー魔力だよ。少量のマナで、俺達を吹き飛ばせる威力……。やっぱただもんじゃあねぇよな。だが俺だってなぁ、英雄って呼ばれてるくらいにはつえーんだぜ?」
数メートル飛ばされたが、再びアーサーとジオは加速。
「おっらぁ!!」
「オォン!」
クレイモアを片手でロングソードを操るかのように振り回し、空いた手に結界を纏わせ、キリエの突きを防ぐ。
ジオは先程とほぼ同じく、撹乱をしつつ、隙あらば、鋭利な爪と牙。そして魔法で作られた氷柱を射出。違うのはジオが神狼化してることと、神狼聖域で周りを吹雪と化していること。そしてそれが、戦況を徐々に傾かせていく。
「やはり陽のある内に来たのは失敗じゃったかのぅ」
『そうだね。せめて夜だったら貴女も善戦できたろうに』
「ぬぅおりゃあ!!」
「一人会話する気がもうないようじゃな……!」
『そだね!』
積もる雪に足を取られ、体勢を崩したキリエを黒く大きなクレイモアが横に薙ぐ。
「ぬぐぅ!」
キリエはとっさに両腕を交差し、拳と拳で白刃取りをするように大剣を抑えた。
「なっ……?!」
キリエは腕を焼かれるのも気にせずに、威力が完全に削がれたところで、落ちてきたレイピアを手に取り、高速で突きを放つ。
「バリアッ!」
その突きを反射的に出した結界で阻み、バックステップで距離をとり、入れ替わるようにジオが氷柱を放ちながら飛びかかる。
「クフッ!」
氷柱がキリエの四肢を正確に穿つも、キリエの動きは止まらず、ジオの眉間をレイピアで突き刺す。
『あ、それ偽物ー』
キリエの突き刺したジオは氷で作られた氷像。本体は真上。氷でより鋭利になった爪でキリエを切り裂くように落下。
「崩脚!」
「クォンッ!」
対してキリエは跳躍して、マナの篭った蹴りを一撃、爪を肩に食らいながらもジオの腹部に叩き込む。
『うぅ……痛い〜』
「大丈夫かよ神狼」
『大丈夫〜だけどすぐ追撃しないと〜』
「妾の傷が癒えるぞ?」
今の戦いで氷柱に抉られた四肢も、アーサーに焼かれた腕も、徐々に傷が無くなり、癒えていく。
「妾はこの程度では負けぬ……だが、主らには妾の名を教えてやろう」
「キリエ……じゃねーんだったな」
「妾はノースフェラトゥの女王、アスリム。アスリム・ロードじゃ。主らを殺す者の名じゃ」
「いいや。殺るのは俺達だ。んだから俺の名も教えといてやる」
『じゃあ僕も〜』
「俺はアーサー・アルデバラン。神人と人族の英雄といえば俺の事だ」
『僕はジオ。ジオ・フェンリル。まぁ見ての通りしがない狼だよ』
「うむ。覚えておいてやろう。では行くぞ?……紅月!!」
ヒュンヒュンとレイピアで宙を斬ると、そこから紅い三日月型の斬撃派がジオとアーサーに向かって放たれる。
それをそれぞれ避けるがヒュンヒュンとまた連続でアスリムが紅月を放つ。
「お、おいおいおいおい!」
紅月を放つ速度がジオとアーサーに合わせて加速していき、レイピアが雪の吹き荒れる宙を切り裂く音と、斬撃派で地面が抉られる音が間を空けずに聞こえるようになり、僅かにアーサー達の身を斬って行く。
「バリアッ」
アーサーは避ける事をやめ、結界を発動させ一気にアスリムまで移動する。
「紅き月の贄」
その一言でアスリムのレイピアが紅く妖しく輝き、レイピアを振る度に紅い燐光と共に斬撃派が撃ち出される。
「神・剛覇剣ッ!」
「オォンッ!!」
