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訓練?襲撃?主従契約?

「そろそろやられろよ!」

「まだまだ俺を倒すにゃ足りないな坊主!」


五日目の訓練である。

俺とガイル、リエールの三人でアーサーを倒せるようになるための訓練……目的が違う?いや倒せれば達成したも同然だろ。と!思いつつやってはいるが!!


「なんでこうも相手にすらならねぇかなぁ!」

「ほんの数日で追い付かれたら俺が悲しいわ!」


もう何度放ったかわからない一閃軽くいなされ、リエールの風を切り裂き、ガイルの炎の剣を蹴りの風圧で消しとばす。

俺達が戦法のレベルを上げる度にアーサーは合わせるように戦ってくる。どこまで差があるんだか。


「ほらほら何考えてるかわかんねぇけど、そんな暇あんのかよ!?」

「うぉわぁぐんっ!?」


足払いで一瞬宙に浮いたと思えば顎を掴まれ、そのままリエールに投げ飛ばされ、リエールの発動した魔法に吹き飛ばされる。


「あぁぁああぁあぁあ〜!!」

「んの馬鹿!」


墜落する直前でガイル先生が俺の身体をキャッチしてくれた!お姫様抱っこで。


「……いやん」

「……るぁ!!」

「せっかく助かったのにぃいい」


アーサーに向かって力任せにぶん投げられる俺。俺はその勢いで剣を振り下ろすのに対してアーサーは何故かその手に木の棍棒。棍棒を大きく薙ぎ、まるで今この瞬間だけ野球をしてるんじゃないかと思うほどのクリーンヒット。


「ぐぼぁ!!」

「あ」


慌てて剣で防御しようとしても身体が追い付かず、アーサーに腹部を殴打され、訓練場の端の方まで転がった。


「ゴホッゴホッ。いってぇな」

「カズマさんすいません」

「お、おうリエール、問題ねぇよ」

「坊主共」

「ん?なんだよおっさん」

「一回昼にしよう。ライカが来てくれたみたいだからな」

「お父さん!」


入り口の方からメイド服の女の子、ライカがアーサーまで駆け寄るとアーサーがライカを抱き上げ頬ずりを始めた。


「いやー仲良いですねー」

「ったりめーよ。この世界に二つと無い宝物に嫌われちゃ俺はいきてけねぇからな」

「私お父さん嫌いになんかならないよー?」

「いやいやアーサー子供については甘いな。年取って思春期に入ればまた態度が変わって彼氏とか作っちまうんだよ」

「うるせーライカは誰にもやらねーよ!」

「まぁ、そん時のライカちゃん次第だろうけどな」

「私はお父さんとずっと一緒です!」

「お、わりーわりー。お父さん好きか?」

「大好きです!」

「……ッ!!」


アーサーが顔を赤くしてプルプル震えている。いや悶えていると言った方が正しいのか?


「お父さんもライカのこと大好きだぞ!!」

「うにゅっ……えへへ」


この前みたいな鎧じゃないからライカの方も嫌がってはいないみたいだな。こちらも好きと言われて照れてるし。


「あ、てか思ったんだけどさ」

「どうした?」

「こないだの話聞く限りじゃ、アーサーのおっさんは神人……つまりヴァルキリーと人間のハーフなわけだよな?」

「あぁ」

「じゃあライカちゃんってヴァルキリーと人間の血も入った龍族ってなるのか?」

「まぁ、そうなるな」

「将来おっさん超えちゃったりするのかな」

「今から真面目に鍛えればわからんが、俺は娘をそんな戦闘馬鹿にするつもりはないぞ」

「可能性の話を言っただけだよ。さぁ突っ立ってんのも邪魔だし飯食おうぜ飯!」


若干空気だったリエールと完全に空気だったガイルを連れ食堂へ足を運んだ。




「てかさ、俺の剣って予定だとあと二日で出来るんだよな」

「らしいな。正直なところ、カズマが使い切れるとは思えないな俺は」

「そうですねぇ。ヘル様が作らせる物なら相当なレベルの剣が出来上がる筈ですし」

「んだけど使えるようになんねーといけねーからさ」

「そもそもお前らなんでそんな頑張る必要があんだ?」


アーサーが不思議そうな顔をして問う。なんで、か。


「まぁ、俺は別にこの世界にいられるのは嬉しいことなんだけどさ。他の人達は元の世界、地球ってとこに家族とか恋人とか大事なもん残しちゃってるわけだから、帰るために頑張ってんだよ」

