俺とアリスのお話
短いですが。
大分不定期で申し訳ない。
行き渡りばったりなもので
八日目。
アーサーは一番最初に装備していた黒い鎧と、昨日使っていた黒龍の長剣を持って佇んでいる。
「お、おっさん?なしてそんなマジ装備なんだ?」
「……いやな?坊主の剣が出来るまで残り一週間切ったわけじゃないか。だからな。ちょっとちゃんとやってやろうと思ったんだよ」
「ちゃんと……ってどのくらい?」
「このくらい」
「はっ?」
七メートル程離れていた距離を、アーサーは音も無く近付き、俺の首元に剣を当てていた。
「うぉぉう?!」
「流石にここまではやらないが。二段階くらいな、上げるぞ」
『良い感じにやる気が溜まってるみたいだし、さっさと始めようか?四人共』
「おう」
ジオの言葉にガイル達も了承し、いつも通りの位置に立つ。ガイルは今回は剣を持っている。やはり相手の装備次第で変えてるのか?
『じゃあー、始め!』
ジオの合図と同時に俺とガイルが、突っ走る。二歩、三歩と行った辺りで、既に目の前にアーサーが迫っていた。
「ふっ」
「ぬぉわ!」
「うぐっ」
アーサーは一息に剣を振るい、俺とガイルを両サイドに弾き飛ばし、後ろで魔法を発動させようとしていたリエールに斬撃波を二閃放つ。
「はっ」
そこに俺が首筋目掛けて刺突を放つと、身体を後ろに傾け、スレスレの位置で避けつつ、右手の長剣で俺の左肩を突き刺した。
「うぐぁっっっ!!」
「ウィンドショット!」
痛みに蹲る俺を無視して、アーサーは剣を即座に引き抜き、風の弾を切り裂く。その横からガイルが斬りかかるも、剣を上段方向に大きく弾かれ隙だらけになった腹部をローキックで蹴り飛ばした。
「ウィンドスラスト!」
「遅い」
リエールが発動させた数多の風刃を後から斬撃波で斬り、息つく間も無く、リエールの背後に移動し、振り向いたリエールの顔を柄で思いっきり殴り倒した。
「リエール!!くそっ《半龍化》!」
「《半龍化》ァ!」
そして、ガイルは宙に飛び上がり、リエールは風を巻き起こしてアーサーから距離をとる。
「ヒール全然効かねえ治らねぇ……」
肩の傷は一行に塞がらず、血が流れるばかり。
「カズマ!」
「翔一閃!」
「っらぁ!!」
ガイルの叫びで気が付くとアーサーが俺の頭上にまで跳躍していたので、うずくまっていた態勢から無理やり跳ぶようにして一閃を放つが、二段ジャンプ……空力って技で避けられ、背後にきたアーサーに回し蹴りでリエール方まで蹴り飛ばされた。
「ぐぅ……いってぇ」
「今治します!ウィンドヒール!」
リエールの魔法で身体が風に包まれ、風を感じたところから痛み、傷が消えていく。
「今日のおっさんは随分気合入ってんな」
「まぁな。俺明日から二日こっち来れねえからよ」
「え?なんでっさっ!!」
軽く話しながらも、アーサーは斬りかかってくる。
半龍化を終えたリエールとガイルが防御を手伝ってくれるが、三人がかりでも次々に切り傷ができ、攻撃に移れずにいた。
「でぇ!なんでかっつーと!」
「うぉ!このっうぇ?あぶねっ?!」
でぇ!で横に一閃。なんでかっで後ろに半歩引き、つーと!でもう一度勢いを付けて一閃。
「娘の誕生日だからだ!」
「うぉ!おめでとう!」
「訓練中に私語は……とは思いますが、それはおめでとうございます。アーサー殿」
「おう。それはライカに行ってくれ。夕方辺りで迎えに来てくれるから、それまでちょっとシゴいてやるよ」
「うっ……や、やったるでぇ」
とまぁこの後も普通にボコられて終わるので割愛。
ところ変わって宿。
訓練後俺は迎えに来てくれたアリスと一緒に飯を食っていた。(今回の宿はルームサービス的なものがあった為というかルームサービスその物があったのでそれで注文している)
「カズマ様」
「ん?どした?」
食事中はあまり話そうとしないアリスが神妙な面持ちで俺を見て話し掛けるので、俺も手を止めアリスを見る。超見る。……今日も可愛い。
「カズマ様。先日、シュカが話していたことで、言いたいことがあるんですけど、よろしいですか?」
