教えて!ガイル先生②……と見せかけて
「な……え、マジかよ、ヘル……」
「クククク……すまんのアーサー。今日はおまけ付きじゃ」
紫色の髪を風が無いのに靡かせ笑う少年とゴリゴリの筋肉でぱっつんぱっつんの服のコック姿で項垂れるおっさんがそこにはいた。
「いや、良いんだよ。良いんだがな?連れてくるにしても三人か四人くらいにしてくれよ……」
「今日は運が悪かったと思ってくれ」
アーサーが項垂れるのもわかる。ヘルロードはどらごんきらーに訓練所にいた総勢三十四名を連れて来ていた。
「別に良いじゃろ。お主の好きな綺麗どころとやらも揃っておる」
「確かに綺麗なねーちゃんもいるけど、それは俺が客としていく場合で……!」
「アーサーんなことより注文!」
「そんなことってなんだ!そんなことって!」
と言いながらもメモを取り出す辺りが笑える。
「てかこないだいたメイドっ娘はー?」
「あぁ?そこにいんだろ?」
「ん?」
アーサーの娘と思われるメイドっ娘はカナデさんらに捕まり、色々なところをまさぐられ、撫でくりまわされ、ぐったりとしていた。
「うきゅー……」
「何この子!めっちゃ可愛い!素晴らしい!てかメイド服あるんだ!着たい!私着たいわ!」
「……可愛い……食べちゃいたい」
「ねぇ〜ほんとに、ねぇ〜」
一人ヤバいのいるだろ。
「んなわけで俺が注文とるぞ。どらごんきらー定食でいいな?」
「いやあんたが決めんのかよ!」
「てめーら全員の注文聞いてたら日が暮れるわ!はい決定!作ってくるから待ってろ!」
「ほーい」
「制限時間は三十分じゃ」
「アホか無理だ!」
「アホとはなんじゃアホとは!!」
「もういいから黙ってゆっくり座ってろ!!」
「む。わかったのじゃ」
「いや悪いね!アーサーのおっちゃん」
「売り上げは良くなるからいいさ!」
とそれなりに嬉しそうにアーサーは厨房に戻って行った。
「うーあー」
「あぁもう、ほんと可愛い!ほっぺぷにっぷに!ほらほらアリスさん触ってみ!めっちゃ可愛いくない?」
「そ、そうですね」
「そこの子も!ちょっとこっちきて!」
「わ、私ですか?」
「そうそう!君君!」
「はい」
なんか騒がしい子を中心に女子会みたいになってる。一方男子陣は。
「……フリルを多く」
「……否、幼さをもっと」
「……いや、巨乳に」
「……猫耳」
「「「それがいい」」」
なんだか楽しそうではあるが、会話が聞こえている女子がドン引きしている。
そして龍族の方々はというと。
「リエールー!」
「はいはいなんですか?」
「おいら水欲しいなー」
「そんなの店員さんに言ってくださいよ!」
「えー」
「リエール。俺にも水を」
「ミスイさんは自分で出せるでしょう!」
「リエール。私も手伝おう」
「ガイルさん……」
てかガイル先生俺と私ってコロコロ一人称変わるなー。無理してそう。
「さて。カズマ」
「ん?なんすか?」
「明日からワシが直々に、お主を鍛えてやろうと思う!」
「マジで!?」
「あぁ。だがの」
「うん?」
「下手したら死ぬかもしれんから気をつけよ」
「……マジで?」
「まじ、じゃ」
「おーしとりあえず十人前だ……ってどした?」
「いや、なんでもない」
「そうか。冷めないうちに食えよ?」
「おう」
「頂くのじゃ」
「いただきます!」
「というわけでカズマよ、明日からの話じゃがーー」
と、いうわけでやってきました四日目の朝!昨日はとりあえずあのまま飯食ってダラダラして解散し、俺は訓練所のベンチで寝ていた。そんで、今。
