トレントだけどなんかおかしい
十日目……は皆でグダッとしてただけなので割愛!
んなわけで十一日目なんだが。
「えー今回は趣向を変えて、そこら辺から捕まえてきたこいつと戦ってもらうことにした」
アーサーが片手で掴んでいるのは翼もないのに空を飛べちゃう意味わからんとんでもびっくりなトレント。アーサーに対してびしっびしっと枝を当てるが、鬱陶しそうに顔を歪めるだけでまるで効いていない。哀れトレント。
「さて、トレントよう。お前がこの坊主を倒せたらお前を逃がしてやる」
トレントはその言葉を理解しているのか、枝を振るうのを止め、ジッと俺を見つめる。
「そんな見つめんなよ。照れるだろ?」
「いや照れてどうするんだカズマ。アーサー殿。そのトレントとはカズマだけで戦うのですか?」
「あぁ。その予定だ。ただいつも使わせてる鉄の剣だとすぐ折れるだろうから、グレードの高い物を使わせてやる」
「おー。ついに装備レベルアップってか!何使わせてくれるんだ?」
「名前はそのままだが、これだ」
アーサーが虚空から出現させたのは刀身が青く透き通るような色をしたロングソード。これは噂のミスリ……!!
「クリスタルソードだ」
「ミスリルちゃうんかい!!」
思わず叫んでしまった。
「と、とりあえず鑑定鑑定」
クリスタルソード
綺麗な剣。クリスタルゴーレムやクリスタルドラゴンの素材から作られる高級品。貴族御用達。強度はミスリルなどに劣るものの、マナを浸透させれば近い強度まであげられる。また、常時マナを貯めておけるので、足りなくなった時に自分が吸収することもできる。
「うん。普通にすげー良いもんじゃねぇかよ」
「まぁこのくらいなら幾らでも持ってるんだがな」
「どんだけつえーの持ってんだよ!」
また叫んでしまった。まぁ仕方ないよな。
「私達は鑑定スキルがないからよくわからんのだが、どれ程の力が秘められているのだ?」
「んーなんかマナを貯めると硬くなって、尚且つマナを貯蔵することもできる……みたいなってかリエール近い。めっちゃ近い。いつの間に背後に!?」
「いやぁ、綺麗な剣だなぁと思いまして。近くで見たいなぁと思ってたらいつの間にか……」
「見たかったら後で幾らでも見せてやるから、ちょっと離れような?なっ?」
「うーん残念です」
リエールはしぶしぶ離れていった。
「そろそろいいか?」
「お、すまん。ちっと素振りさせてくれ」
剣を受け取り、数回縦横斜めに振って、剣の癖を確認する。
「っし。おっけー問題ねぇ!やれる!!」
「そうか。待たせたなトレント。お前の命の掛かった戦いだ。全力でやれ。でないと勝っても負けてもお前には死しかないぞ?」
最後の一文をドスを聞かせてトレントに言い聞かせるアーサー。
「カズマ。お前もただの訓練だと思ってるみたいだが、こいつも立派なモンスターだ。異様に利口だが。生き死にが関わってんだ。遊びじゃねぇぞ?お前も命を奪うんだからな。ヘラヘラしてんじゃねぇぞ」
「お、おう」
んでやっぱこのトレント頭良いんだな。
「リエール。審判を」
「あ、はい!アーサー殿。じゃあカズマさん。構えて。ええと、トレントも」
「おう」
わっさわっさしてる。言葉はやはり通じてるのな。
「では、始め!!」
「うぅおらぁ!」
トレントは動きが遅い。だから先手必勝!と思ったんだけど、なんか華麗にバックステップ?で避けられた。その巨体でどうしてそんな早く跳べるのか教えてくれよ。
「アイスボール!」
牽制に詠唱破棄で氷球を出し、その後ろを追随。トレントは氷球を枝で払い、返す手もとい枝で俺の剣を受ける。
「うぉぉお!?」
これがいつもの鉄の剣ならポッキリいっちゃったのだろうが、これはクリスタルソード。存分に俺のマナを注いであるため、あっさりと。そうあっさりと枝ごとトレントの胴を軽く斬ってしまったのだ。
「オォン」
しかしトレントもただのトレントでない。この七十っちょいの階層でも生きていける力がある。
「この程度じゃまだやられないってか!」
「オォ……!」
トレントの周りに魔法陣みたいなのが展開され始める。
「させねぇよ!一閃ッ!?」
その魔法陣から、木の棘が大量に伸び、俺の一閃を弾き、身体を貫かんと迫るのを結界で防ぐ。
「っぶねぇなコラ!」
地面を凍らせ、そのままトレントもその場に固定……は出来なくとも動きは鈍らせ、
「オォ!」
られなかった!!普通に飛んだ!空高く!
