久々のデート。
九日目。
俺とアリスは龍王通りと呼ばれる通りにて集まっていた。
「さぁ!デートだ!」
「はい!カズマ様!」
「いやいやいや俺達もいるから!デートじゃねぇから!」
二人の空間に割り込むギル。その後ろには少し俯いてるシュカと苦笑いでその横にいるセイル。
「んだよギル。人がせっかく盛り上がってるっつーのに」
「勝手に盛り上がるなっての」
「シュカ。言いたいことがあるんじゃないのですか?」
セイルに促され、俺達の前にシュカが来て、頭を下げた。
「主。アリス。先日はすまなかった」
「ん?おう」
「……ええ。大丈夫です。事実ですから。ただ」
「ただ?」
「いえ。なーんでもないです。行きましょう?」
「うむ……」
会話も程々に俺達は歩き出した。
「つか最初色々あって見れなかっただけだと思ってたけど、やっぱ全然店とかねぇな。それに人もあんまいないし」
「まぁな。基本的に龍族の奴らはそんなもんやらんでも生活できるし、風呂やらベッドやらは建国する時に人族から金銀財宝と交換したから、欲張らん限りは問題ねぇんだよ。んで人がいねぇのはまぁやっぱり人族に比べると仕方ねぇんだ。元々少ねえから。んなのにこんなでけぇ国作るから、人通りが少なくなっちまうんだよ」
「ふーん」
「セイル様ぁ!」
「おっと。おやオウカじゃないですか。どうしたんですか?」
「ジオと遊んでた!」
『ちょっと皆でお散歩しながらね』
三人の龍族の子供を乗せて、道の中央を闊歩しているジオがいた。
「随分人気者じゃねぇか」
『やっぱり人族とは違うね〜全然怖がらないでくれるから、僕も嬉しく思うよ』
「ジオもふもふ!もふもふ!」
「氷出してこーおーりー!」
ジオに乗っかってる子供達の要求にも真面目に応えて遊んでいるのを見るとフェンリルってことを忘れそうになる。なるだけで、体長三メートルの狼を見ていて忘れることはないだろう。
「しっかし龍族でも、やっぱり子供は子供なんだな」
「あーまぁな」
「基本的に年の若いのは見た目若いし、年食ってるのはおっさんおばさんにはなってるさ。ただ例外もある」
「例えばヘルロード様がそうですね。あの方もかなり高齢の龍ですからね」
「ふーん」
そういやあいつ一回すげぇ爺さんの姿で現れたしな。むしろあれが真の姿ってか。
「さて。アーサーの店とは別にまた隠れた名店とされる……」
「アーサーの店の隣にありゃある意味隠れてるよな。シンプル過ぎて」
「看板も地味だしな」
「あら。今日は私のところ?いらっしゃい」
ものすっごい暗い色の木製の建物から黒髪ポニテの綺麗な人が出てきた。
目の色もこれまた真っ黒で、首から顔にかけて所々に黒く小さな鱗が見え、白のシャツに黒のベスト。黒の蝶ネクタイに、んでもって黒のソムリエエプロンに黒のズボン。
「クロエさん。お久しぶりです」
名前もクロエ!黒ばっかか!好きなのか黒!