「んで?じゃあなんで坊主は力を付けようとしてんだ?」

「そりゃあ、アリスを守れるようになる為だよ」

「戦わなけりゃいいじゃねぇか」

「え?なんで?」

「お前らの事情はよく知らんけどな、お前はこの世界で暮らすって決めてんだろ?」

「あぁ。その予定だが」

「じゃ、そこいらの街で冒険者やって稼いでた方がよっぽど安全なんじゃねえか?ギルとかセイルとかも一緒にいるわけだし、金には困んねーだろ?」

「いや、でも俺達も参加した方が攻略も進むしさ」

「そんなもん、帰りたいやつらだけでやらせりゃいいじゃねぇか。坊主らがわざわざ危険犯してまで、手伝う必要無くねーか?」

「ん、んー」


なんか段々アーサーの言ってることが正しいような気がしてきたな。


「カズマさん。僕もそう思いますよ。戦争など、止むに止まれぬ事情があるならまだしも、カズマさん方が、やる必要はないと思います」

「そうかな?」

「どうせならこのままここに住んでもいいんじゃねぇか?家にも空き部屋の一つや二つくらいはあるから貸してやれるぜ?」

「むー。それもすげぇありがてーけどなー……」

「かずまー家来るの?」

「ん?いや、んなことは多分ないよ?」

「お父さん、かずまーのことも好きみたいだから、私は良いと思うよう?」

「す、好き?」

「うんーお家帰って来るとね?かずまがーとかガイルがーとかリエールがーとか楽しそうに話すの」

「おっさん。そんなに俺達のこと……」

「だぁぁぁ!うるっせぇ!ライカ。この阿呆共にはそういうこと伝えなくていいからな?」

「はぁい」


まだ会って一週間も経ってないけど……ガイルもリエールも、アーサーのおっさんもなんか優しいな。

気恥ずかしいぜ。


「さて、そろそろちゃんと食って訓練の続きしようぜ」

「そうだな」




昼休憩も終わり、訓練を始めようとした時、街の外壁の方からカランカランと鐘の音が響いてきた。


「坊主!訓練は中止だ!」

「え?なんで?!」

「わからんが警鐘が鳴らされてんだ!なんか来るぞ!」

「マジで!?こんな龍の国に攻めて来るやついんのかよ!?」

「そりゃいるさ!人族も神人も魔族もさ!」

「ちなみに一度目の相手は!?」

「神人だ!」

「なんか最初がそれとか何と無くえげつねぇな?!」

「えげつねぇ?んなもんじゃ物足りねーよ。地獄だわ」

「アーサー殿!そろそろ……」

「そうだな。無駄話はこの辺にして行くか!三人とも!」

「「「おう(はい)!」」」

「ライカは家で母さんと地下室にいろよ?」

「うん。お父さん、頑張ってね!」

「おう!龍王だろうと魔王だろうとぶちのめしたらぁ!」

「アーサー殿……」


龍王の統治する国で龍王をぶちのめす発言は如何なものかと思わないでもないがつっこまない。


「よし、飛ぶぞカズマ!」

「いや俺飛べねぇ!」