アーサーは黒いクレイモアを虚空へ仕舞い、その代わりに取り出した光り輝く剣を薙ぎ、紅い斬撃派を打ち消しつつ、力を溜め、放つ。それをアスリムは一瞬地面スレスレまで体勢を低くしながら、アーサーへと突きを放つところでジオの氷柱が剣先に直撃して剣閃を反らす。そしてその隙を見逃さず、トンっと軽く飛んでアーサーが一閃。
「くぅッ!」
アスリムの肘先から腕が斬り飛ばされ、宙を舞い、鮮やかな血が噴き出す。
「血霧ッ!」
噴き出した血が地面につくよりも早く気化し、雪を赤く染めていく。アスリムはバックステップで距離を取ろうとするも、
「く、クフフ……」
「笑ってんじゃねぇよ」
アーサーの一閃で太ももから先を切断され、その場に落ちる。
「……傷が治らんな……」
「そりゃそうだ。聖剣の一つで斬って尚回復されたらこっちだって困るわ」
落ちた場所も自らの血で赤黒く染まり、血の霧も吹雪で霧散。
「妾の血を吸えば眷属にできたものを、妙な膜で防ぎおって。神狼は元より効かぬし……」
「テメェの負けだ。アスリム」
「そうじゃな……月が出ていなければじゃが」
そう、アスリムが上を向くと同時に、空が赤く染まる。
「んな、馬鹿な」
『太陽が……』
「妾の勝ちじゃ」
太陽は赤黒く染まり、照る日は影へ、空の青は紅く広がっていく。
「ノースフェラトゥの王、代々に引き継がれる奥義じゃ」
「なっ!?」
太陽が禍々しい色へと変わり、アスリムの本来の力が戻り、マナが放出される。
『せっかく、腕も足も切れたのに』
「いくらなんでも再生早すぎるだろ?!」
アスリムはその怒鳴り声を聞いてほくそ笑み、再生した手で髪をかきあげる。
「残念じゃったのぅ。これで妾の勝ちじゃ。英ゆーー」
「バリアッ!!」
『逃げろぉ!』
アスリムが背後からの凶悪且つ巨大な黒い炎に消しとばされ、ジオの吹雪を蒸発させ、アーサーが作り出した結界をも焼く。
「おおおおおおおおおお!!」
『が、がんば!僕達の命はアーサーの結界に掛かってるよ!!』
下手をすれば街へ直撃し、大惨事の原因となっていた炎は、三十秒ほどアーサーが耐えると燃え尽き、ゆらりと陽炎を残して消えた。
『あ、アーサー!助かったよ僕達!』
「あ、あぁ。お前は何もやっちゃいないがな。つか、俺達の出番はまだ終わっちゃいねぇみたいだぞ」
アーサーの視線の先を見つめるジオ。して、その先には
『ま、まだ生きてるの?!』
肌も髪も焼き爛れ、真っ黒に焼き焦げているアスリムが立ち尽くしていた。
「直撃で死んでねぇのはびっくりだが、もう虫の息に等しいな」
「わ、妾の、妾の身体が……あ、あぁ……ま、まだじゃ……貴様らの血肉を喰らえば……」
「どうせならこのまま死んでくれ」
「ガッ!?」
アスリムの胸に剣を突き刺すとアーサーは力を込める。
「や、やめよ……このままでは妾が本当に死んでしまう」
「心臓刺して普通に話すのやめろよ。ったく……」
「ぐぅあぁッ!」
突き刺された聖剣から光が一気に放出され、アスリムを内から焼き尽くした。
「くぁ……」
「何ッ!?」
アスリムはその場に倒れると同時に地面に魔法陣が現れ、その身を消した。
『今のは……召喚陣だね』
「アスリムを誰かが喚んだってか。つかカズマの野郎……ほんとに逃げて行きやがったな」
『僕はそれより炎放ってきた蜥蜴に物申したいね』
「それもそうだな」
二人はギル達が訓練していた森の辺りで、鬼神を踏み付け、雄叫びをあげている黒い龍を見た。
最近暑くなってきましたね〜
風はあるので窓開けてれば
まだまだ全然涼しいからいいんですけどね