「セイル君久々ね。シュカちゃんも。ギルはこないだ会ったわね」
「あぁ。暗黒鍋の時にな。つか主!!あん時はよくも逃げてくれたなぁ!!」
「ん?なんのことだ?」
「この野郎本気で忘れてやがんな?」
「と、立ち話もなんだし、早く入りなさいな」
「おう。入らせてもらうぜ」
ギルを先頭に皆で入ろうとするが……。
『僕はどうしようかな』
「あ、すまんジオ!どっしよっかね」
『同席していいならするんだけど』
「んー。でもこの巨体じゃあな」
『そこの竜種みたいに人化するのは出来るけど?』
「出来るんかい!!つかなんで今までしてなかったんだ?」
『んー特に不便さを感じなかったからかなー。ご飯は外で取れるし、寝床も厩で……』
「おおぉう!ごめん、主従契約したのに放置しててごめん!人化出来ると知ってりゃちゃんと宿もとったのによ」
『いいよいいよご主人。とりあえずなるね』
「おう」
ヒュウッと冷たい風がジオを中心に渦巻き、それが晴れると同時に水色がかった銀色の長髪に金色の目をした少女がいた。全裸で。
「カズマ様!」
「へぶっ!」
アリスが雷の如く俺の頭を叩き、後ろを向かせ、
「ギル!セイル!こちらを見ないでそのまま店内へ!クロエさん、申し訳ないのですが、何か服を」
「あ、服忘れてたよ」
後ろでまた冷たい風が巻き起こり、後ろを向くと白い花柄ワンピースを着たジオがいた。
「つかその、服って何で作ってんの?マナ?ギル達もなんだかんだ着てたりするけど」
「そうだよー。騒がして悪いね。入ろうか」
皆も了承し、中へ入っていった。
「んで意外と中は綺麗なんだよな」
「外が汚ねぇみたいな言い方すんなよギル」
「そうよーギル」
「クロエ殿注文よろしいか」
「あ、はーい。ミコさんちょっと待ってくださいねー」
「ミコさん?」
「あ。セイル殿……カズマ殿一行ですか。こんにちは。私ここのカルボナーラにハマってしまいまして、ほぼ毎日通わせてもらってます」
ミコさん一人称私だけど男だよ皆。フルネームで言うと巫女さん大好きだったはず。
「そうですね。ほぼ、というより毎日来てくれますよね。私も売り上げが上がるし、ミコさんと話せるから嬉しいです」
「ええ。私もクロエ殿と語れるのは大変喜ばしいことです。……後々巫女装束を纏って頂ければ更に嬉しいですね」
「巫女装束……ですか?ジャホンの戦闘巫女達が着ていたあれを?」
「ええ」
ジャホンってなんだジャホンて。ほんとに現実なんだよな?ゲームでなくて、現実なんだよな?ジャホン……。日本っぽいとこなんだろうけど。
「因みにジャホンはどこの階層にあるか、などわかりませんかな?」
「ジャホンですと……」
ミコさんが凄い目でクロエさんを見てる。そりゃあもう目力が凄いというか血走ってる。
「四十二層……でしたと思います。ジャホンもかなり大きな国なので幾つかの階層に分けられていたと思います」
「そして四十二層というのは」
「人族でいう、王都に値する都市のある層です」
「……いかなくては!!」
「いや待て待て待て!!黙って聞いてたけど何を言ってんだかこのおっさん!」
「カズマ殿。私は本気です。私一人でも全力で階層を攻略します。あと一週間なんて待ちません。もうここから逆にぶち抜いて行きましょう。この面子ならもう少しレベルを上げれば出来るはずです」
「まぁ確かに出来そうな気もするけどよ、 一週間待って下から行った方が早くないか?俺たち多分下行ったら滅茶滅茶強いぜ?」
「……そうですな。そうしましょうか」
「イヤにあっさりと……」
「巫女装束についてはちょっと周りが見えなくなる時があるので、少し抑えて頂ければ問題ないのです」
「ご主人〜ご飯食べなくていいの〜?」
「っとごめん。クロエさん。皆にオススメの物をお願いします」
「では皆様、カルボナーラでよろしいですか?」
はい、と皆が頷くと、厨房の方にクロエさんは戻っていった。
「つか、カルボナーラは普通にカルボナーラって名前なんだな。パルメーさんはスパスタで一緒にしてたのに」
因みにメニュー名はスパスタ白。スパスタ橙などだった。
「パルメーさんですかー。あの方のカルボナーラも美味でしたな」
「おっ。ミコさんも食ったことあるのか。俺はアリスといったんだけどさ」
「ええ。クロエさんのカルボナーラ程ではないですが、あれもまた美味しいものでした」
「クロエさんのめっちゃ美味えんだな?!楽しみだな」
「ところで、ですが」
「んおう?いきなり話変わっちゃう?変わっちゃう感じ?」
「変わっちゃう感じですな。あの私達が通過した門、まだ存在しているのでしょうか?」
「そりゃあ……あんのかな?そういやわかんねーな。食ったら確認しに行くかい?」
「いえ。そこまでは良いですよ。多分無くなってますから」
「なんで?」
なくなってたらどうするんだ?ヘルロードなら開けそうだけど。
「もう、ここに来てから一週間程経ってますし、救助隊のようなものが来ていい筈なんですけど、未だ何も無いですからね。恐らく扉がなくなり来れなくなっていると思うのです」
