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質問祭り。というか歴史の勉強みたいだ。

ちょっとした説明回。

「さぁ!セイルよ。真相を嘘偽りなく話すんだ!」

「主。一応病院なのでお静かに」

「理由もなくシュカがあんなこと言うとは思えねえからな」

「そうですね。ええ。シュカも色々あるのでしょう。お二人が自然に仲直りすることを待ってはどうでしょう?」


セイルは多少困ったような顔で笑うがその顔がまた爽やかスマイルでなんかちょっとムカつくわー。


「まぁ、それも考えたんだが、やっぱ好きな子が元気無くしてる中何もしないってのも嫌じゃねぇか!」

「じっとして成り行きを見守るのも、正解だと思いますが」

「む……」

「主。少し飛びましょうか」

「お、おう」


病院の外に出てセイルが背中から翼を生やすと、少し屈んだ。


「何やってんだセイル」

「おんぶですよ。街中での竜化は禁止されてますから、飛んでから竜化します」

「えー。まぁ、いっか」


とりあえず、セイルの指示に従って、おんぶされる俺。はたから見ると……考えたくねぇ。


「セイル様!!」

「はい?」


セイルが飛び立つ寸前に小学校一年生くらいの小さな女の子が、セイルの名を呼び、駆けて来る。その速度、子供の走る速さじゃない。跳脚を並行に発動した時並みの速さだ。


「わぶっ」


と思ったら転けた。


「オウカじゃないですか、大丈夫ですか」


セイルは俺を背負ったままオウカと呼ばれた少女の手を取り、立ち上がらせる。


「うんっ大丈夫!」

「オウカ。足が治ったのはわかりましたけど、あまり無理してはいけませんよ?」

「んーん!オウカ無理はしてないよ。セイル様!その背中の何?」

「あれなんか俺凄い扱いを少女にされてねぇ?勘違い?」

「いえいえ。私達竜ですら、彼女ら龍種にとって身分の低い者ですし、仕方ありませんよ」

「ワイバーンのセイルすらそれじゃ俺って虫くらいの扱いなんじゃ」

「セイル様!オウカもお供していいですかっ?」

「はい。いいですよ。飛べますか?」

「えっと、一時間くらいなら飛べるよ!」

「そうですか。なら一時間、お散歩に行きましょうか!」

「うんっ」


オウカは頷くと、桃色の翼を背から生やし、腕や足も龍らしい鱗に覆われていき、変化が完了したところでセイルが羽ばたき、それに追従してオウカも飛び立つ。


「おお……!!」


シュカやギルの背中に乗って飛ぶことは割と頻繁だが、飛び方が優しいとギルドの女子陣に好評なセイルに乗るのは初めてな気がする。


「よし。この高さなら竜化しても良さそうですね。ーー竜化!」


セイルの身体が光に包まれ、見る見る巨大化すると体長三メートル程の大きさに収まった。


「おーすげぇな、ここ」

『広いでしょう。ここ全体がデスペリアの領地……なんですよ』

「?なんで今ちっと間があったんだ?」

『以前……つまり、世界の改革前のデスペリアはもっと広大でこの世界の大陸の一つを支配していたのです。例えば……いえ、これ以上はダメですね』

「なんでだ?」

『怒られちゃいますから』

「まぁ、セイルが言いたかないなら別にいいけどよ。でよー話がらりと変わるんだが」

『はい?』

「オウカちゃんめっちゃむすっとしてるぞ?」

『あぁ』


俺とセイルが話してる間、静かにしてくれていた彼女だが、段々と我慢出来なくなってきたようで、頬をぷくーっと膨らませて、俺を睨んでいる。


『ごめんねオウカ』

「あ、いや!大丈夫です!セイル様と一緒に飛べるだけでとっても楽しいので!」

『そうですか。では主、話の続きを』

「しなくていいから、オウカちゃんと話してやれよ」

『?』


いやだってこれ絶対オウカちゃん話したくて付いてきてるじゃん。俺邪魔じゃん。


「……」


あ、オウカちゃんの視線が軟化した。とう一押ししてやるか。


「ーー召喚!!」

『はい?!』


俺は上空でギルを召喚した!