「俺がお前を運ぶってことだ!アーサー殿は問題ないでしょう?」

「あぁ!行くぞ!」


アーサーの足元が弾けたと思えば、かなり上の方まで跳んでいた。


「つか二段ジャンプどころか連続で跳べんじゃねぇか」


今度教えてもらおう。と思いつつ、ガイルに負ぶってもらう。


「よし、《半龍化》!」




セイル班、シュカ班と合流し、森の半分辺りまで戻ったところで奴はいた。


「おい。セイルこりゃあヤバイかもしれねぇな」

「……ええ。まずいです。この状況で戦闘になれば、まず守り切れません。とりあえず気付かれないように降りましょう」

「どうしたの?」

「アリス。見えるか?」

「ん?……え?」


アリスが俺の指差す先に居た物を見て唖然とする。


「彼奴のことは覚えてるのか」

「ええ。少しだけ。あれは……アポストルね。何でこんなところに」

「恐らく前の襲撃の生き残りだろう。ここいらの魔物を喰らって生きてたんだろ」


アポストル。神人が生み出した生物兵器の一つ。形は個体によるが大体は初期状態は今は亡き巨人族のような奴で、三メートルくらいの背丈なので割とわかりやすい。が、マナを多く持つ者や、魔力が強い者を喰らって自らを強化し続け、その力に適した形に進化するうざってえ奴ら。今回は比較的人型を保っているようだがな。しかしゃ神人単体でも強いのに、奴らは人族の真似してそんな兵器を作り上げたらしい。厄介な物を作ってくれる。

終戦後も神人の兵器は自立稼動式な為に勝手に動き、初期の命令通り各国を滅ぼそうとする。更に厄介なのが、有る程度の思考力がある為、味方が近くにいる場合は徒党を組んでやって来る。結論。面倒な奴ってことだな。


「んじゃアリス。上手く距離を取りつつ、迂回して行くぞ。彼奴がどこまで強くなってるか、わからねぇし、もし俺達全員でも勝てねえ個体だったら街もやべぇからな」

「わかったわ」

「シュカ。お前はカナデ達に経路変更と探知系の魔法をやめるよう伝えてこい。セイルは彼奴に気付かれた時の為に戦闘準備。だが気付かれるまで竜化はするな。マナの動きで気付かれるからな」

「「はい」」

「アリスはあいつらを先導してやってくれ。俺は出来る限り寄ってくる魔獣を弓で殺すからよ」

「わかったわ」

「……」


セイルが剣を取り出し、戦闘準備が出来たところで行軍開始っと。


「……」

「……」


皆が行き以上に緊張した面持ちで静かに歩く。

時折魔獣がこちらを見付けるが……襲いかかってはこない。それは嬉しいが、嬉しいのだが。おかしいな。威圧も放ってねぇのに何で……。


「シネ」


一言。ついさっきまで二百メートル程あった距離が、一瞬にして縮められていた。


「隊長!!」

「あぁ!!」


俺とセイルは一瞬で《纏》を発動させ、牽制で炎の矢と水の斬撃を放ち、アポストルを足止めする。

つか、あの野郎、最初から気付いてやがったな!