「あー。なるほどなぁ。ギルーお前なんか知らねーの?」
「んぁ?知らねー」
「お前なんで若干寝かけてんだよ」
「主達の話が長いしつまんねーしだから眠くてなー。シュカとセイルとアリスは三人で話してるし、そこの狼は餓鬼どもと騒いでるし」
「そりゃー悪かったな。ほれこっちこい構ってやる」
「やめろ気持ち悪りぃ」
よし。ギルはスルーだ。無視だ。
「で、話の続きは」
「後にしましょうか。そろそろ出来る頃ですし」
「お、ホントだ」
「お待たせしました。当店特製カルボナーラです。美味しく召し上がりますように」
俺達の前にカルボナーラを並べていくと、小さく礼をして戻っていくクロエさん。
「よし。んじゃあ頂きます」
皆も一斉に一口。
「……」
「……」
「……」
美味い。誰かが呟き、
「うめぇええええ!めっちゃ美味えなこれ!!」
ファミレスとかで食べるカルボナーラとなんか比べちゃいけねぇ、モノ本のカルボナーラだった。トロリとしたソースも凄くクリーミーで濃厚な味わい……マジで美味え。幾らでも食べれそうだわ。
そんでそれぞれ皆食べ終わるなり、雑談し始めていた。
「お口に合ったようで良かったです」
「いやいや、これもう口に合わない奴いないんじゃねぇの?」
「龍の方は意外とこういう物より、アーサーの作る物の方が好きみたいなんですけどね」
「そんなもんなのか?いや〜これを食べないとか人生損してんな。つかおっさんの事呼び捨てする人珍しいな。仲良いんですか?」
「主、仲良いなんてもんじゃねぇよ。結婚してんの」
「けっ……!?」
ミコさんが目をむいて振り向いた。こえーよこえーよ。
「主人から貴方の事、よく聞きますよ?カズマ君」
「アーサーのおっさん……結婚してんのか……」
「んだから、アーサーとクロエの子供ってすっげぇレアなんだぜ?俺たち知性のある竜族と同じくらいな」
「ん?なんで?」
「アーサーはただの人じゃねぇのは覚えてるな?」
「ん、あぁ。ヴァルキリーと人のハーフなんだろ」
「あぁそうだ」
「あっ、なるほどな。龍族のクロエさんといるわけだから」
「あぁ。貴重な二人だ」
「二人?」
「ライカとオウカです。会ったことありませんか?」
「オウカもかっ!セイル大好きなオウカもかっ」
「そうです。そこで神狼と遊んでる子です」
「へぇー……つか今日ライカ誕生日なんだろ?一緒にいなくてもいいのか?」
「夜に皆で一緒に出掛けますので、それまで、ですよ」
「そっか」
「と、そんなことより主」
ちょっと離れた席にいたシュカが席を寄せてきた。
「ん?なんだ?」
「最近あまり飛んでいないので、飛びませんか?まぁ、来たければアリスも一緒に」
「来たければってなんですか。もう」
「まぁまぁ。そんな感じの約束もしたし、ちょっと行こうか。シュカがいればモンスターも怖くないしな」
「はい。行きましょう」
「んじゃクロエさんご馳走様。お代はギルに任せた」
「えっおい主?」
「そうか。ギル殿が払ってくれるのか。ありがたい」
「いや待て待てこの野郎。主はともかくお前まで奢る気はねえよ」
「あ、俺はいいんだな。よし、行こうぜ、アリス、シュカ」
「「はい」」
「おい待て、ほんと待てこの人数分をここで払ったらそれなりに俺の所持金が吹っ飛びかねん……っていねぇし!!」
ギルがごちゃごちゃ言ってるのをスルーして俺たちは外へ出た。
「さて。とりあえず街の外に行かねえとなんだよな」
「らしいですね」
「はい。一応街中で変身すると邪魔になりますし、万が一家屋を壊してしまうと申し訳ないので」
「んだな。行こぜ」
美少女二人に挟まれて歩く俺。自分で言うがイケメンだからそれなりに絵になるだろう。なるだろ!!ならないわけがない!!」
「い、いきなり何言い出すんですかカズマ様」
「美少女二人……美少女……ふふっ」
「あ、何でもない。……とは言えないくらいにシュカが照れてるから良しとしよう」
「ところで主」
「何?」
「戦闘訓練は順調ですか?」
「んーまぁまぁかなぁ。お前らのおかげというか、まぁおかげでレベルは大分上がったし、なんかステータスみたら、英雄の弟子っていう称号が出現してたし。つか久々にゲームっぽい感じだな。称号とか。ステータスとか」
「げぇむという物は正直よくわからないのですが、称号は神からの勲章みたいな物らしいですよ」
「そうなん!?」
「ええ。ステータスに補正がついたり、生きてく上で色々便利だったりします。でも逆に生きにくくなったりする称号もあったりしますよ」
「例えば?」
「端的に言えば虐殺者や狂人といった物です」
「あぁ〜ステータス見れちゃうからな。そりゃヤバいな。そんな称号つけられるような生活はしてないつもりだけどさ」
「カズマ様の場合、ヘタレとか天然とかつきそうですよね」
「あの、アリス、地味に毒吐かないでくれ。なんか刺さる。見えない体力が減る」
アリスの口撃!俺はさんじゅーのダメージを食らった!!