「ですからああぁぁぁぁぁ!?」


ギルは落下した!!


「なんか会議中だったのか?」

『そうじゃないですか?ギル隊長が敬語なんて使ってるわけですし』

『主ぃいいいいいいい!!!!』


ワイバーンへと変化したギルが地面すれすれで上昇しながら叫んだ。


「てかこれはたから見たら襲われてるよな俺ら」

『そうですね』


セイルは何故か楽しそうな声音で答えるが、ギルはちょっとキレているようで、いつもとは比べ物にならないくらいの速度で迫ってきている。


「ギル!待て!」

『誰が待つか!!』


そしてそのまま空中のセイルと俺にぶつかるかと思えば、その間にオウカちゃんが入り、


「って危ねえ!!」

「セイル様に手を出すな!」


パコーンッとオウカがギルの頭をはたくーーはたく腕がブレて見えたーーが、ギルは物ともせずに、目の前で怒鳴る。


「ぐるぁぁ!!」

「いやそれじゃわかんねぇから」

『ちょっとあんたの事を説明してたのにいきなり呼び出しやがって!馬鹿じゃねぇのか!』

「るっせぇ馬鹿だよ!!」

『まぁ、いきなりですが、隊長、主を任せますよ?』


セイルがニコリと笑ったーー気がしたーーと思えば一瞬の浮遊感。そして俺は垂直に落ち始め……


「おおおおおおおおおおああああああああああ!!!!」

『うおおおおおお!!!?』


ギルの背にドスッと収まった。


『危ねえだろうがぁ!!』

『でも問題はなかったでしょう?』

『まぁな』

「お前らだけで、自己完結すんなよ……死ぬかと思ったわ」

『おい主。それについてはついさっき味わった男がここにいるぞ』

「あ、悪い。本当にごめんな。もうそれについては全力で謝る」

『よし。つかあいつらもういねぇし』

「いいじゃねぇか。男二人でのんびりしようぜ」

『あーもう。会議に戻らねえといけねぇんだけど?』

「俺に喚ばれたから仕方なかったってことにしとけ」

『りょーかい。んじゃそのついでに飯食いてぇから、ちっと下降りていいか?』

「どうぞどうぞ。セイルが飛びてぇだけだったみてぇだし」

『んじゃ、いっくぜ!』

「んーー!?」


舌を噛まなかった俺を褒めて欲しい。ジェットコースターも真っ青な垂直落下。

だが風は何も感じない。というかいつもなんで感じないんだ?降りたら聞いてみよう。




場所は変わって地上。黒龍王国中央広場に、俺とギルはいた。


「さて。主がなんか色々聞きたそうだし、適当に飯済ませようかね」

「いや、食いながらでもいいんだが」

「そうか。んじゃドラゴンキラーにでも行くか」

「何普通にドラゴンキラーとか言ってんだお前」


ギルに連れられやってきたのは、どらごんきらーと明らかに日本語で書かれた店だ。


「よりによって何故龍殺しって名前なんだよ。しかも平仮名」

「あぁそれはな」

「それはーーこの店の飯が龍がわざわざ人化したいと思えるほど、美味い店だからだ!!」

「おおう!誰このおっさん!」

「このおっさんがこの店の店長」

「アーサー・アルデバランだ!!」

「アルデバラン??」

「ほぉ。兄ちゃん俺の事、知ってんのか?」

「いや、なんか聞き覚えが……」

「普通の奴は知ってるけど、主は世界の改革の時にきた人族だよおっさん」

「おおー!!もうこんなところに来たのか!今回の輩も強いんだな!」

「いーや。ヘル様が色々策を練ってたらしくてな。色々使い捨て転移門を、各地のモンスターに埋め込んでたらしいぜ」

「それでこっち来たってか兄ちゃんは!確かにひょろっちぃもんな。がっはっはっ!!」

「ひょろっちぃってよ主!」


そりゃあ筋肉むっきむきのおっさんから見りゃな!