ヘルロードとガイル先生にリエール。んで俺がいる。他の人はギルとセイル、シュカが率いて外へ行っている。
『カズマ、ガイル、リエール。三人ともおるな?』
「「「はい!!」」」
何故か龍化しているヘルロードを前に三人でビビりまくっている。
『今日からの訓練はワシが相手じゃ!』
「んな無茶な!!」
『無理じゃろうな。それは冗談じゃじゃからワシが特別に用意した相手と訓練じゃ』
「ん?」
ヘルロードが空を仰ぎ、俺もつられて空を見上げると、上から何か黒い物が、落ちてーー。
「どわぁ!!」
訓練所を強く揺るがしつつ、来た。
『紹介しよう。此奴が神人と人間の英雄。黒騎士アーサーだ』
「なんで!!?」
「まー。あれだ。お前の相手をする丁度良いモンスターがいなくてな。俺が指導することになった」
真っ黒で、めっちゃ怖い鎧からアーサーの声が聞こえる。
「てか神人と人間の英雄ってやっぱあんたか!!」
「その通り!俺がアーサー・アルデバラン!人類と神人の英雄だッ!」
『そんなわけで、此奴とお主ら三人で死合ってもらう』
「いや、割と無理な気がする!!」
「大変遺憾ではありますが、私もカズマと同じ意見です。私達なとでは、アーサー殿に傷すらつけられないかと」
『せいっ』
「ぐはぁっ!!」
とりあえず、ヘルロードの掛け声と共に、宙にガイル先生が吹き飛ばされたとしか言えない。何で吹っ飛ばされたか見えなかった。
「修行のルールはただ一つ。どんな手でも使っていいから、カズマの剣でこの俺に傷をつけろ」
「俺の、剣だけで?」
「あぁそうだ。あくまでもお前の訓練だからな。リエールとガイルはオマケだ」
「僕、オマケか……」
「んじゃまー早速始めようか。若輩者共」
「あんた年いくつだよ……」
ガイルとリエールもいるのに若者扱いて。
「あ、てかガイル先生大丈夫?」
「あぁ、も、問題ない」
「うわ、ガイル先生問題なくないよ、大問題だよ、目付きの悪さが」
「それは元々だ馬鹿」
『では、両者位置につけ』
「てかちょい待ち。剣かしてくんね?」
「……おい、渡してないのかよ」
『これでも使うが良い』
ヘルロードが虚空から一本の剣を取り出す。
「めっちゃ強そうだなおい!!」
『ほれ』
渡された剣を即鑑定する。
鉄の剣
やや古いただの剣。
「普通の剣、だと」
「訓練ならそれで十分だろ。ほらやるぞ」
『では改めて……始め!』
「ーーッ!」
「おっ」
ほぼ反射的に後ろに身を反らすと先程まで顔があった場所にアーサーの拳があった。
どうにか初撃は避けれたので、跳脚で距離をとるが、アーサーは瞬く間に俺の眼前へと迫る。
「ガイルさんはカズマさんの防衛!僕はアーサー殿の動きを止めます!」
「わかった!」
「おら!」
アーサーが掌底を突き出すと同時にガイル先生が俺の前に割って入り、その手を防ぐ。
「ウィンドブロウ!」
リエールの見えない風が俺とガイル先生を飛び越え、アーサーに直撃するーーが。
「そんな程度でこの俺が潰れるとでも?」
何の影響も受けていないようで、ガイル先生の頭を鷲掴みにする。そこで俺も動く。
「一閃!!」
「よっと」
ガイル先生の脇から飛び出し、アーサーの横っ腹を斬る寸前で、アーサーの姿が消える。
「ほらよ!」
「「うわ(ぬぉ)!」」
ガイル先生の頭を掴んだまま、ガイル先生を飛び越え、その背を蹴り、俺とガイルを転がす。
「ってー」
「すまん」
「ウィンドスラッシュ!」