「おう。いつでもいいぞ。どんとこい。アリスのことだったら何でも受け止める所存だ」
つってもちょっとだけ、アーサーとギルからも聞いてるから、本当に何も知らない状態で聞くことともまた違うのだろうけど、今は言う必要はないだろう。
「……えっと、ですね」
「おう」
「ちょっと何から話せば良いのかわからないので、待ってもらえますか?」
「良いよ。ゆっくりで。待つから」
「はい」
余程緊張しているのか、何度か深呼吸を繰り返すアリス。
「……私は、多分沢山の人を、殺めてしまってるんです」
「……」
「昔、この世界では、魔族、人族、龍族、そして神人……と呼ばれる種族と戦争があって、ですね」
「うん」
「私はそこで戦い続け、ある時。四種族による決闘で戦争は終結しました。でも戦争が終わっただけだったのです。その先私達を待っていたのは、親や兄弟、恋人等を殺された者達との裏側の戦いとでもいいますか。表では終結後の盟約やその規定を取り決める中、私達はまた多くの死を生み出して行ったのです」
「……」
「……そして私は、その生活にうんざりして、復讐者の一人に身を差し出した筈なのです」
「え、アリス」
「そこからの記憶は曖昧で、よくわからないのですけど、凄く暖かい所にいて、綺麗な人が私に笑いかけながら話しかけてくれてたんです。なんて言ってたかも覚えてないんですけどね?」
「おぉ」
「そんな感じの時間が暫くしたあと、気が付けばカズマ様の前にいました。頭の中に、この人の言うことを聞けって響いて、正直困惑してたんですけど、カズマ様は私を見てポカーンって顔してたんです。悪意も殺意も無くて、物心ついた時から戦争の中で、悪意に晒されてましたからなんだか嬉しくて」
「……」
俯きつつも嬉しそうに笑うアリス可愛いマジで。あ、違う違う。真面目に聞かんと。
「後はもう大体ずっと一緒にいたから変わらないですよ?……カズマ様。私の手は殺した人達の血で沢山汚れています。もう、汚れ過ぎて手の色が見えないくらいに。それでも私を好きと、言ってくれますか?嫌わないでくれますか?」
「……」
俺を見上げたアリスの目は涙でうるんでいた。そこまで拒絶されるのが怖いのか。
「アリス。俺な」
「はい」
「アリスのこと好きだよ」
「それは、私の事ちゃんとは知らないでしょうし、実際にやったことを見ていたら、そんなこと言えません。ここはまだ龍族の国ですから、そんな誹謗中傷はされません。でも、人族の王国なんかに入ったりしたら、一緒にいるカズマ様だって沢山の悪意に囲まれます。それでも、良いんですか?」
「いや、つかな、そもそも俺見てないじゃんか。アリスから聞いただけだし、どうでもいい、とは思わないけど、俺の親や兄弟が殺されたわけでもねぇ。別にアリスに何もされてねぇわけだ。むしろ良くしてくれてる。それは過去の話を聞いても同じだよ。それにアリスが変わったりするでもないわけだし?」
「カズマ様……」
「その王国に入っても多分大丈夫だ。今はアリスの味方してくれる奴もいっぱいいんだろ。俺は勿論、ギル達三人、んでギルドの皆や、カナデさん達も」
「そう……でしょうか」
「だーいじょうぶだ!皆だってアリスに助けられてんだ。今更何言われたって大して気になんねーさ」
いや、正直どうなるかわからんけどさ。
「……では、カズマ様を信じます」
「おう。信じろ信じろ。そうしてくれたら俺のアリスに対するラヴなパワーが強くなるからよ!」
「ふふっ。馬鹿みたいです」
「ぬっ?馬鹿だとぅ?!」
「いえいえ。自分がです。選ばれる手前言われてたんです。『貴女を選ぶ人はよっぽどのことがない限り、貴女を裏切ることはないでしょう。だから安心しなさい』って。私はそんなことあるわけないって思ってたんですけど……その通りになりましたし……」
「そっか。その人の目は間違ってないないな。俺はアリスを裏切らない。アリスの味方で有り続けるよ」
「はいっ」
「さて、そろそろ飯食おうかね。冷めるぞ」
「というか冷めちゃってますね」
「しゃーない」
二人の見えない溝がなんだか埋まったような気がした。
日にちの数え間違いがあったので修正しました!




