訓練!(アリスサイド)
ものすっごいお久しぶりです。
「そろそろ半分行ったか……?」
「遠くの方で爆音がするんだけど、大丈夫か、な!!」
アリスがスカイレオの横っ腹を燃える拳で殴りつけ、数メートル程吹き飛ばす。
「ヴァルキリーだからかどうかはわからねぇけど、おっまえ、すげー強くなんの早いな。昔の俺とか見てたらキレるぞ」
「ふぅ……私はカズマ様のおかげでスキルに恵まれてるからね。回復の必要も無ければマナが枯渇することも殆どないし、戦い続けられるからこうも強くなれるのよ」
「ほんとなんかせけぇな。種族自体がつええ種なのに、スキルにも恵まれてる辺り。主で言うところのチートっつのか」
「……そうねぇ〜」
「お、起きたか」
カナデが気絶から復活し、キョロキョロと周りを見ながら同意する。
「他の子達はどこに……?」
「お前らでいうところの、ぱわーれべりんぐってやつをやってるよ」
「大丈夫なの?」
「んーまぁ問題ねぇだろ。あいつら戻ってきたら次お前らな。三十層くらいまで通じるくらいにはしてやるよ」
「三十……」
「んでアリスはもう通じるレベルになってるけど」
「はぁ!!」
二人がのんびり話している間にも、アリスは襲い来るモンスターを狩り続けている。
「もうあいつ一人で一体狩れるようになってきてるし。あ、邪魔すんな」
ギルはアリスの背後から襲い掛かろうとしているスカイレオの頭を炎の矢で射抜く。
「ここもなぁ上に行けば敵も強くなるんだが、ここらじゃどうにもな」
「あの〜多分私達ここでもかなり危ないのだけど、更に上にいかされるの?」
「当然」
「はぁ〜」
「ギル!」
「なんだ?」
「襲ってくる魔獣がもういません!!」
カナデが目を覚ましたため、堅苦しい言葉遣いに戻るアリスに溜息しつつ、ギルは言う。
「んーじゃあ放置。シャドーボクシングでもしてろ」
「はい……」
「あ、じゃあ〜アリスちゃん。私と戦ってくれないかな?」
「いいですよ」
「手、手加減してね?」
「ええ。その程度は心得てますよ。数回カズマ様と試合もしてますし」
「そんなことしてたの?」
「ええ」
「カズマ君はどのくらい相手になった?」
「正直、弱かったですね。反射神経はレベルに見合わない程高くはあったんですけど。それ以外がちょっと……」
「ちょっと残念な子ねぇやっぱり〜」
二人は話しながら距離をとり構える。
「じゃあ少〜しお手合わせお願いするね〜」
「いつでもどうぞ」
「……いくよぉ!!」
カナデがその場で剣を振り斬り、風の刃を二つ放つ。
「無詠唱ですね!」
その二つを闘気を纏った拳で打ち消し、アリスはカナデに向かって跳んだ。
「せぇりゃあ!」
「紅蓮拳!」
アリスの炎の拳を左手のバックラーで上に逸らし、アリスの左肩に剣を突き刺す所で身体が揺れる。否。アリスが力強く踏み込んだ事で、地面が揺れたのである。結果、カナデは足を取られ前屈みになる。
「ッ!?」
「隙あり!」
「なんて、ね!」
アリスがそこに膝蹴りを入れようとすると、地面が爆散し、両者が吹き飛ばされる。
「ボム?!」
「ウィンドブロウよ。軽装備だし、マナを多めに使うと反動で大幅に距離をとれるのよ」
「……なるほど」
「ほたるん!」
「蛍の形をとる微精霊でしたね、回復能力がある」
「ええ。いい子よ。と〜っても」
ほたるんはカナデの周囲をクルクル周り、カナデの体力を回復させていく。
「私もスキルで回復できますからね。この程度なら、痛くも痒くもないです」
「ウォームアップはこの辺して、試させて貰うわ!魔法と剣のオリジナルスキル!」
「ふふふ。素直にそれをさせるわけがないでしょう」
アリスがすぐに距離を詰めようとするが何かに気が付いたようで、立ち止まる。
「気付いちゃったか〜私の秘密スキルその一!」
「これは…」
「「重力魔法!」ね」