「ふん!」
アーサーが着地したところで、リエールが風の刃を放つが、手刀で打ち消される。
「超規格外じゃねぇか!」
「これならまだ俺の子のが強いぞお前ら!」
「ぬかせ!」
ガイル先生と俺が同時に刺突で突っ込むがそれを透明な壁が阻んだ。
「結界!?」
「ヘルからこれの使い方も教えてやれって言われてるからな」
「後ろがガラ空きです!」
リエールが風を纏って、突きを放つが、遅い。
「誰がガラ空きだぁ?」
身体を半身にしたアーサーに容易に避けられ、その腕を掴まれる。
「火弾!」
ガイル先生が炎の弾を放つ。
「ガイル先生凄くねそれ!?」
俺との訓練中に見せた火弾とは違い、人一人が簡単に飲まれてしまいそうな、火弾だ。
「はぁッ!」
それを気合いのような物で消し飛ばすアーサーを見て唖然とするのは仕方ないと思ってくれ。
でもガイル先生は違い、火弾のすぐ後ろに付き、火弾が消えた瞬間にアーサーに斬りかかっていた。
「ほれ」
掴まれていたリエールがガイル先生に投げつけられるが、ガイル先生は上手く飛び越え、リエールはガイル先生の勢いを加速させるために風で吹き飛ばす。
「ま、お前の剣は普通に受けるがな」
「何ッ!?」
勢いの付いたガイル先生の剣を左手で掴み、引き寄せ、腹部に膝蹴り、そして若干浮いたガイル先生を殴り飛ばし、ガイル先生はその勢いを殺さず利用して距離をとる。
「くっ!」
「ガイル先生へーきか!?」
「ウィンドバインド!」
追撃しようとするアーサーに風がまとわり付き、一瞬だけ動きが遅くなる。
「アイシクルショット!」
「ん?」
「防ぐ素振りさえない!」
俺の放った魔法は悲しいかな、鎧に当たって砕け散っただけだった。
「問題ない!」
「流石ガイル先生!頭もかたけりゃ身体も硬い!」
「心配するのか馬鹿にするのかどっちなんだ貴様は!」
「じゃー間を取ろう!」
「間ぁ!?」
「ふざけてる余裕はあるんだな!」
「そぉい!」
ふざけていると、アーサーの手刀による真空波っぽいものが、俺の真横を通り抜ける。
「あぶねーあぶねーっ」
「リエール!人化を少し解くぞ!」
「わかりました!」
「おおっガイル先生龍になるのか!?」
「否!今からやるのは「《半龍化》」だ!」
ガイル先生の声に重ねるようにリエールも唱え姿を変えていく。ガイル先生は赤く燃えるような鱗を纏いリエールはエメラルドグリーンの綺麗な鱗が全身に現れる。そして人化時のギル達のように、翼と長い尻尾が生えた。
「さぁ、いくぞカズマ。動きについて来れなくても良い。私達が誘導するから隙が出来たところで、貴様が斬り込め!」
「お、おう!!任せろい!」
「僕も行きますよぉ!」
リエールが力強く踏み込み、アーサーの懐に入り、風を纏った手刀を突き刺すが、
「だが遅い!」
アーサーはそれを虚空から取り出した、黒いクレイモアの腹で防御する。
「グルァッ!!」
そのやり取りの間に、アーサーの後ろに移動していたガイル先生の炎を纏った尻尾がアーサーを襲う。
「見えてるぞ!」
アーサーはクレイモアを棒高跳びの容量で使い、跳び上がり、それを回避する。
そこに俺は跳脚でアーサーにむかって跳ぶ。それだけじゃあいつものように弾かれ、倒されるだけだ。だから、
「よいしょおー!」
リエールが、クレイモアの刀身を掴み、下に引き落としつつ、飛び上がる。当然クレイモアを掴んでいたアーサーの体制は無理やり逆さになり、更に水平方向では俺に、垂直ではリエールに狙われた形になる。