「アリス!俺とセイルでコイツを抑えるからお前とシュカでこいつら連れて逃げろ!んで守衛に伝えろ!アポストルが来た!ってな!」

「わかったわ!でも二人だけで大丈夫?!」

「問題ねぇ……!!んでも俺達だけじゃ倒すのは無理だ!恐らくだが

、ここら辺の魔獣全部あいつの配下だから囲まれたら対処が大変なんだよ!だから早よ行け!」

「わかったわ!行くわよシュカ!」

「ーーあぁ!」


アリス達が山を駆け下りて行く。

後ろから襲おうとする魔獣共を矢で貫き、背後に佇むアポストルを見据える。


「お前、わざと逃がしたな?」

「雑魚ニハ興味無イ」

「ほう。シュカやアリスもいるのに雑魚と評するか」

「アァ。我ガ喰ラウ迄モ無イ」

「そうか。ならお前の力この俺様が測ってやるよ!!」

「フン!我ノ力ノ糧ト、成レ!」


アポストルは虚空に手を翳すと光を放ちながら剣がその手に握られた。セイル程の長さの大剣だが、アレが持つと普通の剣に見えて仕方ねぇな。


「来いやぁ!!」

「ヌゥン!!」


ブゥォン!!とアポストルが一度薙ぐだけで、衝撃波が生まれ、周囲の木を薙ぎ倒している。


「見晴らしが良くなったな」

「呑気に感想言ってないで行きますよ。隊長」

「おうよ」


セイルは大剣を担ぐと、アポストルに向かって駆け出す。

アポストルもそれに合わせるようにセイルに向かって跳んだ。


「ウォォ!」

「ハァッ!」


アポストルが剣を振るのと同時にセイルも振るい、二人の剣が交差する。単純な力では強化され続けているだろうアポストルの方が上だが、セイルも馬鹿ではない。

自身の身体を逸らし大剣を傾かせアポストルの剣を受け流し、そのまま左の太ももを斬る。が、


「刃が通らねぇか!!擬似メテオレイン!!」


勢いで通り過ぎるセイルを無視して、アポストルは俺に向かって走り出した。

それに対して炎の矢を連射する。


「効カヌ!」

「ダメージを与えるのが目的じゃねぇよ!ここが森だってこと忘れてねぇか?」

「ム?」


薙ぎ倒されてはいるが、燃やすにはさしたる問題はない。そもそも湿気のねぇ場所だ。燃え始めた火はそう簡単に消せねぇぜ?


「ダガコレガ何ダト言ウノダ?」

「炎はどんな炎だろうと総じて俺の自由だ。俺より炎に優れた者がいない限り、炎が燃え盛る場所で俺の負けはねぇんだよ!!」

「フン!我ガソノ炎、打チ消シテクレヨウ!!ハイドロブラスト!!」


アポストルが無詠唱で水弾を放つが、セイルがいる場所で水を使うのは悪手だよ。


「その水、使わせてもらいます!水流連斬!!」

「小癪ナ!」


アポストルの水弾がセイルの大剣に纏われている水刃に吸収され、背から斬り掛かられるところをアポストルは力任せに弾き、セイルを蹴飛ばした。


「ブレイズショット!!」


周りの炎を集めて炎弾を三つ放ち、その一つ一つ同じ射線で矢を放つ。


「オァ!」


アポストル側から見れば炎弾の後ろに付いていた矢は見えなかったのだろう。炎弾を撃ち落とすことはできたようだが、炎の矢をモロに顔面に食らっていた。


「あっはっはっはっ!ざーまぁ!」

「ヌゥ、貴様、我ヲ愚弄スルカ!赦サヌ!ホーリィレイ!!」

「うぉ!?っぶねぇ!!」


アポストルの剣から真っ白な光が放たれ、慌てて避けると、俺のいた場所が焼け、背後にいた魔獣の前脚に穴を開けていた。


「これ、当たったらヤバイ奴じゃねぇかよ!」


ホーリィなのに全く神聖さを感じさせない魔法だな!


「セイル!ささっと潰すぞ」

「わかりました隊長!」


セイルは再び大剣を肩に担ぎ、俺は炎の矢を引き絞る。


「貴様ラ愚鈍ナ竜如キニ負ケルモノカッ!」


アポストルは剣をセイルに向け片手を俺に向けると先程の光線を放ってきた。


「水竜斬!!」

「ドラゴンアロー!!」


セイルは水刃で光線を裂き俺は龍の矢で光線を貫きは出来ずとも相殺させることは出来た。


「……お前何時からいたんだ?予想していたよりも、大分弱いんだが」

「フン。我ガ貴様ラ如キニ完全ナル力ヲ見セヨト言ウノカ!」

「あんまり油断してっと、本気出す前に殺すぞ、お前」

「ウヌ……ナラバ……一瞬デ消シ去ッテヤロウ」

「隊長!何をその気にさせちゃってるんですか!?」

「いや、多分大丈夫」

「聖ナル剣ヨ、我ニ仇為ス者ヲ、滅殺セヨ!ルインブラスター!!」

「カァッ!!」


白い光の中に真っ黒な波動の篭った光線に対して、最高威力のブレスを放つ。

俺のブレス奴の光線と一瞬だけ拮抗し……突きーー抜けた!!