「これ最初扱うのには神経使ったんだよ〜。加減間違えると味方も潰しちゃうし」
「こ、怖いです」
「とにかく。私はスキルのおかげで一通りの重力魔法が使えちゃうのです!」
「わざとらしい説明だな」
「そこ、水をささない」
「はいはい」
炎を指先で弄びながら退屈そうにアリス達を眺めるギルである。
「さって!」
「ならその全てを防いでみせます!」
「ウィンドブロウ!」
「あれ!?」
カナデが風の魔法を放つと同時にアリスが転がり避けようとするが、前のめりに倒れこむ。
そこにカナデの放ったウィンドブロウが直撃する。
「あぐっ」
「更に〜!」
「えっ」
顔を顰めつつ立ち上がろうとするアリスの身体が浮く。
「足が着いてなきゃ、アリスちゃんもよけれないでしょ!」
「そんなことは無いですけど」
ここぞとばかりに斬りかかるカナデの剣を闘気だけで受け止め、重力魔法が切れると同時に剣を蹴り上げ、隙だらけになった胴部に魔力弾をぶつけて吹き飛ばす。
「いたた……魔力だけで剣を受け止めるってどんな技よ」
腹部をさすりながら立ち上がり魔力弾を牽制に放ち離れるカナデに笑顔で答えつつ魔力弾を魔力の壁で弾くアリス。
「いえいえ。闘気を扱えるようになれば割と簡単に出来ますよ」
「アリスちゃんの割と簡単って私達の基準だとどのくらいか知りたいわ」
「んーわかりません」
「アリスちゃんはまず地力が違うものね〜」
「確かにそうですね」
「だがそれを超えていく奴もいるからな。俺のように」
「ギル……自信有りげですが、近いうちに抜いちゃいますよ?」
「はっ。んな簡単に抜かせるかよ」
「まぁそれはそれとして私はカズマ様といられればいいんですけど」
「あーいきなり惚気かよ。主風に言えばデレたよ。訓練中にこんな風になるコイツどう思うよ」
「とりあえず二人共話続けてる事に夢中になり過ぎて私の魔法に気づかなかったのはどうかと思うな〜」
「「魔法……?」」
二人が揃って上を向くと、それぞれ直径三メートル程の青みがかった黒い球が浮いていた。
「これがどうかしたのか?つかこんな魔法あったか?」
「重力魔法……なんでしょうけど」
「どんだけ話したいの!いい加減にマトモに相手しないとっグラビティスマッシュッッッ!!「「うおっ!?(ええっ!?)」」潰しちゃうよ〜?」
黒球はカナデが手を降ろすと、二人の上に落ち、二人は立ったままの状態で、地面に三十センチ程めり込み、重さに耐え切れず膝と手を着く。
「お、重い……」
「ぬぐぁっ!確かに重いが、んなの、問題ねぇ。主が言うところの初見殺しだ……!」
そう言って立ち上がるギルの首にカナデの剣が沿えられる。
「問題無くとも、今出来た隙、致命的だよね〜」
「その剣が俺を切れるかは別にしてな」
カナデがニコリと微笑み、ギルは剣をつまんで遠ざけ、気絶組の方を向き、二人も釣られて見ると、ちらほらと目覚め始める気絶組。
「カナデさん何やってんですか!?」
「うへぇ……ライオンに蛇に鳥に……ぁぅ」
「おいコラテメェ!カナデさんに怪我さしてねぇだろうなッ!させてたら影からテメェの首刈り取るぞ!」
「皆落ち着いて!大丈夫だから!そこ、再度気絶しない!確かにこの死骸だらけなのはちょっと刺激的な光景だけども!」
それぞれ気絶する前と今との状況で驚く者と、再び気絶する者、地味にキレてる者達に駆け寄り宥め始めるカナデ。
「ま、起きたんなら準備運動でもしてろ。この山をお前らだけで踏破出来る様になるまで籠るんだからな」
「「え?」」
「「「……」」」
「え?じゃねぇよタコ」
「え、と、だってギルさっきはそんなこと」
「言ったよ言ったさ。テメーらが勝手に都合良く解釈しただけだっつーの。まぁ、残念だったな?」
「はぁ……」
と笑うギルは後々起こる事件に気付きもしなかったのである。