「え、てかもしかしておっさん」

「あぁ、俺は人間だよ!この街唯一のな!!」

「んでもって、主の前に加護を貰ってる正真正銘スゲー人。俺一人くらいだったら十秒持たねえってくらいつえーから喧嘩売んなよ?主」

「売らねえよ!つかどんだけつえーんだよおっさん!」

「昔は本当に龍を殺してた時代もあったぜぇ?特にヘルとは何度も戦ってよぉ」

「ちょっと待て!おっさん幾つだよ!!」

「……秘密だ。もし兄ちゃんが正攻法でここまで来れたなら教えてやろう」

「んだよー。どいつもこいつも秘密ばっかで……そだ。そろそろ色々質問いいか?」

「おう。俺が知ってて答えられることなら何でも聞け」

「俺も知ってること答えてやんよ。幸い客も少ねえから暇なんでよ」

「助かる。何せ俺この世界の常識とか全然わかんなくてよ……。で、一個目だが。来てからほんと気になってたんだけど、なんで龍が皆人間みたいになってんだ?俺のイメージだと龍とかって孤高であんまり群れをなさない感じなんだが、もう国なんか作っちまってるし。さっき大陸を支配してるとかセイルに聞いたし。って感じなんだが、そこんとこどうなんだ?」

「あーそんなのはとっくの昔に終わったよ。俺が生まれた頃にはこんなんだったらしいし。詳しい話は俺はわからんが……」


チラリとギルがアーサーを見る。


「なんだなんだ。いきなり俺に聞くのか?」

「あんたのが俺より長く生きてんだから、人選は間違ってないと思うが?」

「そうだな。なら説明してやろう。耳の穴抉ってでも聞けよ」

「抉るのはいてえよ!!」


俺のツッコミは完全に無視され、おっさんは続ける。


「むかーしむかし。数百年に渡る、大陸全土を巻き込んだ人魔戦争が起きていました」

「いきなり壮大だなおい」

「人族は大陸の三割を魔族に。二割を神人に占領されていました」

「はい!」


何を突っ込んでも反応が無さそうなので挙手してみると、アーサーはどこぞの教師のように、はい。兄ちゃん。と指してきた。それに思わず笑いながら、新しい単語への質問開始。


「神人ってのはなんですかー?」

「そのままの意味だ……ってのは適当過ぎか」

「あーそれについては俺が。このままおっさんに話させたら俺の出番がねぇじゃねぇか」

「無くしてやろう!」

「ふざけんな。で。神人についてだが。意味合いとしては、神のような力を持った人族。後にヴァルキリーと呼ばれるようになった種族だよ。おっさん世代は神人と呼ぶ奴が多いな」

「神人……」

「神人は人の姿を持ちながら、龍種を圧倒し、魔族を殲滅、人族に対しては最早ゴミのように扱ってたらしい。そしてその寿命も長寿族であるエルフを凌駕する。アリスには言えんが、正直化け物以外の何物でもねぇよ」

「ギル……」

「待てよ、主。俺は別に祖父さん達みてぇに、被害は受けてねぇから、ただつえーやつって認識しかねぇよ。それに戦後は数も少数化したし、人族とのハーフも増えたから、そんな脅威じゃねぇから」

「そうか」

「で、おっさんは、説明終わるの待ってんだけど。そろそろいいか?」


おっさんが席に座ってだるそうにしている。


「わりぃわりぃ。続き話してくれ」

「……そんな人族は、神人にも魔族にも属さない孤高の種族。龍種に協力を求めた」

「ふむふむ」

「だがその時の人族の頂点は人族至上主義。人族以外は全て滅ぶべきとか馬鹿な思想を持っていた為に、全く手を取り合って貰えずに、敗戦続き。そんな時一人の人族が立ち上がった。その名は……」

「妙にタメんな!どうせあんただろ!?」

「違うが?」

「違うのかよ!!」


だってヘルロードと何度も戦ったって言ってたじゃねぇか。誰だってそう思うだろう。


「続けるぞ?」

「おう」

「その名はラインハルト」

「なんかすっげぇ良くある名前だな」

「良くあるだと?この名は由緒正しい勇者の家計に与えられる名だぞ?」

「勇者!?」

「お、いい反応じゃねぇか。そんでその勇者ラインハルトは王が直接指揮を執る近衛隊の隊長をしていたわけなんだが、当然、王の元から離れることをあの馬鹿王が許す訳もなく。ラインハルトを権力で抑えようとしたが、ラインハルトは民を味方にし、その束縛から逃れた。ま、その辺の説明は面倒だから割愛するとして」