「残念な男とか無神経とかな」
「シュカまでっ」
シュカの口撃!効果はバツグンだっ!!俺は泣き崩れた!!
「さて、お喋りはこの辺にして、そろそろ飛びましょうか。主」
「おう」
「《竜化》」
シュカの周囲が風に包まれ光り輝く。その風が解かれるとそこからは緑色の綺麗な鱗のワイバーンが姿を現した。
『背に』
「いざ」
「よろしくお願いします」
『行きます!』
シュカは翼をバサァと羽ばたかせ、飛び立つ。
「うぉっおおおお!!」
まぁ、セイルとかギルの背に乗って飛んでいるわけだが(ヘルとも色んな意味で飛んだような気がするがノーカン)
「やっぱすげーな」
今はなんの用もなく、ゆっくりと下を眺める。
「つか城でけぇな、街と城の比重がおかしいだろ」
「まぁ沢山住んでいるわけではないでしょうし、こうなっちゃうのは仕方ないんじゃないですか?人族の城もあれくらいですよ。街の風景は結構違いますが」
「だろーな」
『主、今あるかはわかりませんが、あれば少し心に残る風景をお見せできるかもしれません。そこまで行ってもよろしいですか?』
「全然いいぜ。むしろ頼むわ」
『ありがとうございます』
シュカは南方へ方向を変え、ゆっくりと滑空し始めた。
シュカに連れてこられた場所は森の中の小さな洞窟。入り口は暗く、周囲からはあまり見えにくい所にあり、特に何もないように見える。
「この中、なんかあるのか?」
「ええ。変わっていないかの確認だけ少しさせていただきます」
身体を人に変えたシュカが周囲を警戒しつつ、洞窟の中に入っていく。
十分くらいした後、シュカが戻ってきたので、今度は三人で洞窟に入る。
「暗いな」
「ちょっと火を灯しますよ」
「頼む」
「そこの天井の低い所を通ってください」
「おう」
「んっ、滑りますね。気をつけてください。カズマ様」
「あぁ」
天井の低い小さな通路を通った先には人が二十人くらい立てる地面と、広い湖があった。
「何もないじゃないですか
。「見ててください。風よ、通れ。スルーウィンド」んっ。シュカ?いきなりな……に……」
「うをぉ……すげぇなこれめっちゃ綺麗じゃねえか」
シュカが火を消し、風魔法が放った思ったら、シュカの方から一斉に地面も壁も天井もエメラルドグリーンに色を変え、俺たちの目の前に底が見えるくらい透き通っている湖が姿が現した。
「これ、どうなってんだ?」
「ここの空洞は風魔石という、風魔法のマナに反応する魔石の塊なんですよ」
「じゃあ私達は魔石の中にいるってことですか?」
「あぁそうだ」
「うへぇ〜こりゃあ確かに心に残る風景ってやつだな。つか一生忘れねぇレベルだぞ。ありがとな、シュカ」
「喜んで頂けたようで、私も嬉しいです」
「あ、後な、シュカ」
「何ですか?」
「敬語、俺に別に使わなくて良いんだぞ。ギルなんて見てみろよ、主って前につけてりゃいいと思ってんだろ」
「でも、セイルは主に敬語で話してるではないですか」
「いやあれは元々そういう話し方なんだろ?デフォなんだろ?」
「まぁそうですが」
「ならお前も無理しねーで気楽に話せよ。アリスにはタメ口きいてんだ。俺だけ仲間外れみてーじゃん」
「……主がそう言うなら、敬語は止めよう」
「おう。そうしてくれ。さて。綺麗なもん見れたし、この後どうしようか?」
「三人でここでゆっくりしましょうよカズマ様」
「ん?弁当とか持ってきてねぇけど。シートくらいしかねーけどいいのか?」
「ええ。シュカも一緒に、カズマ様の世界の話とか聞かせてください」
「そんなんでいいならいくらでも聞かせてやるよ」
「私も主の世界の話は興味あるな。何でも鉄の塊が私達よりも早く飛ぶのだとか」
「あーそうそう。飛行機っつのそれでなーー……」
三人仲良く二時間ほど話し合い、仲直り?デートはグダッとしつつ終わった。