「いやつうか降りてこい!」
「オォオオォン!」
「翔龍剣!!」
トレントが魔法陣から木の棘を撃ち出しながら、落下する。
それに対してマナを凝縮し、作り出した龍……にはやはりならず、中途半端な形のまま切り上げる。
「オォンッ?!」
魔法は結界で危ない物を防ぎ、そのままトレントの顔っぽい部分を縦に斬り、その勢いを殺さず、空中で向きを変えて横に一閃。
痛みで……トレントにあるのかはわからないが、トレントはバランスを崩して地面に落下した。
「オォ……」
「うりゃあ!」
そこに落下しながら剣を突き出し、トレントを貫く。
「ォォオオオンッ!!」
「っぐ……」
トレントはジタバタと暴れ、抵抗するも、しばらく耐えていると、その動きを止めた。
「勝者カズマ!」
「うぉあ?!」
死んだのかと思っていたトレントがリエールの合図でのそのそと立ち上がる。
「ええーぐえっ」
クリスタルソードは刺さったままだ。刺した位置が高かったからか、俺もそのままぶら下がってみると、トレントが怒って俺の事を叩き落とした。
「カズマ。トレントは本来、火で燃やすか、真っ二つにするくらいしないと死なねえぞ。コイツも何でだか倒れたままだったからお前の勝ちにはしたんだが」
アーサーはチラリとトレントを見るも、トレントは気に介せず、わさわさと枝を振り、リエールに襲いかかっている。ん?
「リエールゥ!?」
「いたっいやっ大丈夫なんですが!なんですかこのトレントほんとに!」
「止まれ。止まらなければ燃やすぞ」
ガイルが手に火を灯した瞬間、いや、燃やの辺りでトレントは微動だにしなくなった。つか顔の傷が無くなってきてる!?
「はぁ……さて。このトレントのこの後の扱いだが、殺すのは止めて、うちの庭で飼おう」
「え?飼うの?トレント飼うの!?」
「なんか珍しいトレントだしな。再生能力もあるようだし、人語を理解するとか、エルダートレントくらいだろう本来」
トレントは胸?はないけど身体を反らしている。顔も心なしかドヤ顔になっている。
「つかここまで人間くさいと、転生を疑っちまうな」
「え?この世界転生とか単語があったの?!」
驚き!!
「まぁたまにいるんだよ。前世の記憶を持ったまま生まれてくる奴が」
「へぇ〜」
「で、だカズマ」
「何だよ?」
「今日の訓練はこれで終わりにするから、後は適当にリエールとガイル達とやってろ。俺は今からフラトの躾を開始する」
「躾ってあたりで分かるけど名前なんでフラト?」
「フライングトレントをなんとなく略して付けただけだ。なんか文句でもあるか?」
「いや、ないけど」
一言言わせてくれ。安直だろう!!
「じゃあな!また明日だ」
「おう!」
アーサーはトレントの枝を掴み、片手にクリムゾンダガーを持って、帰っていった。
「帰っちったな」
「あぁ」
「やるか」
「やりましょうか」
俺達は俺達でまた訓練を開始した。