「これなら避けられまい!」
「甘い!」
「「あー(わぁー)!」」
クレイモアを手離し、ダンッと左手で足場もなしに更に跳ぶアーサー。それを呆然と眺めながら俺がリエールに膝蹴りを食らわす形で衝突した。
「俺様くらいなら二段ジャンプなんて気合いでいけらぁ!」
「ってー」
「やっちゃいましたねー」
「まだだ!」
「ぐぇっ」
落下地点でガクンと首元を引っ張られ、アーサーの一メートル程上まで投げ飛ばされる。
「火弾!」
「うぉ!か、兜割りぃいいい!」
「アームバリア!」
空中で体制を整えたアーサーが結界を右腕にのみ展開し、俺の剣を弾き、ガイル先生の火弾を左足で蹴り払う。
「グルゥアッ!!」
そして、ガイル先生の口から先日戦ったフロアボスもびっくりな熱戦がアーサーの左足に直撃する。
「あつ!!くないよーん。ほいっと」
「うげぇっ、落ちーーでっ!」
俺はアーサーに腕を掴まれ、宙で上下を交代され、共に落下し潰された。
「おっと。坊主大丈夫か?」
「……だ、大丈夫」
『もう終わりかの?』
「いや、まだ」
「あー俺がもう無理だわ」
「なんで?」
「娘が……迎えに来てくれたからだよー!」
背の上にあった重みがなくなったと感じると、アーサーは既に訓練所の入り口に来ていたメイドっ娘に抱きついていた。
「つか、親子じゃなかったら、すげぇ犯罪的な絵面だなこれ」
真っ黒な西洋風の鎧をきたおっさんが、メイド服の小さな女の子に抱きついて、そのまま高い高いをする様が。
てかあれで抱きつかれたら痛そうだな。
「ハハハ!ライカー!迎えに来てくれたんだなぁ!」
「あう。お父さん、痛い、あっ高い高い!」
うん。痛がってるし、高い高いが俺の知ってる次元じゃない。それほんとに高いってレベルで放り投げてるよな。
「カズマ」
「ん?なんだガイル先生」
「リエールも今話して即決したのだが、今日は三人で食事を取らないか?正直、ここまで何も通じないとは思ってなくてな。作戦会議と行きたいのだが」
「おお!いいね!やろうぜ!……飯代はガイル先生の奢りで」
「あぁ。それでいい」
「よっし。そうと決まれば早速行こうぜ」
「まだ早くないか?」
「ん?そう?」
「おい!坊主達よう!こっちゃ来い!」
「ほーい」
アーサーに手招きされ、それに従い側に行く。メイドっ娘はぐったりしている。お疲れ様だ。
「まぁわかってるだろうが、明日も俺とお前達で訓練所を占拠してお前達を鍛えてやる。カズマには俺が昔使ってた、軽ーい重しを両手両足に付けてそのまま生活してもらう。いいな?」
「げ」
「で、カズマはヘルからの加護を結界にしたらしいからな。それの手解きとちゃんとした説明も少しずつしてやる」
「マジっすか!よっし」
「ちゃんとコントロール出来れば俺のように部分的に結界を張ることができる」
「あー、兜割り防いだやつ?」
「それだな」
確かにあれは便利だな。下手したら防具いらなくなるかも。
「その他のことも色々教えてやる。が、今日はもう解散としよう」
「おっけ!ありがとうございました!」
「おう。ライカ。帰るぞ」
「うん」
のっしのっしとメイドっ娘……ライカをおんぶして、帰るアーサーを見届け、俺達もすぐに帰った。
ちなみに、食事はなんとリエール家で、リエールの手作りご飯であった。
『んあっ!?寝てしもうたか!』
「お父様……迎えに来ましたよ?もう主達は帰りましたし。そんなとこで寝てたら、他の人の邪魔です」
『そ、そうじゃの……』