「……」


おっさん何者だよ……。つか俺こんな話聞いてていいのか?最初アリスの話で相談する予定だけだったのによう。


「ラインハルトは仲間を集めた。一人はコロシアムのトップを取り続けてきた奴隷戦士。一人は魔族のやり方が気に食わないという理由で亡命してきたエルフの魔導士。王が焼けになってラインハルトを襲わせた超凄腕の女性暗殺者。そして、教会のシスターをしていたラインハルトの婚約者、職業は勿論僧侶」

「なんかありがちな勇者パーティじゃねえか」

「まぁな。だがそれが良かったんだよ。バランスも良かったし」


おっさんは何故か自慢気に頷き、更に話し続ける。


「仲間が集まり、一ヶ月を過ぎようとした時、魔族が神人と争い始めた。どちらかが先かは知らないが、領土の取り合いが始まったらしい。当初は圧倒的な力を持つ神人が優勢だったが、如何せん、数が少なかった為、徐々に魔族に押され始めたんだ。そんな時、ラインハルト達は動いた。神人との戦いで疲弊していた魔王軍を確実に倒し、領土を取り戻して行き、魔族に占領されていた地域の殆どを征服した時、何故か、何もしなかった神人が再び領土を広げ始めたのだ。領土を取り返した喜びも、すぐに奪われ、再び絶望が人族を染めていった」

「……」


そりゃあ恨む……だろうな。でも、


「しかし、ラインハルトは諦めなかった。倒した魔族達の一部はラインハルトを支持し、独自の軍を作り上げ、人族を守るように展開し、均衡を保っていた」

「そこに一体の巨大な黒龍がやって来て、辺り一帯を焼き払い、宣言した」

「「どいつもこいつもウダウダと続けやがって!!つまんねーんだよてめぇら!!こっちはお前らの戦争のスカウトにうんざりしてんだよ!そんなに戦争ばっかやって迷惑かけてくんならこっちだって考えがあらぁ!俺はお前らを全員滅ぼして、龍の国を作ってやる!!」」

「ってな」

「二人揃って言われても」


つかうるせぇ。他の客見てんじゃねぇか。


「そんでどうなったんだよ」

「んでな。ヘルの本心を暴露すっと、ただ強い奴と戦いたかっただけらしくよ。その後魔王一行と勇者一行。んで神人呼び出して、決闘したらしいんだわ」

「すげぇんだなアイツ」


ぱっと見中学生くらいの癖して。ってそれに瞬殺されたんだったな俺。


「そしてその激闘の上で勝利したのが何故か人族と神人。しかもラインハルト達は負け、神人の代表も負けていたんだ。それなのに、人族と神人は結果として勝利した。意味わかるか?」

「……代表が負けたなら、飛び入り参戦か?でも、そしたら両方が勝つわけ……もしかして」

「そう。そのもしかしてだ。いつの間にか生まれていた、神人と人族のハーフが、飛び入り参戦し、最後に立っていたヘルロードを殴り倒したんだ。ヘルロードもボロボロで、立っているだけで限界だったんだろ」

「で、そいつが勝ったから」

「そ。人族と神人が勝利ってなっちゃったわけ。そこから勝利者である人族と神人が同盟したりなんだりするんだが、それはまた後でにしようぜ」

「え?何でだよ」

「周り見てくれよ」


言われたとおり見てみると、客がまだかまだかと俺達の方を眺めていた。


「お、もう夕飯の時間じゃねぇか。したら仕方ねぇな。今の話置いといて、食いながら質問答えてやんよ主」

「おう。おっさん!」

「なんだ?」

「一番美味いのを頼む!」

「龍が号泣するくらいうめーの作ってやるよ!」


がはははと豪快に笑いつつ、厨房へ戻っていくアーサーを見送り、再びギルと話し始めるのであった。

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