「ナヌ!?」


しかしブレスは当たる直前で横から出てきた魔獣に当たり、打ち消されてしまった。


「チィッ盾にしやがったな」

「隊長!魔獣がどんどん強くなって来るし、なんかやたら増えてきてますよ!?変異種まで出始めましたし!そろそろ退きましょう!」

「時間切れってか……?」


「ククク。我ノ力ノ本質ハ配下ニシタ魔獣共ヲ強化シ進化サセル事!貴様ラト戦ウ事デ、更ナル力を配下ニ与エラレタ!感謝スルゾ!駄竜共!用事モ済ンダーーモウ手加減ハセヌ。消エ失セルガ良イ!ジャッジメントブラスーー」


流石にヤバいか?!と思ったら空から何かが落ちてきてアポストルの身体を貫通し、地面に突き刺さった。


「ーーアァ?何ダ?コ……レ……」


そしてアポストル呆然とした表情のまま仰向けに倒れた。


「何が出たかと思えばアポストルか。雑魚じゃねぇか」

「いや、アーサー殿が強過ぎるだけですよ……普通アレを相手にするなら龍族の兵士四人は必要ですから」

「俺なら一人でも倒せるがな」

「ガイルさんは火力推しで行ってギリギリ一体じゃないですか。しかも強化もマトモにされてない初期型の」

「どちらにせよ雑魚だ」

「アーサーか」

「ようギル。苦戦してたみてぇだな?」

「苦戦じゃねぇよ。相手の力見切ろうと思ったんだがな」

「遅過ぎんだよ。目悪くなったんじゃねぇか?」

「うっせぇ」

「とりあえずうじゃうじゃうぜぇなカズマ、ガイル、リエール。お前らで倒せ。危なくなったら助けてやる」

「やってやらぁ!」

「カズマ!待て!お前じゃ下手したら一撃死だぞ」

「主ぃ!?なんで来てんだ!?死ぬぞ!?」

「あれ俺死確定ぃ!?」

「確定も確定だよ!一撃であの世行きだぞ主!」

「そういやここ七十層超えちゃってるんだったな!!忘れてたわ!でもなギル。お前ら一つ忘れてるよ」

「何が?」

「お前らの主は今俺。それは良いな?」

「すいませーん主ー!それは良いんですけどー!ちょっと私一人じゃ大変かなーなんて!」

「ガイル。リエール。お前ら先やってろ」

「「わかりました」」


ガイルとひ弱っ子リエールが魔獣達に突っ込むのを面白そうに見てるアーサーには何も言わないとして。


「んで主なんだってんだよ?」

「お前らがここの魔獣一体倒すだけで、俺には腐る程経験値が入るわけだよ。知らぬうちにパワーレベリングだよ俺。最初気付かなかったけどさ。昨日からもうがんがんレベルアップしてんだよね」

「お、おう」

「今日さ、いつも通り訓練しててっつってもちょっと遊んでたけど、あんまり痛くねぇんだよ。速度もいつもより遅く見えるし。レドウブラッドの時は階層が違ったから、レベルに差が出来たわけでさ」

「つまり俺達三人……いやアリスもいるから四人か。その四人分の経験値が」

「俺に入ってるわけ。現在進行形で」

「んじゃあ、試しに一体やってみるか?主」

「おう」


主がボロボロの鉄の剣片手にスノウウルフェンの前に立った。


「ーーらぁ!」


主ぐらりと態勢を崩したかと思えば物凄く低姿勢で駆け、スノウウルフェンとは言えばキョトンとした顔で主を見ている。それもその筈。確かに主は強くなっている。意外な程に、加速力が物凄いことになっている。だが。


「「「その剣じゃ無理だろう」」」


主の持っていた鉄の剣は、スノウウルフェンに触れた時点で根元からポッキリと折れていた。


「クゥーン?」


何故だろうか。スノウウルフェンにすら哀れまれている気がする。あ、ポンポンされてる。


「あ、うん。ありがとう。俺お前に襲い掛かったのに慰めてくれるんだな。優しいんだなお前」

「オンッ」

「おぉ、もふもふだぁ〜」


懐いてるし!懐かれてるし!


「あ、お前の仲間このままじゃいっぱいやられちゃうぞ?何とかしなくていいのか?」

「……」


横に首を振るスノウウルフェン。いや、つかコイツスノウウルフェンじゃねぇかも。


『あの子達、僕の仲間じゃないよ』

「ぬぉう!?お、お前話せんの!?」

『うん』


男とも女ともとれる中性的な声が頭に響く。


「いやいやいや何だコイツここら辺にこんな狼いなかったぞ?」

『うん。だって僕お散歩して、ちょっと疲れたからお昼寝してたら、いつの間にか道がなくなっちゃって帰れなくなっちゃったんだよね』

「んじゃーお前俺と来ないか?」

「はぁ!?主何言ってんだ!?魔獣だし、種族すらわかってないんだぞ!?」

「そこはほら……教えてもらえばさ。な?良いだろ?」

『うん。良いよー。おにーさん面白いし』

「ん面白いか?これまでに面白いことなんかあったか?」


あった。あったよ主。強くなったって息巻いて、ノリノリで斬りかかって剣が折れちゃってシュンとしてたじゃないかあんた。挙句の果てに斬りかかった相手に慰められてたじゃないか主。


「ま、いいか。これからよろしく」

『うん。じゃあ主従契約でもしとこうか?』

「ん?」

『そうしとかないと人族の街とか僕入れないよ』

「そうなのか。じゃあしよう」


もう主達マイペース過ぎるだろう。まぁ大分周りも掃除し終わったみてーだし、このまま眺めてるか。


『おにーさん名前は?』

「俺はカズマだ」

『わかった。じゃあ早速。《僕、ジオ・フェンリルはカズマを主として認め命ある限り支えると誓おう》はい。カズマ僕に同じように言って。あ、僕を従魔って言ってね。誓いには僕がマナを流すから心配せずに唱えてね』

「お、おう?《俺、カズマはジオ・フェンリルをじゅ、従魔として認め?命ある限り?支えると誓おう》うぉう!?」


主達が唱え終えると、狼、ジオと主が一瞬だけ光に包まれ、すぐに霧散した。


『はい。終わり。これからよろしくね?ご主人様?』

「おう!よろしくな!ジオ」

「坊主……お前、気づいてないのか?」

「ん?何が?」

「主、そいつ、ってかその方と言うべきか名前、ちゃんと聞いてなかったのか?」

「?聞いてたさ。ジオ・フェンリル……フェンリル!?」

「ようやく気付いたか。コイツ魔獣なんかと一緒にしたら駄目だぞ坊主。なんてったって神獣だからな」

『僕なんか有名っぽい?』

「有名も有名。有名過ぎて逆にどうしていいかわからねぇよ俺」

『そっかーまぁ、仕方ないよ!諦めて!それよりご主人様!街に早く行こう?』

「いや待てってまだちょっと狼勢……」

「主達が延々とくっちゃべってる間に殲滅されたよ」

「あ……ごめんガイル、リエール。そんでもってセイル」


俺も含めて最後名前にルが良く付くな。




そんなこんなで今日も気楽に終わ……らなかった。


「ギル。何か申し開きはあるか?」

「い、いえ?」

「話に聞けば、アーサーが一太刀で終わらせるような輩に恐れて警鐘鳴らせて?ワシの休みを潰したと?」

「あ、いや、アポストルって結構危ないでしょう?万が一の事があったらと思いまして、あの場にはシュカもいましたし」

「もう言い訳は良い!ワシの休みを潰したこと後悔してもらおう!」

「ちょ、やめ、ヘル様?まっ、ああああああ!!」


今日はいつ寝れるのかなと思いつつ俺は謝り続けるのであった。

……くそッ。

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